大和力を、世界へ。コロナ禍のなかでアートにできること(4)
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神獣に代表される日本古来の文化をモチーフに、現代的な瑞々しい感性で作品を送り出し続ける、アーティストの小松美羽さん。「見えない世界、神々と人をつなぐことが私の役割。役割をまっとうするために、作品を見てもらいたい。牙がある画家になりたい」と話す小松さん。コロナ禍のただ中にある世界で、何を感じているのか。
「神獣さん」を伝える役割
――テクノロジーが発達して、社会全体がデジタルにシフトしています。社会のテクノロジー化、デジタル化をどう捉えていますか。
小松 数年前に台湾の企業と協同でVR(仮想現実/3D映像)をつくったんです。一緒に描いた絵を最新の技術者と一緒に立体にしたりして、ゴーグルを装着して聴覚にも訴えかけるようなものを創ったりしていましたが、そういった作品も発表しにくくなっています。ゴーグルが感染の原因になったりするのと、あとはデータがすごく重いので手軽にネットで発表するわけにもいかない。多くの学びがありましたが、こういった技術や発想が、コロナ禍では発表が困難になったと思います。
――ここまで人との接触が制限されることを、ほとんどの人は経験していません。こういった状況に対して、人々の感情がささくれ立っているところもあります。自粛派と反対派で言い合いみたいな状況にもなっています。
小松 私は基本的にネットニュースなどを見ないようにしています。どこまでが本当で何が嘘なのかがわからなくて。新聞などのきちんとしたメディアだと記事が管理されているっていう信頼感がありますが、誰が書いたかわからないものに翻弄されていいのかなって。
――永遠に交わらない議論やフェイクニュースの拡散などをベースにした「分断」が進んでいるという見方もあります。社会は良い方向に向かっていると感じますか。
小松 私は悪いほうに行きたくないって思います。アメリカでアート市場が活発なのも、物質主義にたいして疑問をもった人たちが多くなったことが背景にあるのでは。自発的に癒さなければならないっていう思いがあるからアートを大切にしていて、アーティストを尊重してもらえる国になったのかもしれません。資本主義って良い面も悪い面もあるので、そのなかで人々は葛藤を感じている。
普通のほうが「美術オークション」って聞くと、すごくお金がかかっていて「セレブ」なイメージがあると思うんです。でも実際に行ってみると、会場の外ではいろいろなアーティストが集まってデモとかしているんです。「上澄みみたいな作家だけを扱うんじゃなくて、自分たちの作品をもっと見てくれ」って主張したりして、アメリカって本当に多様性があるというか。そういった経験をしたなかで自分が発表の機会をもらっているのは、多くの人々に神獣さんを伝える役割があるのだと思います。
(了)
<PROFILE>
小松 美羽(こまつ・みわ)
現代アーティスト。1984年長野県坂城町生まれ。女子美術大学短期大学部卒業。20歳のときに制作した銅版画「四十九日」が好評を博してプロ活動へ。2014年、出雲大社へ絵画「新・風土記」を奉納。15年、有田焼の狛犬「天地の守護獣」が大英博物館日本館に永久展示される。16年から「The Origin of Life」が4 World Trade Center(ニューヨーク)に常設展示。19年、VR作品「INORI~祈祷」が第76回ヴェネチア国際映画祭VR部門にノミネート。20年、日本テレビ系「24時間テレビ」の〈チャリTシャツ〉をデザイン。著書に『世界のなかで自分の役割を見つけること』(ダイヤモンド社刊)など。
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