世界平和に向けて(20)オンラインに切り替わる採用・研修現場 企業は今後も実習生受け入れを希望(前)
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グローバルイノベーション事業(協)
専務理事 徳丸 順一 氏新型コロナウイルスの感染拡大にともなう入国制限により、実習生の入国が停止・延期となり、実習生受け入れ事業を行う監理団体や企業の現場に大きな影響がおよんだ。今後数年は海外との往来制限の継続が想定されるなか、実習生事業の展望などについて、(一社)福岡県中小企業経営者協会連合会(小林専司会長)により設立されたグローバルイノベーション事業㈿(略称:Globa CA)専務理事の徳丸順一氏に話を聞いた。
コロナ禍でも企業は実習生受け入れ継続を望む
――新型コロナウイルスの感染拡大により、実習生事業にどのような影響が出ていますか。
徳丸順一氏(以下、徳丸) 入国制限により実習生の受け入れが停止し、とても困っています。2020年4~5月に多くの実習生を受け入れる予定でしたが、延期になり、キャンセルした人もいます。企業も実習生が来ることを想定して事業計画を立てていたため、同様に困っています。
感染拡大が始まった当初、入国制限を受けるというリスクが浮上したことから、「今後は実習生よりも日本人の労働者で」という考え方に変わるのでないかと懸念していました。しかし、実習生の受け入れ実績がある企業は引き続き受け入れを望んでいて、実習生事業は今後も大丈夫と感じています。
他方、受け入れ実績がない企業では、この状況下で実習生の受け入れを新たに始めることに二の足を踏んでおり、新規の受け入れ企業は増えないでしょう。コロナ禍で経営が苦しくなったことに加え、インバウンド需要が減っている宿泊業界なども受け入れに消極的になっています。
昨年、実習生の入国が再び可能となったのは7月末ごろからです。ベトナムからは、入国制限が始まる昨年3月以前にビザを取得済みであった実習生や留学生など約300人が、1週間に1便、成田空港から入国できるようになりました。その後、中国、フィリピン、タイと少しずつ増えていきました。彼らはもともと3~4月に来日する予定であったため、来日が約4カ月伸びたことになります。
昨年の10月下旬には、3月の入国制限開始時に在留資格を申請中であった人の入国が可能となりました。それを受けて11月から人数が増え、週に2,000〜3,000人が来るようになりました。当組合では8月に3人、11月に15人を受け入れることができました。実習生はベトナムからが最も多く、タイ、中国、フィリピンの順番に入国できるようになりました。ただ、その後、変異ウイルスによる市中感染が確認されたことを受けて、今年1月に入国が再度禁止となりました。
採用も研修もオンラインに
――実習生の採用や研修はどう変わりましたか。
徳丸 採用面接はオンラインに切り替えました。ほかの組合も同様です。現地に面接に行くとなれば、2週間の自主隔離が求められるため非現実的です。かといって、隔離なしで行けるようになるのは何年後かが読めない状況にあります。
当組合は比較的早く、20年5月にオンライン面接を始めました。もともとは、コロナ禍で来日が延期になり、「本当に日本に行けるのでしょうか」と不安に駆られた実習生に対するフォローとして、オンラインでの面談を始めたのがきっかけです。その後、実習生受け入れを望む企業からの要望を受けて、採用活動を再開するためにオンライン面接を始めました。
――オンライン面接に何か不都合は?来日して実際に会ってみて、面接時のイメージと違ったということはありませんか。
徳丸 採用の決定後、母国での研修時に受け入れ企業と一緒に、月1回のペースでオンライン面談を行うことによってコミュニケーションを深めており、来日して実際に会ってみたときにギャップを感じることはありません。定期的なオンライン面談は効果があると実感しています。以前は、私がベトナムへ1~2カ月に1回、面接のために行く際に併せて面談していましたが、オンラインであれば、より頻繁にフォローすることができます。今後、コロナ禍が収束し、現地に行けるようになった場合でも、オンラインによる定期的なフォローを併用するように制度化していきます。
実は、面接から来日まで2年2カ月もかかった実習生がいました。来日予定時にあいにく入国制限が始まり、先日ようやく入国したばかりです。長い間我慢してよく来てくれたというのが率直な感想です。オンライン面談で些細なことでも情報を共有することにより、当人もモチベーションを維持できたのだと思います。
(つづく)
【茅野 雅弘】
<プロフィール>
徳丸 順一(とくまる・じゅんいち)
1977年生まれ、福岡県久留米市出身。福岡県立明善高校、大阪外国語大学卒、グロービス経営大学院修了(MBA取得)。大手電器メーカーの海外駐在員(ベトナム、メキシコ)を経て、2018年グローバルイノベーション事業㈿を設立、専務理事に就任。関連記事
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