中国経済新聞に学ぶ~若者はなぜ有料コンテンツにお金を払うのか
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実用的で興味がある知識コンテンツを購入
リサーチ会社の艾媒諮詢がまとめたデータによると、2017年以降、中国のオンライン有料知識コンテンツ業界の市場規模が急速に拡大しており、20年は392億元(1元は約16.8円)に達し、21年は675億元に達すると予想される。オンライン注文、バーチャルでかたちのない商品、時間と場所を選ばない消費など、一見ささいな動きの背後には、さまざまな要因によって若者の身に起きた大きな変化がある。
検索欄に「公務員試験」と打ち込み、エンターキーを押すと、目に飛び込んでくるのは、色彩が氾濫して見分けがつきにくい大量の広告だ。90後(1990年代生まれ)の公務員の李舟さんは、「これを見れば、私がどうしてお金を払ってレッスンを受けることにしたかがわかると思う。今は情報が多すぎて頭がクラクラするほどで、識別したりふるい分けしたりするのも、とてもコストがかかる。試験の準備に気力を注がなければならなかった(ので有料コンテンツを購入した)」と話す。
李さんに限らず、実際、大勢の若者が雑多な情報に困惑している。データ分析機関の企鵝智酷がまとめた研究報告「有料型知識経済報告:どれくらいの中国ネットユーザーがお金を払って経験を買っているか?」によると、情報が氾濫し、受け取る情報が多すぎる時代にあって、価値ある情報を迅速に取得することの難しさが新たな問題になっているという。
研究者の盧春天さんは「有料型知識:特徴、成因、影響」のなかで、「第3次産業革命の後、社会の分業がますます細分化し、技術イノベーションの複雑さと専門化のレベルがますます高まり、知識を生み出す人が独立して働き、個人単位で生産するというスタイルはますます難しくなり、知識コンテンツの生産スタイルも工業生産スタイルへと転換しつつある」と指摘した。
こうした背景の下で、消費者ニーズがコンテンツ生産者の基本的な方向性となり、体系的な情報の整理にしろ、趣味的な知識サービスにしろ、お金を払って購入したいという人が出てくるようになった。
競争のなかで理想の自分を追求
現在、競争社会がますます色濃くなり、大勢の若者が強い危機感を抱いている。「知識を渇望し不安を感じる」ことは、若い世代の特徴となっている。
中山大学社会学・人類学学院の大学院博士課程に在籍する池静旻さんは、論文のなかで、フランスの哲学者ミシェル・フーコーの「企業家的自己」の分析に基づいて、若い世代の消費行動の背後にある社会的・文化的意味を踏み込んで考察した。
それによると、労働者とは人的資本を保有する者であり、労働製品の生産者でもあり、その人的資本こそが収入をもたらす機器である。自身が身を置く制度・環境が市場を調節する役割をより強調する場合には、個人はより多くの責任を自ら背負い、さまざまな努力を通じて自身の市場競争力を高めることを迫られるという。
商務部(省)国際貿易経済協力研究院サービス貿易研究所の高宝華研究員は、「現在の社会は日進月歩で発展し、若者の生存にかかるプレッシャーが倍増し、競争と挑戦に満ちた社会環境のなかで、『企業家的自己』は絶えず自分のために充電して自身の人的資本の価値を高め、自身の競争力を維持しなければならない」と、より直接的に現実的な問題を指摘した。
実際、前述の李さんがお金を払って手に入れたいのは、仕事に関するコンテンツとは限らない。彼女が予約購読したカリキュラムや書籍のなかには、映画、歴史、文学、さらには漫画の描き方などアートの範疇に入るものも少なくない。
李さんは、「興味があるから購入したし、ちょっとした下心もあるかもしれない。なんといっても現在の社会は発展のペースが速いので、より多くのスキルを身につけたいと思う。万が一、今の仕事がうまくいかなくなったときには、別の選択をできるようにしておきたい」と話す。
購入は消費の完了であり、学びのスタート
購入は消費の完了だが、学びのスタートでもある。中国社会科学院財経戦略研究院市場流通・消費研究室の依紹華室長は、「一部の消費者は知識型コンテンツを購入した後の実際の利用率が低い。衝動的で無計画に購入したのかもしれないし、実際のニーズと購入した知識型コンテンツとが合わなかった可能性もある」と指摘する。前出の高さんは、「実体がある製品と異なり、知識型コンテンツには主観的という特徴があり、購入後に消費者がかかわらなければ消費の全プロセスが完了しない。生産サイドが提供するコンテンツの品質を推し測るには、関係当局が適切な監督管理標準を設けることが必要。そうすれば消費者も、評価や採点などの方法によるフィードバックが可能になる」との見方を示した。
若い消費者についていえば「知識のためにお金を払う」ことが、すなわち「積極的」や「博識」ということにはならず、金銭が本当の意味で知識をふるい分ける有効な「フィルター」というわけでもない。
SNSの豆瓣のユーザーである「期限の切れない砂糖」さんがグループで発信したコメントにあるように、「人は物を用いて自分を表現することができるのであって、物によって自分を決めるのではない。重要なのは自分が何を消費したかではなく、自分が何のために消費するかだ」。
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