自然免疫力を高め、万病に立ち向かう生き方を!(3)
-
医学博士・統合医療医師
(ホリスティッククリニック銀座 院長)
小林 常雄 氏最近では、多くの新聞、雑誌に「免疫力」という文言が躍るようになった。コロナ騒動で、多くの人々が「自分の身体は自分で守る(自己治癒力)」の大切さに気づきはじめたためだ。加えて、コロナ騒動が去っても、第2、第3のパンデミック、エンデミックが人類を襲うことも間違いない。
国立がん研究センター、京大、東大などで約40年の研究実績があり、2万2,000人を超える、がんの予知・予防を行ってきた小林常雄 医学博士・統合医療医師(ホリスティッククリニック銀座 院長)は、「がんを治すことより大切なのは、“免疫力”を高め、がんにかからないようにすること」と喝破する。2次予防の「検診」から、1次予防の「食生活習慣」へ転換
――がんに限らず、コロナ、認知症など、多くの病気で、免疫力を高める食習慣が重要と語られるようになりました。しかし、小林先生の本には、日本における「西洋医学では無視される免疫対策」という記述があります。(つづき)。
小林 食と医療の超大国・アメリカでは、1973年から、がんの死亡率が増加の一途をたどっていました。加えて、肥満や心臓病、糖尿病なども増える一方であり、人々はこの問題に頭を抱えていました。当時のフォード大統領はそれらの問題を解決するため、上院議会に「特別委員会」を設置し、あらゆる分野の専門家を集め、国家的な調査プロジェクトを始動させました。その特別委員会の委員長が、ジョージ・マクガバン氏(上院議員)です。
特別委員会は、世界中の国々を地域別、人種別などに細かく分け、食生活と病気、健康状態との相関関係を専門的に探り、分析し、2年の歳月をかけて「アメリカ合衆国上院栄養問題特別委員会報告書」、通称マクガバンレポートにまとめました。このレポートが発表されて以降、アメリカでは、肉と脂肪の摂取を減らすなどの食事指導が行われます。
マクガバンレポートでは、東洋医学の医食同源の考え方や、日本人の食生活なども推奨されており、がんを防ぐ手段として応用すべきだと指摘されています。今から40年以上前の日本人の食生活は、アメリカから模範とされたのです。
当時の日本では、がんといえば「胃がん」が中心で、がん死の確率は米国の半分でした。そのため米国は「日本食は理想食だ」と判断を、「食事とがん」という問題が米国の重要なテーマとなりました。この時点で、米国はがんの第2次予防の「検診」から、がんの第1次予防の「食生活習慣」へと転換を図ったのです。
米国ではその結果、がん死亡者を減少させるためには、「食生活習慣」が何よりも重要であるという認識から、米国のすべての医学部に「栄養学教室」が設けられました。国民の食生活を改善させ、がん死亡率を下げるための研究や対策に対して、国家をあげて正式に費用が投じられるようになったのです。日本では残念ながら、公衆衛生大学院もなく、食事に対するプロジェクトを厚労省が実施した話も聞いたことがありません。
米国では、この20年間でがん死亡者が22%も減少
小林 次に、米国では80年代に調査研究がひと段落すると、90年には、米国国立がん研究所(NCI)が「デザイナーズフーズ・プロジェクト」を開始、がん予防に役立つ食品群をデザイナーズフーズとしてまとめ、野菜の摂取を呼びかけました。主に野菜や果物などの約40種類を3群に分けてピラミッドの表にまとめています。
下記の食品群は、がんの予防に限らず、免疫力を高め、生活習慣病を防ぐ作用があります。この表は米国で作成されたため、海藻類に関する調査が不足していますが、現在では、これらに加えて多くの海藻類が食生活に取り入れられるようになっています。
<第1群>
【もっとも重要度の高いもの】
にんにく、キャベツ、甘草、大豆、ショウガ、セリ科(ニンジン、アシタバ)。<第2群>
タマネギ、ターメリック、お茶、十字花科(ブロッコリー、カリフラワー)、ナス科(トマト、ナス、ホウレン草、柑橘類)。<第3群>
ローズマリー、バジル、セージ、大麦、小麦ふすま、米糖カンタルーブ(メロン)、キウイ、ベリー類、キノコ類、海藻類。なかでも、「5 A DAY(ファイブ・ア・デイ)と呼ばれる、野菜や果物の摂取を増やし、低脂肪・高植物繊維の食生活を普及することを目標に、野菜や果物を1日に5皿以上食べる運動が推進され、それらの習慣が米国民の間で少しずつ広がりました。
こうして米国は世界に先駆けて、「食生活の改善」や「禁煙運動」に取り組んだ結果、がん死が減少しました。2015年の米国国立がん研究所の発表によれば、この20年間でがん死亡者数は22%も減少し、米国の人口増加との比較でみれば、40%余り減少しました。
(つづく)
【金木 亮憲】
<PROFILE>
小林 常雄 氏(こばやし・つねお)
1944年鳥取生まれ。69年鳥取大学医学部卒業後、国立がん研究センター内地留学、72年~74年京都大学大学院、79年東京大学大学院卒業。京都大学と東京大学の大学院で生化学を中心としたがんの基礎研究を行い、東京大学で博士号を取得。79年以後、一心総合病院副院長、京北病院院長IMHCクリニック院長を歴任。2015年12月より美浜ホームクリニック・国際がん再発予知・予防センター長を務める。
NHK(ETV)放映の「人間はなぜ治るのか?第2回癌からの生還」治療ルポが大きな反響を呼んだ。16年9月アメリカ総合医療学会で招待講演、「生涯賞」を受賞。
著書として、『ついにわかった癌予防の実際』(主婦の友社)、『癌、温熱治療の科学』(東洋医学舎)、『告知してこそがんは治る』(現代書林)、『ガン病棟7割生還』(トクマブックス新書)、『ガンを消す自己治癒力』(同文書院)、『健康情報革命 ボケ、ガン常識を覆せ』(イーブック新書)、『免疫力を高めるコツ50』(同文書院)、『がんの正体がわかった!』(創藝社)ほか多数。関連記事
2024年11月11日 13:002024年11月1日 10:172024年10月25日 16:002024年11月14日 10:252024年10月30日 12:002024年10月29日 17:152024年11月18日 18:02
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す