2024年12月23日( 月 )

政府債務論のコペルニクス旋回、日本は反省せよ~イエレン・パウエル連携は強力な株式支援に(4)

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載していく。
 今回は2021年1月25日付の記事を紹介。 

(4) 財政金融一体緩和、MMT導入の正当性 

MMT導入、供給力過剰・貯蓄過剰に対する最良の処方箋 

 このようにすでに先進国で定着したMMTは、金利の上昇とインフレ高進を引き起こし、政府破綻に帰結する、と批判されてきたが、まず当分はそのような懸念は杞憂であろう。 そもそもコロナ感染が発生する前の世界経済は、物価低下圧力=需要不足、と金利低下圧力=金余りという二つの根本的困難を抱えていた。需要不足はインターネット・AI・ロボットによる技術革命が生産性を押上げ、供給力が高まっていたために引き起こされた。金利低下は企業の高利潤(生産性上昇によって企業が獲得した付加価値)と家計の過剰貯蓄が購買力を先送りしているために引き起こされた。よって財政と金融双方の拡張政策で余っている資金を活用し、需要を喚起することが必要であった。コロナパンデミックを契機に、遊んでいた資本と供給力が活用されれば、景気はコロナ感染前より良くなるはずである。 

 供給力余剰と貯蓄余剰の経済においては、財政赤字は悪であるというファンダメンタルズ分析に基づかない経済学者、メディア、エコノミストの強迫観念こそが、破壊的な政策をもたらしてきた、とのMMT提唱者の主張は説得力がある。(例えばウィリアム・ミッチェルニューカッスル大学教授 「コロナ危機と財政膨張①」日経新聞経済教室12月22日) 

MMTは成功し、新財源手段として定着していくだろう 

 武者リサーチは現在の先進国挙げての財政ファイナンス=MMTは破綻することなく、政策目的を成し遂げる可能性が強いと主張してきた。特に米国は、①金利低下が住宅需要の増加に結びつく、②Covid-19の下でも期待インフレ率はほとんど低下していない、などアニマルスピリットは健在である。財政金融支援により需要は大きく高まり、需給ギャップは縮小し、FRBが望む2%インフレターゲット実現の可能性は高い。その過程で長期金利は2%を超える水準まで回復していくものと思われる。MMTはこのようにして政策的有効性が証明され、支出対象を教育、新技術開発、新ソーシャル・セーフティネットなどの分野での歳出財源の手段として定着していくのではないか。 

(了)

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