2024年09月27日( 金 )

コロナショックで流通産業に激震~韓国ではネット通販大手クーパンが急伸(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

コロナショックで、流通は二極化へ

 韓国のネット通販の代表格である「クーパン」の事例を挙げてみよう。1月下旬、クーパンに注文が殺到し始めた。同社は旧正月の連休終わり頃の一時的な現象であると考えて、それほど気にも留めなかったようだ。しかし、今回は様相が違い、注文が殺到し続けた。韓国国内でコロナ患者が発生した影響を受けていたのだ。1月末の注文件数は通常より約70%増加していた。2月に入り、新型コロナウイルスの感染拡大が韓国で本格化すると、品切れで注文に対応できなくなる事態まで発生した。

 「クーパン」の例は、コロナショック後の消費者の動きの一面である。コロナショックは流通に大きな激変をもたらし、今まで流通の主役であったデパート、スーパーは、その座をオンライン流通に明け渡している。この現象は韓国に限った話ではなく、世界最大のEC企業のアマゾンでも同じ現象が起こっている。コロナショックで、対応しきれないほどの注文がアマゾンに殺到した。20年2月20日から3月15日のアマゾンでの風邪薬の販売額は、通常の9倍以上、ドッグフードの販売額は同13倍、トイレットペーパーの販売は同3倍以上増加した。

 ネット通販が比較的進んでいる中国でも、同じような現象が起きている。新型コロナウイルスは中国で発生しているが、ネット通販が発達しているため、社会的な混乱は避けられた。アリババの20年1月~3月の売上は前年同期比22%も急増している。コロショック以前からネット通販は伸びていた。しかし、コロナショックで流通の激変が加速し、既存の店舗販売の没落が始まっている。韓国でも既存流通の王者ロッテグループが200店舗を売却すると発表している。

 環境が急激に変化したため、店舗賃貸料や人件費などの経費を比較すると、ネット通販に太刀打ちできない状況だ。さらに、スマホを使った買い物も増えていて、各企業ではスマホ販売への対応が急務となった。韓国ではアパレルなども既存の店舗販売は伸び悩み、テレビショッピングを中心に販売が伸びている。テレビショッピングに強い企業は業績を伸ばし、既存店舗を展開している企業は存続が危ぶまれている。

 最後に、今後、流通にどのような変化が起こるのかを想定してみよう。コロナショックで経済が不況になると、GDPが下がり、失業率が上がることは容易に想像できる。その結果、多くの人々は経済的に貧しくなるため、節約志向を強めて贅沢品・高級品にはあまり手を出さなくなり、コストパフォーマンスのよい製品を選ぶようになることは当然だ。さらにネット時代の消費者は、多くの店舗を見て回らなくても、価格の比較が簡単にできるため、価格競争力のある商品だけが生き残るだろう。こうして、利益の出る企業の数は減り、「二極化現象」が進むだろう。さらにアフターコロナでは、多くの業界で当たり前とされてきた商習慣や常識は崩れ去り、新しい時代のニーズを満たした企業のみが躍進するだろう。

 コロナショックが世界を変え、大きな変化を起こしていくことは明白である。コロナが収束しても、新しく生まれた習慣が元に戻らない可能性は高い。各企業がいかに時代の変化を先取りし、対応していくのかを注視する必要がある。

(了)

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