2003年九州豪雨で廃業を考えた企業が復活した理由~西福製茶
-
2003年の九州豪雨で被災し、逆境をチャンスに変える
「『この先に向かって、次の一歩を踏み出してください』と簡単にいえる状況ではない」と話すのは、日本茶の製造販売を手がける西福製茶(博多区)の西宏史社長。西氏は、60名以上の死者を出した「令和2年7月豪雨」の被害に心を痛めている。
西福製茶は2003年の九州豪雨で被災し、自社工場と事務所が水没し、在庫と機械で総額およそ5,000万円の被害を被った。当時は水害に対する民間や行政の補償・支援制度が整備されておらず、唯一、車両が保険で賄われたのみだった。西氏は倒産を覚悟したものの、仕入先が支払いを2カ月間猶予し、販売先も取引の継続を望んだことに、苦境のなかで光明を見出す思いであったという。
西氏は、当時の社長だった父の隆治氏や幼い長男の姿を見て奮起し、協力工場を見つけて短期間で製造体制を復活させた。このとき「逆境はいつでも起こる」という現実が身に染みて、その後10年近くは雨の日には安眠できなかったという。しかし護岸整備で川幅が広くなり、床を高くした新店舗を建てたことで、ようやく雨天でも平静を保てるようになった。
苦難を乗り越えて学んだことはもう1つある。それは「ピンチはチャンスにつながる」ということだ。西福製茶では、水害を受けたことが自社製造を外部委託に切り替えるきっかけとなった。この転換で、柔軟かつ迅速に発注に対応できるようになり、海外進出や新商品開発が可能となった。当時からまき続けてきた種が、コロナ禍の今になって芽を出し、新たな可能性が広がっている。
西氏が考える、災害リスク対策とは
文字通り、ピンチをチャンスに変えた西氏だが、「日本の地理的条件を考えると、簡単に川や海の近くから引っ越してくださいとはいえない」と被災者の心痛がわかるだけに口数は少ない。一方で、西氏は、「福岡はもともと渇水の街だった。まさか水害で自社が甚大な被害を受けるとは考えていなかった」と、年々高まる水害リスクに危機感を強めている。「自分は大丈夫」と思いがちだが、日ごろから災害リテラシーを高めてほしいというのが西氏の願いだ。土地柄によって起こりうる災害の種類は異なるため、定められた避難所に向かうことがかえって危険な場合もある。食品を備蓄し、装備を整えることはもちろんだが、どの避難ルートをとるべきかなど、いつも自ら考えて決断する習慣をもってほしいという。行政との情報交換も欠かせない。
どれだけ準備をしていても、被災してしまうこともある。「すぐに立ち上がれないかもしれない」としたうえで、自身の経験から西氏は、数多くの写真を撮って記録することを勧めている。一度にすべてのことはできないが、優先順位を付けると少しずつ物事のありようが見えてくるという。
西氏は、ボランティアの活動にも期待を寄せており「被災した当時は、ボランティアからのちょっとした一言が大きな力になった」と話す。今も各地で多くのボランティアが活躍しているが、「今は何事においてもコロナ対策を考えなければならない時で、通常の被災支援に比べて時間も人手も必要だ。ボランティア当事者への負担の大きさは計り知れないが、打ちひしがれた被災者に、前進しようと感じられるきっかけを与えてほしい」という。
<COMPANY INFORMATION>
西福製茶(株)
代 表:西 宏史
所在地:福岡市博多区博多駅前1-24-14
設 立:1936年5月
資本金:1,000万円
TEL:092-431-3272
FAX:092-451-2429
URL:http://www.nishifukuseicha.co.jp/法人名
関連記事
2024年11月20日 12:302024年11月11日 13:002024年11月1日 10:172024年11月22日 15:302024年11月21日 13:002024年11月14日 10:252024年11月18日 18:02
最近の人気記事
おすすめ記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す