【BIS論壇No.340】コロナ禍の下の世界経済
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NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は2021年2月2日の記事を紹介。
新型コロナウイルス感染者は世界全体で1億人を突破。死者は200万人を超えた。日本でも感染者が40万人、死者は6,000人に近づいた。政府は2月2日、緊急事態宣言の3月7日までの延期を決定。補償が十分でないため、とくに飲食業界では店を閉鎖するところも出ている。200年以上の歴史がある葛飾区柴又の老舗も閉店し、千代田区九段のホテルも営業中止を決定したという。
コロナ禍により、オンライン会議やオンラインビジネスが増加し、ポストコロナはIoTや5G、AI、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ロボットなどを活用したビジネスや医療、社会活動が急速に進展するものと思われる。
国際通貨基金(IMF)の予測では、コロナ禍をいち早く抑え込んだ中国が唯一、2020年のGDP成長率が2.3%のプラスになるとみられている。米議会予算局によると、20年の米国のGDP成長率はマイナス3.5%と大幅に景気後退となったが、21年は4.6%のプラス成長を予測。一方、IMFは日本の20年のGDP成長を5.1%のマイナス、21年は+3.1%のプラス成長と予測しているが、21年の日本のGDP成長率は主要国の中で最低となっている。
日本は1990年以来、経済の停滞が30年間継続しており、コロナを機に2030年までの経済回復を目指して格段の努力が求められている。そうでなければ、日本は「年老いた金メダリスト」(『ファクトで読む 米中新冷戦とアフター・コロナ』近藤大介著、講談社現代新書 より)として、アジアからも相手にされなくなるだろう。
日本は米国トランプ政権が脱退した後、18年12月発効を目指してTPP締結交渉で主導的な役割をはたした。20年末にEUを正式に脱退した英国政府は2月1日、TPP参加を正式に申請した。英国のアジア関与政策が動き出す。英国が参加するとTPP参加国が世界で占めるGDPの割合は13%から16%に増加。英国とTPP11カ国との19年の貿易額は16兆円と過去10年間で7割増を記録。英国は軍事面でも、今春以降に空母「クイーン・エリザベス」を含む空母打撃群を東アジアに展開する方針という。英政府は日米が主導する「自由で開かれたインド太平洋構想」への参加にも関心を深めているという(日経新聞2月1日付より要約)。
さらに英国は、アングロサクソンの諜報組織「ファイブ・アイズ(別名エシュロン=はしごの隠語)」への日本の参加に米国とともに前向きという。TPPは当初、日米を中心にした中国封じ込め策としての要素が濃かった。中ロ主導のユーラシアの「上海協力機構」への対抗策として当時の安倍政権が打ち出した中央アジアでの「自由と繁栄の弧」と同類の戦略だ。
中国は、21世紀に発展の中心となるユーラシア大陸を核とする広域経済圏「一帯一路」構想とその融資機関「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」の融資活動を推進中である。
聖徳太子の「和を以て貴しとなす」の精神、かつて「アジアは1つ」と唱えた岡倉天心の理想、「論語と算盤」で経済に論語の精神を取り入れるべしと唱えた渋沢栄一の思想、「資本主義に倫理と哲学を」と力説した宇沢弘文東大名誉教授の信条を、コロナ後のアジアの新たな経済発展と平和構築に取り入れることが肝要であると確信する次第である。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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