【縄文道通信第55号】縄文道と現代アニメーション文化―世界はなぜ日本のアニメ文化に注目するのか――縄文道の視点からの考察(後)
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(一社)縄文道研究所
NetIBNewsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
今回は第55号の記事を紹介。岡本太郎画伯がはじめて縄文土器と出会い、土器のもつ迫力と凄まじいエネルギーに感動し、縄文文化研究を始めた話は有名だ。
筆者も30年前に上野で開催された展覧会で縄文土器に出会い、縄文文化の魅力に取りつかれており、縄文人が、縄文土器の上で鳥獣戯画と同様の表現活動を行ってきたと仮説を立てられると考えている。
土器文化は弥生時代、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代と時代を下るにつれて、炻器、陶器と引き継がれていく。そのなかで、記号と縄文語が少しずつ文字へと変化していき、大和言葉につながったと考えている。
鳥獣戯画が描かれた後に、日本では絵巻物語の一大文化が栄える。絵巻で絵画、文字を含めて表現する文化は、鎌倉時代、室町時代、江戸時代へと継承された。
江戸文化で、世界に影響を与えたのは浮世絵であろう。浮世絵がヨーロッパの印象派の画家、マネ、モネ、セザンヌ、ゴッホなどに多大な影響を与えたことは、世界で周知の事実となっている。浮世絵作家のなかで、筆者も天才と感じて尊敬している人が葛飾北斎である。多くの作品を残しているが、北斎が偉大な漫画作家であることは意外と知られていない。
とくに有名であるのは、『北斎漫画 第2巻「森羅万象」』であろう。『北斎漫画』は全3巻があり、総ページ数970で、作品数は4,000という膨大なものである。これは北斎の弟子への「絵手本」として描かれたもので、まさに森羅万象、あらゆる自然を対象としている。
章立ては1章 鳥獣蟲魚 2章 山川草木、3章 波浪流水、4章 天地造化。まさに縄文時代からスタートし、平安時代の鳥獣戯画の延長にあると感じられる自然描写だ。
日本の漫画に、世界が注目している理由は、今までに述べてきたように日本人の歴史の水脈に営々と流れる縄文人の自然描写力である。さらに、縄文考古学者の小林達雄氏が力説しているが、縄文人は縄文大和言葉を駆使して、1万年以上にわたって縄文文化を継続してきたためだ。最後の縄文人といわれるアイヌ民族は、多くの歌や物語を伝承している。口伝伝承の文化であるため、アイヌの歌人には3日間、歌を朗詠できる人もいるといわれる。
日本人は縄文時代から多くの物語を口伝伝承してきたことから、極めて優れたストーリーテラーであって、あらゆる事象、現象を漫画というツールを通じて物語にする能力を有していると感じる。
日本語の語彙の豊富さは世界一とも言われ、諸説あるが約80,000語と言われている。縄文時代から続くオノマトペ、自然との共鳴、共感力に加えて、表現力、描写力が総合的に加わった結果が世界中の人々を引き付ける漫画作品につながっているのではないだろうか。今後も、魅力ある漫画を世界に向けて日本から発信できる作家が輩出されるであろう。
(了)
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