2024年11月23日( 土 )

【パンケーキおじさん 対 ただのオッサン】山本太郎氏が衆院選出馬を明言 菅首相の地元「神奈川2区」で直接対決か

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大阪都構想は「大阪府による大阪市へのカツアゲ」

1週間に3回も大阪でゲリラ街宣を行い、都構想反対を訴える山本太郎・れいわ新選組代表。
予告なしの街宣でも聴衆が増えていき、街宣終了後のツーショット写真撮影には列ができた

 都知事選落選後は活動が控えめだった山本太郎・れいわ新選組代表が8月から、報道関係者への予告なしのゲリラ街宣を開始して、各地を回っている。昨年9月に北海道を皮切りに始めた全国ツアーを再開させたかたちで、重点地域は「大阪都構想」(以下、都構想)住民投票(10月12日告示・11月1日)が迫る大阪だ。9月21日には梅田駅と難波駅で昼と夜、24日には阪急三国駅、そして25日にも京橋駅で街宣と1週間で4回もマイクを握った。

 聴衆から質問を受けて山本氏が答えるスタイルも昨年の全国ツアーと同じで、終了後のツーショット写真撮影に長い列ができるのも変わりはなく、山本代表人気が健在であることを物語っていた。

 その地域特有の課題――大阪ではもちろん都構想――を取り上げる姿勢も貫かれていた。山本氏は都構想を「大阪府による大阪市へのカツアゲ」と断言し、「大阪府は金がないから、大阪市に手を突っ込んでやろうというのが都構想。橋下(徹)さんが2011年に言っていた『大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る』という考え方自体が間違っている」と解説した。菅政権と蜜月関係の「日本維新の会」との対決姿勢を鮮明にしていたのだ。

立憲民主党・枝野代表の街宣(JR天王寺駅前)

 9月21日には場所と時間は違ったものの、立憲民主党の枝野幸男代表もJR天王寺駅前で街宣。「大阪市廃止にNO!」と銘打ったプラカードを持つ辻元清美副代表(大阪10区の衆院議員)の隣で、「政令指定都市は都市がうまく回っていくためのもの」「大阪市で、なぜなくすのか」と都構想反対を訴えた。

 合流で150人規模となった野党第一党・立憲民主党と、いまなお台風の目のような存在であるれいわ新選組の両代表が偶然にせよ、同じ日に大阪都構想反対を訴えて足並みをそろえることになったのだ。両党の連携(選挙協力)については、3月19日の本サイト「新型肺炎緊急経済対策・消費税減税でも弱腰(守りの姿勢)~立憲民主党・枝野幸男代表の指導力不足(後)」で課題を次のように紹介していた。

山本代表は衆院選出馬を明言~菅首相の地元「神奈川2区」か

 「安倍政権打倒の最重要課題は、れいわ単独で100人擁立することによる“野党同士討ち”を回避、『野党統一候補 対 自公候補』という一騎打ちの構図に持ち込むことだ。今後も、枝野氏が消費減税に否定的な立場をとり続けるのか否かが注目される」

 3月時点で枝野氏は消費減税に否定的だったが、合流新党の代表選では消費減税に前向きの発言を口にし始めていた。両党連携の障害が取り払われたともいえるが、この変化をすでに山本氏は受け止めていた。梅田駅前でのゲリラ街宣後の囲み取材で聞いた時のことだ。

 ――消費税減税を言い始めた立民との選挙協力は?

 山本代表 すごく大きな一歩、二歩まで行っていると思います。ここから先というのは、私たちがもともと言っていた野党全体で消費税減税を旗印にして、次の衆院選でやれるのかどうかだと思います。端的に言うと、選挙の争点にしていく意志があるのかどうか。野党第一党としてまとめる意志があるのかどうかということだと思います。でも昨年から今年の春まではまったく考えられない動きなのですから、いま立憲民主党が自分たちの政策としている「期間限定で消費税をゼロにする」という話は。それを考えると、私は(選挙協力は)十分にあり得るだろうと。逆に言えばそれをやっていただいて、しっかりと政権交代をしていくという議席を得ていただきたいと思います。もし、それがやれるのだったら、私たちは当然調整にも応じますし、力を合わせてやっていきたい。

 ――すでに立候補された方を調整して降ろす場合もあり得ると。

 山本代表 もちろん時間がかかるほど、(出馬表明をした候補者を)降ろせない状況は以前から一緒ですから、選挙がいつになるのかということにもよると思いますが、当然、降ろせる人と降ろせない人が出てくるだろうと。

