大丈夫?佐世保児相の「基本」に課題
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佐世保高1同級生殺害事件
県保健福祉部長「危機意識・使命感に疑問」
佐世保の児童相談所が「機能不全」と言われているに等しい厳しい指摘がなされた。佐世保高1同級生殺害事件(佐世保事件)の発生前に逮捕された少女を診察した精神科医から受けた相談を、佐世保こども・女性・障害者支援センター(佐世保児相)が放置した問題で、外部有識者による検証委員会は、法制度に関する基本的な知識・理解が不足していることなどを指摘。10日、長崎県議会 文教厚生委員会における検証に関する報告で、その内容が明らかにされた。指摘について県福祉保健部長は、「(児相職員の)危機意識・使命感を問い直す必要がある」との所感を述べた。
検証委員会は、外部委員として大学教授や弁護士、長崎県以外の児童相談所の所長などが参加している。検証のなかで要保護児童の定義、守秘義務解除、関係機関との情報共有を行う要保護児童対策地域協議会などの基本的な知識・制度に関する理解不足を指摘した。佐世保事件で逮捕された少女について佐世保児相は、児童福祉法第25条にある「要保護児童」に該当すると思っていなかったとされている。要保護児童とは、虐待を受けている子どもだけでなく、非行少年も含まれており、逮捕された少女は、「小6の時に給食にハイターを混入していたこと」「14年3月に父親を殺害目的で就寝中にバットで殴打したこと」が、精神科医から佐世保児相に伝えられていた。
専門性が不足? 県の姿勢にも疑問
佐世保児相の組織運営の課題としては、指導的立場にある職員(スーパーバイザー)の機能不全や、「一番の基本」という情報収集(調査)を充分に行い評価すること(アセスメント)の不足があげられていた。検証委員会は、「子どもを守るという視点が弱く、しっかりアセスメントを行い、対応していく姿勢の希薄さがあるように感じる」「協議しながら解決していくというソーシャルワーカーとしての専門性に欠けていたのではないか」といったコメントが出されている。
NETIB長崎では、「長崎県・佐世保児相もう一つの『闇』」として、佐世保児相において、十分な家庭調査が行われていない小学生男児の一時保護が8カ月以上続いている問題を報じている。佐世保事件に限らず、これまでの佐世保児相の関わった案件が適切に処理されていたかどうかも調査・検証する必要があるのではないだろうか。
『資格はあっても専門職と呼べる人材が不足』という問題もうかがえる。県によると、社会福祉職の職員94名のうち、国家資格である社会福祉士の資格を持つのは41名。2006年から取得見込みを含めて任用資格にしたという。社会福祉士の資格を持つ職員が現場2年の経験を経て、都道府県の資格である社会福祉主事となる流れだ。しかし、検証委員会は、「一般的に、多くの児童相談所では、人事異動のサイクルが短いため、スーパーバイザーが育たず、組織に専門性が蓄積されていない」とした上で、「本庁人事主幹課(長崎県)の児童相談所に対する捉え方や専門職の育成、また組織の配置プラン・デザインをしっかり持っているのかということが疑問」としている。
佐世保事件の問題発覚後、スーパーバイザーが1名増員されたほかは人員体制に変更がないという。検証に関する報告を受けて、委員からは「(佐世保児相が)機能していない。適性がなかったと言っているように受け取れる」(前田哲也県議)「現場は動いている。今やれることを報告すべき」(前田県議、瀬川光之県議)との指摘がなされた。一方、県が10月に行った厚生労働省への児童福祉法の解釈などに関する問い合せに、いまだ回答が出ていないという。「たいへんな事件が起きたにもかかわらず、法解釈の確認ができていないのは問題だ」(山田博司県議)。専門機関であるはずの佐世保児相に耳を疑うような課題が指摘されている今、現在進行形で問題が発生するおそれがある以上、速やかな対応が求められる。
【山下 康太】
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