【市議座談会】2021年の福岡市政の課題とは〜コロナ禍で見えにくい失業者、生活困窮者への支援を(中)
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福岡市民クラブ代表の田中しんすけ氏(4期、中央区)、福岡令和会幹事長の浜崎太郎氏(博多区、3期)、自民党市議団政調会長の調崇史氏に、福岡市の昨年からのコロナ対策、今年の市政の課題について語ってもらった。座談会では市の対応の早さなどに一定の評価をしつつも、失業者、生活困窮者がますます増えていくことが懸念されるなか、より一層踏み込んだ施策を行い、市民の生活を支援していくことなどが提起された。
――コロナ対策を前提として、今年重視する福岡市の課題、政策についてうかがいます。
浜崎 事業者の支援が重点課題であると思っています。福岡で商売、物づくりをしている事業者の売上が深刻なまでに落ち込んでいます。行政が個人や会社の事業を支援するというのは難しい話ですが、やらないといけない時代になっていることを認識すべきです。仮にコロナが収束しても事業者の業績はすぐには戻りません。
国レベルでは政府が日本航空などに融資をしていますが、そのミニ版が福岡で必要になっていくと思います。現在の商工金融の形態でももちろんですし、福岡を盛り上げるために、福岡の魅力的な商品をつくっている企業に協力するために、商品紹介の支援や、協力しようとしてくれる市民を増やしていくことなどに力を入れないといけないと思います。
たとえばふるさと納税について、税金を他県から呼び戻すという発想ではなく、地域の特産品の販売を支援するということを明確にして、福岡の特産品をつくっている会社を盛り上げるためのツールとして、力を入れてはどうかと思います。
調 至急、かつ最重要のコロナ対策として、失業対策、雇用対策に取り組むべきと思っています。2回目の緊急事態宣言により多くの事業者の業績が落ち込む状況において、年度末が近づいてきており、有期契約の労働者の契約が打ち切られることを非常に懸念しています。また福岡は学生の多いまちですが、就職の内定を得ていたが、取り消されたという学生の話も相当数聞いており、行き場のない人たちが多くいるはずです。
事業者は行政からみえやすい存在であり、持続化給付金や家賃支援などが出されています。しかし、そこで働いている人たち、また今はまだ働いていない学生というのはなかなかみえていない存在なのでしょう。これによってどのような事態が引き起こされるのか、おそらく現在は誰もわかっておらず、怖いと思っています。
先日、発表された自殺者の統計によると、昨年の女性の自殺者が2019年より14.5%増えました。福岡県のデータでいうと昨年職を失った人についていえば非正規雇用の女性が多く、自殺者の増え方はリンクしているのかと推測しています。
雇用対策イコール生活困窮対策だと思います。福岡市として、関連の対策をわかりやすいかたちで、かつ真剣に解決したいという強い意思を示さないと、この傾向を止められないと強く懸念しています。コロナが長期化し、緊急事態宣言が発出され、かつ年度を跨ぐ時期に差しかかるという初めての経験であり、この時期に起こり得る事態について、いろいろなことを考えなければいけません。
ほかの市の事例があります。札幌市が給付金付きの就職支援、職業訓練を行っています。昨年5月ころ、コロナ離職者を対象とし、訓練に参加すると給付金が出るという就職支援を国からの予算や独自の一次補正、二重補正予算を用いて行いました。このように、市町村でもやれることはあると思っています。行政がコロナ離職者に対して対策を打ち出す姿勢を示すことそれ自体に意味があります。
求人倍率が高止まりしている介護、自動車運転などの業種に就職する人に対して就職準備金の給付金などを用意するのも一案だと思っています。コロナ離職を余儀なくされた人がいて、一方で人手を必要としているところがあるということで納得できる使いみちだと思います。とくに、公的な責任があり業務をまわさないといけないところで、人を生かすために給付金が使われるということであれば納得してもらいやすいと思います。
田中 今後の10年、20年という長期スパンを見越して、福岡市をどんなまちにしていくかとかいう打ち出しが大事であり、その議論を行うべきだと思います。そのために調査予算を組み、まちづくりや今後の可能性について調査、議論できればと思っています。現在は、全国レベルで住みやすいまちのランキングが溢れている時代です。福岡市が目指すべきは世界の多様な人々に選ばれ、住んでもらうまちであり、そのために仕掛けていくことが必要です。福岡市が今の時代に福岡市への移住を促進するためにどのような打ち出しをしてアピールできるのか議論を深めるべきです。
従来よくみられたのがロサンゼルス、シアトルのように、スタートアップ、ITを主眼としたアピールであり、最近では国際金融都市の構想が打ち出されています。これら自体は魅力あるものですが、根幹となるポイントは、新しいものをいろいろと取り入れて、変わろうとしているまちだとか、あるいは多くの外国人が居住し、アジアのみならず全世界から多様な人々が集まり、発展していくまち、などというものであり、その方向性の打ち出し方を定めるための事前調査を積み上げられたらよいと思っています。
福岡市は非常に住みやすいまちだと思いますが、それだけでは世界レベルでは不十分です。かつてクリエイティブ都市という案が議論されたこともありましたが、それを真に受けて実施している自治体はなく、この機会に施行してみるのもよいと思います。
(つづく)
【茅野 雅弘】
<プロフィール>
田中 慎介(たなか しんすけ)
1978年生まれ。福岡県立筑紫丘高校卒業、九州大学法学部卒業、早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間会社勤務を経て、2007年に福岡市議会議員初当選(中央区、現在4期目)。19年福岡市民クラブ代表に就任。
URL:https://www.tanakashinsuke.jp/
浜崎 太郎(はまさき たろう)
1967年生まれ。福岡県立武蔵台高校卒業、米国サウスイースト・ミズーリ州立大学経済学部卒業。民間会社勤務、社会福祉施設の施設長を経て、11年に福岡市議会議員初当選(博多区、現在3期目)。19年福岡令和会幹事長に就任。
URL:https://hamasakitaro.com/
調 崇史(しらべ・たかし)
1978年生まれ。福岡県立修猷館高校卒業、九州大学法学部卒業。民間会社勤務、元福岡市長秘書を経て、11年に福岡市議会議員初当選(城南区、現在3期目)。19年自民党市議団政調会長に就任。
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