【政権崩壊序章】北海道2区補選で自民候補擁立を断念 「スガーリン」の姑息なねらいが見え見え
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自民の候補者擁立断念にも、「万全の備えで臨む」(立民)
菅政権(首相)は、1月15日に収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛・元農水大臣(北海道2区)の汚職事件の早期幕引きに躍起だ。疑惑発覚後に吉川氏はすぐに入院、説明責任をまったくはたさないまま議員辞職したが、その辞職にともなう「北海道2区補選」(4月25日投開票)で自民党は与党候補擁立を断念。自民党の山口泰明選対委員長は15日の菅首相との面談で、補選を不戦敗にする決定をしたことを明らかにした。これは姑息な撤退戦にほかならず、収賄事件が早く忘れ去られ、政権への打撃を少なくしようとする魂胆が透けて見える。
補選からの撤退は、野党分断の狙いを込めたものでもあった。北海道2区では過去2回、野党候補の合計得票数が2連勝した吉川氏を上回っており、野党候補一本化をしていれば勝敗が逆転していた可能性が高かった。その教訓から今回は、野党統一候補擁立の気運が高まり、1月16日の市民団体主催の街宣と19日の討論会に、立候補を予定している2候補(立憲民主党の松木謙公・元衆院議員と、共産党の平岡大介氏)が参加すると報じられてもいた。こうしたプロセスを経て候補者を調整しようとする野党共闘(選挙協力)の気運に水を差そうとしたことも明らかだった。
16日の街宣でマイクを握った逢坂誠二・立民道連代表はその後の囲み取材で、次のように述べた。
「自民党の候補擁立断念には驚いた。『一強』と呼ばれる与党が戦わずして敵前逃亡をした印象だ。ただ選挙は何が起こるかわからないので、我々は万全の構えで臨んでいきたいと考えている」。
統一候補擁立に向けた調整を続けることを明言した逢坂氏に対して、こんな関連質問をした。
――「(選挙で)何が起こるかわからない」というのは、たとえば無所属の保守系候補が出て自民党が応援するとか、維新の候補を自民党が応援することもあり得るので、野党統一候補擁立が(必要だと)。
逢坂代表 さまざまなことを想定しておかないと、選挙というのは何が起こるのかわからない。とくに最近の選挙は直前になって候補者が出てくることがあるので、そうなったときに「準備が間に合いませんでした」では元も子もないので、その意味では野党が大きな塊になっているのが基本だと思う。
――(統一候補擁立に向けた)調整は今まで通り進めるのですか。
逢坂代表 そうです。
「維新+ニトリ=隠れ自民」への警戒感
実際に、「日本維新の会」道総支部長の鈴木宗男参院議員(北海道選挙区)は、「保守の訴えをする候補者がいないのは選挙民に失礼」と強調し、維新として候補擁立に向けた作業を進める考えを明らかにしている。また2011年の札幌市長選に自民党から立候補して落選した本間奈々氏も、補選出馬への意欲を語っていた。ちなみに安倍前首相や菅首相と太いパイプを有する宗男氏は一時、野党的立場の時期もあったが、すでに古巣の自民党と関係修復。19年の北海道知事選では、自公推薦の“菅チルドレン”こと鈴木直道知事(前・夕張市長)を精力的に支援して、当選に貢献した。娘の鈴木貴子衆院議員(北海道比例)も自民党で、維新候補を水面下で自民党が支援してもまったく違和感はないのだ。
「こうした“隠れ自民候補”が出馬した場合、北海道知事選で菅チルドレンの鈴木直道知事(前・夕張市長)の応援団長を務めたニトリの似鳥昭雄会長が再び支援する可能性が高い。『政治色が薄い経済人を担ぎ出す』といった極秘シナリオを、菅首相と懇意な選挙プランナーの三浦博史氏や似鳥氏、鈴木氏らと練っていても不思議ではない。鈴木知事誕生で汗をかいた“チーム菅”が“隠れ自民党候補”擁立とともに一気に再結集するというわけです」(道政ウォッチャー)。
今回の候補擁立断念は野党を「補選勝利は確実」と油断させるための仕掛けにすぎず、“隠れ自民党候補”を擁立して逆転勝利を狙ってくることは十分に考えられるというわけだ。野党が統一候補擁立を実現、万全の態勢を築くことができるのか。自民の擁立断念で注目されることのなくなった北海道2区補選だが、じつは次期総選挙の野党共闘を占うという意味でも目が離せないのだ。
【ジャーナリスト/横田 一】
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