自然免疫力を高め、万病に立ち向かう生き方を!(2)
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医学博士・統合医療医師
(ホリスティッククリニック銀座 院長)
小林 常雄 氏最近では、多くの新聞、雑誌に「免疫力」という文言が躍るようになった。コロナ騒動で、多くの人々が「自分の身体は自分で守る(自己治癒力)」の大切さに気づきはじめたためだ。加えて、コロナ騒動が去っても、第2、第3のパンデミック、エンデミックが人類を襲うことも間違いない。
国立がん研究センター、京大、東大などで約40年の研究実績があり、2万2,000人を超える、がんの予知・予防を行ってきた小林常雄 医学博士・統合医療医師(ホリスティッククリニック銀座 院長)は、「がんを治すことより大切なのは、“免疫力”を高め、がんにかからないようにすること」と喝破する。がんは発がん物質と食生活と関係の深い生活習慣病
――昨年出版された『がんの正体がわかった!~「がん」は予知・予防できる』(創藝社)のなかで、先生は「免疫力」に強く言及され、そのことが注目を集めています。
小林 免疫は、体の健康を維持していくために欠かせない大切なシステムで、一般的には、「自然免疫」と「獲得免疫」に分類されます。自然免疫とは、人間の体に生まれつき備わっている仕組みで、免疫細胞が自分と自分以外(非自己)を認識し、非自己である病原体をいち早く攻撃することで、病原菌の排除を行います。自然免疫には、「NK細胞」「マクロファージ」などがあり、それらを支えているのがビタミン類であることもわかってきました。
しかし、自然免疫は血液中に入った小さい病原体や、細胞のなかに入り込んでしまった病原体に関しては、対処するのが苦手とされています。そこで、異物に応じた攻撃方法を記憶する後天的な仕組みが、「T細胞」「B細胞」などの獲得免疫です。
獲得免疫には、一度侵入した病原体の情報を記憶し(「免疫記憶」)、再び侵入されたときにいち早く対処できるよう学習できるという特徴があります。一度かかった病気にかかりにくいのは、この獲得免疫が、抗体をつくることでウイルスなどの抗原を処理してくれているためです。ワクチンは獲得免疫の1種です。
免疫力を高めるとは「自然免疫力」を上げることを意味します。私は約40年のがんの研究を通じて、免疫力を高めることの大切さにたどり着きました。日本ではがんで亡くなる人の数が年々増え続けているという現実があります。しかし、米国ではそれらは減少傾向を示しています。
がんは「発がん物質と食生活に関係の深い生活習慣病」で、細胞のなかにあるミトコンドリアが呼吸異常を起こし、代謝ができなくなる病気です。
日本は先進国で唯一、がん死が増加し続ける国
小林 日本は戦後、米国の牛乳・牛肉とパンを食生活に取り入れて、従来主力であった日本食の立場は1992年には米国食に取って代わられました。牛乳、乳製品の供給量を大幅に増加させ、肉類も約20倍に増加させる一方、米穀食は約半分になりました。
米国はマクガバンレポートなどを通じて、約40年前に「日本食は理想食だ」と推奨したにもかかわらず、日本人はなぜ食生活を変えてしまったのでしょうか。日本人が真似をした米国スタイルの食は、「大腸がん」「肺がん」「乳がん」などを増やしてしまう食事だったのです。
日本のがん死は、約45年前には米国の半分でしたが、今では日本は先進国では唯一、がん死が増加し続ける国になっています。米国食を真似しはじめて40年後の今、がん死の数は4倍に増加しました。
米国ではすべての医学部に「栄養学教室」がある
――がんに限らず、コロナ、認知症など、多くの病気で、免疫力を高める食習慣が重要と語られるようになりました。しかし、小林先生の本には、日本における「西洋医学では無視される免疫対策」という記述があります。このことを詳しく教えてください。
小林 いくつかの例が挙げられます。まず、日本には約80の医学部がありますが、「栄養学教室」がある医学部は少し前で13%であり、現在はさらに少なくなっていると考えられます。日本の医学部の教授は大学に在籍中は「食事とがんは関係ない」といいますが、退職後に自身で医院などを開業した後に「食習慣は病気にとって、とても大切な要素である」と見解を変える医師が多いです。
一方、米国ではすべての医学部に「栄養学教室」があります。米国でも1960年代は、「がんウイルスの研究者以外は、がん学者ではない」と言われていました。ところが、日本の杉村隆先生(国立がん研究センター名誉総長、東邦大学名誉学長)が国立がん研究センターの研究所長をしていた1970年代に「焼き魚の焦げが強い発がん性をもつ」という論文を発表したところ、日本での注目度は低かったのですが、米国のジョージ・マクガバン上院議員がそれに注目し、動きました。
(つづく)
【金木 亮憲】
<PROFILE>
小林 常雄 氏(こばやし・つねお)
1944年鳥取生まれ。69年鳥取大学医学部卒業後、国立がん研究センター内地留学、72年~74年京都大学大学院、79年東京大学大学院卒業。京都大学と東京大学の大学院で生化学を中心としたがんの基礎研究を行い、東京大学で博士号を取得。79年以後、一心総合病院副院長、京北病院院長IMHCクリニック院長を歴任。2015年12月より美浜ホームクリニック・国際がん再発予知・予防センター長を務める。
NHK(ETV)放映の「人間はなぜ治るのか?第2回癌からの生還」治療ルポが大きな反響を呼んだ。16年9月アメリカ総合医療学会で招待講演、「生涯賞」を受賞。
著書として、『ついにわかった癌予防の実際』(主婦の友社)、『癌、温熱治療の科学』(東洋医学舎)、『告知してこそがんは治る』(現代書林)、『ガン病棟7割生還』(トクマブックス新書)、『ガンを消す自己治癒力』(同文書院)、『健康情報革命 ボケ、ガン常識を覆せ』(イーブック新書)、『免疫力を高めるコツ50』(同文書院)、『がんの正体がわかった!』(創藝社)ほか多数。関連キーワード
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