 ここで地元テレビ局の記者が、「衆院選に代表が出馬する可能性は」と聞くと、山本氏はこう答えた。

 「します。しないと思っていましたか。無職のまま、全国をほっつき歩くと思っていましたか(笑)。(国会議員の)バッヂをつけて国会の中で話ができるのは大きい。衆院選が見えないなかで都知事選には出ました。『コロナ禍で国が財政出動を大胆にせずに、多くの人たちを底上げすることをしないと大変なことになってしまう』という思いで、都知事になれれば、国に頼らずに都の財政で最大限できるだろうということで挑戦はしましたが、もともと目指しているのは国政ですから」

 これを受けて私が、「菅さんの神奈川2区から出る可能性はあるのか。カジノを争点に」と聞くと、可能性を匂わせる回答が返ってきた。

 「『パンケーキおじさん 対 ただのオッサン』という戦いも面白いかもしれないですね。(可能性はあるとの問いに)だから、これは昨年から言っていたのですが、要は野党側が『次の衆院選挙を消費税減税で戦う』という旗を上げれば、私が次に立つ場所(選挙区)を先輩方にご相談をしながらやっていきたいということはずっと言ってきた。それだったらそういうところ(神奈川2区など注目選挙区)に当てていくということもできたと思う。今からどうなるのかはわからないですね」

 菅政権(首相)の問題点についても聞くと、山本氏はこう答えた。
 「(国会で)菅さんに質問してもずっと〈塩〉対応だったので。塩みたいな答弁しか返してくれない。でも、トイレでご一緒するときなどには非常に柔らかい会話をして下さる方なのです。『最近、慣れて来ましたか』とか、非常に人たらしの方です。でも一方、仕事となると、ほとんど答弁しないのですけれども」
 「菅さんがトップに就いて一番問題なのは、安倍政権(首相)の答弁よりもさらに〈塩〉ですよ。数々の疑惑が出ていたのに、どうして安倍政権が7年8カ月も乗り越えられてきたかというのは菅官房長官の力ですね。『力』というのは、答えているようで答えない。『問題ない』ということで終わらせることを繰り返してきたという強靭な精神力だと思います。だから、その方がトップに立つというのは、かなり野党側としては手ごわい。あの方(菅首相)が会食を重ねている方々、竹中平蔵さんとかアトキンソンさん(小西美術工藝社社長/元ゴールドマン・サックス)とかを見ると、これは新自由主義、弱肉強食ということにしていく、どんどん淘汰されていく。潰れそうなところは淘汰されればいいという方向性になっていくだろうなと思います。この国の企業総数の99.7%は中小零細企業ですから、そう考えると先は非常に厳しい状況。ここを打破していけるのは、次の選挙だと思っています」

21世紀型の新興宗教、新自由主義路線の「スガノミクス」

 次期総選挙の構図が浮き彫りになってきた。「大企業や大金持ちがますます富む、弱肉強食の新自由主義 対 内需重視の脱新自由主義」ということだ。もちろん立憲民主党とれいわ新選組が後者の立場であるのは言うまでもない。

 安倍首相が最も嫌うエコノミストとも言われた藻谷浩介氏(ベストセラー『デフレの正体』『里山資本主義』の著者)は2020年2月8日の毎日新聞の書評欄で、枝野氏が「私と言ってきたことと重なり合っている」と称賛した田中信一郎著『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』(現代書館)について、次のように紹介した。

 「『各人が自己利益の最大化を目指す結果として、経済全体が拡大することも、一定の条件がそろえばあり得る』と説いたのはアダム・スミスだった。それに対し、『一定の条件がそろえばあり得る』を取っ払い、『自己利益=部分最適の追求は、常に全体最適をもたらす』という短絡的な教義にして掲げたのが、新自由主義である。この21世紀型の新興宗教と訣別せねば日本の将来はないということを、本書はあらゆる方面から指し示す。理性的に思考できる一部の与野党政治家の良心に届くことを願うばかりだ」

 次期総選挙は、21世紀型の新興宗教である新自由主義路線のスガノミクス(旧・アベノミクス)と訣別するのか否かを問う政治決戦といえる。大企業や富裕層の自己利益追及が国民全体に波及していくとする「第三次安倍政権」と呼ばれる菅政権に対して、新興宗教と訣別する側の立憲とれいわが連携(選挙協力)するのかが、天下分け目の政治決戦を左右する一大ポイントになっている。

【ジャーナリスト/横田 一】

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