前熊本市長・幸山政史氏が自伝「下手と呼ばれた男の流儀」を出版
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熊本県議、熊本市長を務めた後、熊本知事選に2度出馬した幸山政史氏がこのほど、政治家生活25年を機に、自伝をまとめた。到底書評と呼べるものではなく、読書感想文の域を出ないが、それをもって書籍紹介としたい。
と言いつつ、いきなり個人的な話になるが、筆者は2004年、熊本市長だった幸山氏を取材したことがある。当時39歳だった幸山氏の第一印象は「ずいぶん若い市長さんだな」というものだった。それから16年ほどが経過し再会したが、今でも基本的にその印象は変わらない。「政治家として老け込むには、まだまだ早い」と個人的に親しみを感じているので、ひいき目がないとは言わない。
自伝には、熊本市長時代のエピソードなどがふんだんに紹介されているが、幸山氏の政治活動に関する記述は一切ない。おそらく意図的に書かなかったものと推察されるが、それによって、幸山氏がうちに秘めた「このままでは終わらない」という思いが行間ににじみ出ているという印象を受けた。「自伝」ではなく、「決意表明」だとさえ思うこともあった。たとえば、この部分。
私が選挙で戦った直接の相手は蒲島知事でしたが、“本当の相手”は別との認識でした。2度の熊本県知事選挙は、長年続いてきた権力構造を変えようとする権力闘争そのものだったのです。その争いに破れた今も、私は熊本県という地方政治の抱える重要な問題は何ら変わっていないとの認識でいます」(第四章 政治家の矜持 pp.239〜240より引用)
「本当の相手」が何かについては、この場では読者の想像に任せる。私が注目したいのは、「争いには破れたが、熊本県が抱える重要な問題は何も変わっていない」と述べている点だ。幸山氏は今でもこれを「変えたい」と思っていると解して差し支えない。では、「変える」ためには、幸山氏にどういう選択肢があるのか、という話になるわけだ。だが、想像でモノを書いても、幸山氏の本意からかけ離れるばかりだろうから、ここでやめにする。
最後に、あとがき中の一文を引用する。
「私は今も希望を捨てていません。この本を介して皆さんとともにより良い政治について考え、停滞した地方政治を覚醒し、熊本の明日への希望を見出すことができれば、こんなに幸せなことはありません」(p.247)
幸山氏が今後何に向かって努力するのか、楽しみだ。
【大石 恭正】
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