朝鮮戦争―日本の民主主義の変節、自由主義の崩壊の原点!(5)
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第38回「世界友愛フォーラム」が9月24日、「鳩山会館」(東京都文京区)において開催された。(一財)東アジア共同体研究所理事・所長(元外務省国際情報局長)の孫崎享氏(『朝鮮戦争の正体』著者)が「朝鮮戦争―なぜ起こったか、日本政治への影響―」と題して講演を行った。
70年前の朝鮮戦争の正体を今になって振り返ってみると、私たちが直面している「憲法の形骸化」「民主主義の変節」「自由主義の崩壊」「軍事大国に邁進するアメリカ」「アメリカに隷属する日本」という複雑に絡み合った糸がまるで嘘のように解きほぐされる。本論:論点5.「『朝鮮人民共和国』はなぜつぶされたのか」~アメリカ軍はこの臨時政府を認知せず、軍政実施を宣言
日本政府は1945年8月15日正午、ポツダム宣言の受諾と降伏決定を国民に発表しました。当時、多くの日本人が朝鮮にいたため、朝鮮半島が混乱すれば、日本人への略奪、暴行が起こる可能性は極めて高くなります。
そこで、朝鮮総督府政務総監の遠藤柳作氏は朝鮮半島が無政府状態に陥るのを恐れ、朝鮮人による政府樹立を当時人望が厚かった朝鮮人の呂運亨氏に要請します。同15日夜、呂氏は早速、朝鮮建国準備委員会を発足させ、委員長は呂運亨氏、副委員長は安在鴻氏が就き、総督府はここに権限を委譲します。そして、建国準備委員会は9月6日、「朝鮮人民共和国」の樹立を宣言しました。
【朝鮮人民共和国】閣僚名簿
主席 :李承晩(※1)
副主席:呂運亨
国務総理:許憲(※2)
内務部長:金九(※3)
外交部長:金奎植(※4)
軍事部長:金元鳳(※5)
財務部長:曺晩植(※6)
保安部長:崔容達
文教部長:金性洙(※7)
司法部長:金炳魯(※8)
宣伝部長:李観述
書記長 :李康国朝鮮人民共和国の閣僚の共通項は「民族主義」です。分断後に成立した、李承晩政権や金日成政権より、朝鮮全体を代表する高い統治能力を有していたとみられています。
しかし、朝鮮半島に上陸したアメリカ軍はこの臨時政府を認知せず、9月7日に軍政の実施を宣言し、9月11日にアメリカ陸軍司令部軍政庁(USAMGIK)を設置します。また8月の対日参戦で38度線以北を手中に収めたソ連軍も10月3日に、ソビエト民政庁の設置を宣言します。以降、「民族派」といわれる人々は、粛清や排除されていきます。日本総督の遠藤柳作氏が設立を促した、朝鮮人自らの統治を目指した「朝鮮人民共和国」を米国、ソ連が認めず、各々が軍政を敷いたわけです。
(つづく)
【金木 亮憲】
※1 この時点では海外にいた。 ^
※2 弁護士、北朝鮮で最高人民会議議長・金日成総合大学学長となる。 ^
※3 上海で臨時政府に参加、大韓民国臨時政府警務局長など、40年‐47年まで同主席。 ^
※4 プリンストン大学修士号、大韓民国臨時政府の外務総長など。 ^
※5 北朝鮮で最高人民会議常任委員会副委員長など。 ^
※6 戦後、平壌で活動。金日成に代わり得る唯一の人物だった。50年処刑されたとされる。 ^
※7 『東亜日報』、高麗大学校、韓国民主党などの設立者。51年5月から1年間は副大統領。 ^
※8 弁護士。1948年に初代大法院長。 ^
<INFORMATION>
(一財) 東アジア共同体研究所
東アジア共同体研究所は、鳩山友紀夫内閣時代に国家目標の柱の1つに掲げられた「東アジア共同体の創造」を目的とするシンクタンク。2013年3月15日に発足。理事長・鳩山友紀夫(第93代内閣総理大臣)の下、理事・所長の孫崎享氏(元外務省国際情報局長)、理事の橋本大二郎氏(元高知県知事)、理事の高野孟氏(ジャーナリスト)、理事の茂木健一郎氏(脳科学者)を中心に、プロジェクト形式で研究活動を行っている。
世界友愛フォーラム
アジア共同体研究所の事業の一環として、東アジアのみならず、広く世界の平和と共生を「友愛」の理念に基づいて推進していくための自由な議論や交流の場。これまでに、「東アジア共同体構想」や「東アジアの安全保障」「東アジアと沖縄」をテーマに勉強会やシンポジウムを開催、参加者は講師との意見交換など活発に議論を交わし、「世界の平和と共生」への理解を深めている。関連記事
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