【凡学一生のやさしい法律学】詭弁の論理学(1)
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詭弁は、確実に日本の民主主義を破壊している。日本に真の民主主義を実現させるためには詭弁の存在形式を理解し、詭弁を少なくとも日常の社会生活から排除しなければならない。詭弁の論理学は、今の時代にもっとも必要な社会知見である。詭弁はわかりやすくいえば「うそ」であり、「うそ」が蔓延する社会がまともな社会である筈がない。
日本社会は崩壊の危機に瀕している。しかし一見すると、高度の科学や文芸をもち、大量消費生活を謳歌する大多数の国民は、日本の文明が崩壊の危機に瀕しているなど夢にも思っていない。
社会・文明の崩壊が2~3年後に到来するという意味ではなく、たとえば明治維新から100年や50年という時間の間隔で振り返ったとき、日本に芽生えた文明が崩壊・消失する兆候が確実に見られるということだ。それは「詭弁」があらゆる階層に氾濫し、言語のもつ信頼性が喪失しているためである。人と動物を明確に区別する道具は、信頼を確認することができる「言語」である。言語をもたない生物集団は、せいぜい個々の寿命期間にのみ集団として地上に存在しうる。アフリカのサバンナのヌーの大集団は単なる生殖による種の継続に過ぎず、社会を形成し文化をもった生物集団ではない。人間が「人間らしい」こと、つまり人間性をもった集団として社会を形成し文明を継続維持しているのは、基本的に言語の存在と機能に負う。
1. 詭弁の存在形式
詭弁の存在形式は3類型しかない。それは(1)定性的議論と定量的議論のすり替え、(2)具体性のレベルと抽象性のレベルのすり替え、(3)帰納的論理と演繹的論理のすり替え(逆理)、の3類型である。人間のすなおな感性で虚偽性を感じた場合、論理的にこの3類型のいずれかに詭弁は集約される。以上の基本論理を理解したうえで、現実の社会的詭弁について実例を挙げて実証する。
2. 前川喜平と橋下徹の論争
菅新内閣の誕生に際し、テレビでは時事解説番組が大流行である。そんななか、有名弁護士で政治評論家である橋下徹氏のテレビ番組での発言をめぐって、前川喜平氏が言いがかりをつけた。「野党をはずかしめ、菅政権をほめるだけの言説で、(時事問題の公正な討論や解説になっておらず:筆者注)何の目的で呼んだのか。もう呼ぶな」という主旨の主張をした。
この前川氏の言葉に対して橋下氏が、「言論の自由を知っているのか。『もう呼ぶな』ではなく「自分もテレビに出してくれ」というのが筋だろう。正々堂々とテレビで公開討論をしよう。いっぱい聞きたいこともある」という主旨の反論で応戦した論争である。
(つづく)
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