2024年12月23日( 月 )

政府債務論のコペルニクス旋回、日本は反省せよ~イエレン・パウエル連携は強力な株式支援に(2)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載していく。 今回は2021年1月25日付の記事を紹介。

(2)政府債務論の旋回はパウエル議長も同様

イエレン氏に呼応するFRBパウエル議長

 イエレン氏に呼応する形で、パウエル議長も財政債務論の見直しに踏み込んでいる。パウエル議長は景気回復と財政の持続性はともに重要であり、政府債務のGDP比は高いが、国債費は抑制されているとして、今後数年に財政リスクが顕在化する可能性を否定した。また、債務負担の増加に伴って、議会が低金利政策の維持を求める可能性についても、現在は「財政抑圧」の状況には至っておらず、FRBは物価と雇用の政策目標の達成に注力することが可能と指摘した(2020年12月17日FOMC後の記者会見)。

 1月に入りシカゴ連銀のエバンス総裁、アトランタ連銀のボスティック総裁などが「状況が順調なら2021年末か2022年にはテーパリングの可能性がある」と発言すると、パウエル議長直ちに「今は出口の議論をする時ではない」と述べ、否定した。「世界金融危機から得られた教訓は(金融緩和から)早計な撤退をしないように注意することだ」(1月14日発言) 。

 パウエル氏もFRB議長就任以前に政府債務水準は、長期的な懸念要素だとの主張に理解を表明していたといわれるが、今や大旋回しているといえる。

イエレン・パウエル連携に注目するWSJ

 政府債務論見直しでの財務省とFRBの連携についてWSJは警戒心を表明している。

『イエレン氏はオバマ政権時代、ジェローム・パウエル現FRB議長と共に働いた。2人は財政政策と金融政策を混合して考える可能性がある。これはイエレン氏の政策影響力にとっては良いことだろうが、FRBの独立性にとってそうとは言えない。国債の買い入れを金融政策と切り離すというFRBと財務省の1951年の有名な「アコード」以前の常態に、FRBは回帰しているように見える。1951年「アコード」は、われわれが知るようになった今日のFRBを誕生させた。だが現在、FRBは熱心に国債を買い入れ、パウエル氏は政治家が望む分だけ購入することを示唆している。FRBの理事、とりわけその職員らとのつながりから、イエレン氏はここ最近の歴代財務長官よりもFRBに対して強い影響力をもつ可能性がある。このことは承認公聴会の審議でポイントとなるだろう。』(11月20日社説)

    このようにWSJや共和党系は財政金融一体化を警戒しているが、それが正しいとは限らない。WSJはQEをしきりと批判してきたし、金本位復帰論者であったジュディ・シェルトン氏のFRB理事就任を擁護するなど、社論に混乱がある。またマクロ経済政策に関しては、共和党よりも民主党の方が筋が通っている。イエレン氏の宣言は、大きな政府を標榜する民主党のマクロ経済政策と整合的であるが、共和党のマクロ経済政策はトランプ政権の下で首尾一貫性を欠くものになっていた。QEに反対したり金本位制復帰に理解を示していたかと思えば、パウエル議長の利上げを批判した。ティーパーティによる財政赤字批判、小さな政府追求の党是に反して、トランプ氏は財政赤字を拡大させた。

(つづく)

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