副議長ポストの前に疑惑解明が先では? 福岡県職労元支部役員が自治労の退職者協議会で追及

筋違いの「副議長ポスト取りにいく」宣言

 福岡県や県議会の高額海外視察などの経費が不透明な公金支出に当たるとの批判や、正副議長就任時に自民党県議団幹部へ高額な金銭を支払う慣習があったとの疑惑をめぐり、追及の声が高まるなか、蔵内勇夫議長は5日、日本弁護士連合会の指針に基づく第三者委員会を設置することを決めた。同日に開かれた自民や民主など交渉会派(5人以上で代表質問権などがある)の代表者会議で合意した。

 連日の報道を受けて全国からの批判が殺到し、ようやく重い腰を上げた格好だが、多くの国民・県民が関心をもっている金銭授受問題については、自民だけでなく、周知の通り第2会派の民主県政県議団の元副議長についても問題となっている。

 こうした状況にもかかわらず、民主県政県議団は、4日の議員総会で、中尾正幸氏の辞任にともない現在不在となっている副議長ポストを「取りにいく」と宣言したという。

 本件は民主会派も内部で調査を行っている最中であり、疑惑解明がないまま副議長ポストを獲得する猟官運動を行うのは筋が違うのではないか。

 現在、民主会派の会長は、立憲民主党福岡県連の幹事長も務める原中誠志県議である。4日の議員総会で副議長ポスト獲得に意欲を見せたのも、この原中県議だ。ちなみに原中県議は元福岡県職員で、自治労福岡県本部の地方議員団の会長の立場にもある。

国会でも問題となった自治労の政治資金をめぐる問題

 福岡県職員の互助会「部課長会」が議長らの政治資金パーティー券を組織的に購入していた問題も取り沙汰されているが、この件に自治労が沈黙しているのは、労使の癒着関係があるためだとみる県政関係者やメディアは少なくない。

 自治労(全日本自治団体労働組合)には、全国の自治体職員や関連公社などの正規・非正規職員など約71万人が加入している。福岡県では1960年代から80年代にかけて、自治労の運動が活発であった。83年に社会党・共産党推薦の革新県政が誕生したが、自治労が主要な支持団体であり、95年の知事選で麻生渡知事が誕生してからも県政与党の支持団体として強い影響力をもってきた。現在の服部誠太郎知事も定期大会に来賓として出席して挨拶を述べるなど自治労とは友好関係にある。

自治労福岡県本部の定期大会で挨拶する服部知事
自治労福岡県本部の定期大会で
挨拶する服部知事

 過去の当社報道では、自治労福岡県本部関連の政治団体が、2008年に組織内議員である藤田一枝衆議院議員(民主党・当時)の後援会に700万円の寄付を行っていたにもかかわらず、政治資金収支報告書に記載していなかった問題を扱い、当時の国会でも問題となった。

 今回の福岡県議会問題では副議長ポストをめぐって民主系議員にも金銭疑惑が広がっているが、実はこの副議長ポスト獲得のために授受された資金は、労組が提供したのではないかとの疑惑が広がっている。

元県職労退職者会合が紛糾

 県議会問題の取材を進めていくなかで、7月末、ある地方議員の紹介でAという人物に話を聞くことができた。Aは元県職員で、かつては自治労加盟の福岡県職員労働組合の支部役員を務めた人物であり、現在もOBでつくる福岡県庁退職者協議会の代議員として活動している。自治労組織内では、反主流派の立場にある。

 Aによると、ことの発端は5月29日に開催された福岡県庁退職者協議会総会であった。県庁(出先機関を含む)退職者協議会は、県下に8支会(支部)があり、3,277名が加盟している。

 総会には来賓として原中県議も出席し「県会議員の海外視察への批判があるが、これは自民党県議団が反省するまたとないチャンス」との趣旨を述べて退席したという。

支会長会議での原中氏の釈明、マスコミ報道に責任転嫁

 これに対してAら南筑後支会の代議員が抗議した。Aは原中氏の態度が「あまりに他人事のようだった」と語った。思わぬ批判に対し、元自治労県本部委員長で原中県議の後援会長を務める砂川由弘会長がその場をとりなすこととなった。最終的に砂川氏は「批判があったことを受け止め、6月23日の支会長会議に原中県議を出席させて、意見交換をします」と約束を行っている。

 支会長会議とは、退職者協議会の支部長会議である。砂川氏が原中氏を出席させると言明した6月23日は、県議会の会期末であり、原中氏は午後2時過ぎに会場に到着している。同日の支会長会議は、議長をAが務めていた。

 原中氏は支会長会議で、「マスコミは昨年から県議会問題について集中的に取材を開始したが、民主県政県議団はそれ以前から『県議会改革』に取り組んできた」と改革姿勢を強調したうえで「副議長就任時、西鉄ソラリアホテルで就任祝賀会を開催した。730人が参加したが、飲食物も提供したため手元にはほとんど残らなかった」と釈明。県議会のプロジェクトチームで改革の方向性を議論していると出席者の理解を求めた。

 原中氏の説明に対し、出席していた支会長から「民主会派は20人もいるのになぜ改革を行わなかったのか」「海外視察報告書は提出したのか」などの質問が出された。

 これに対して原中氏は「改革が遅れたことは事実」と認めつつ「報告書は会派には出しているが、事務局には出していない」と釈明した。

 議長席に座るAも質問を行い「原中県議はこれまでの自民党県議団との関係性などを明らかにして是正するのか」と述べたうえで「副議長就任時、吉松源昭県議と同様の金銭授受はあったのか」「蔵内氏が代表を務めていた九州の自立を考える会に派遣されている県職員は県議のパーティー券販売に動員した事実はあるのか」と問いただした。

 Aの追及に対して原中氏は、「面白おかしくつくり上げるマスコミの報道に逐一答えるつもりはない」と述べ、「海外視察に議長交際費などを受け取ったことはない」と回答した。Aの隣には、退職者協議会の会長で原中氏の後援会長でもある砂川氏や、小原和敏元自治労県本部委員長も着席しており、Aの発言中、黙って発言を聞いていた。

 Aの取材後、原中氏と会合で一緒になった。先月末、企業経営者などが集まる研究会に原中県議が出席し、一連の県議会問題について釈明を行ったが、県議会改革に取り組む姿勢をアピールしつつ、「服部知事を今後も支えたい」として出席者の賛同を求めた。ある記者を含め、少なくない出席者が「本当に反省はあるのか」と感じたことは事実だ。「マスコミの報道に問題がある」との原中氏の発言は、記者も原中氏など民主会派の県議から耳にしたことがある。県議会は問題発覚後、議会棟での取材を制限しようとしたが、自民党だけでなく民主会派も内心は報道規制を望んでいたのではないか。福岡県議会の常識外れの高額な海外出張や県職員が県議に対して起立して挨拶することなど「長年の慣習」(原中県議)と称して問題を知りながら放置したのは服部知事であり、原中氏ら組合出身の県議である。その事実を報じるマスコミに責任転嫁するのは本末転倒だ。

労組からの資金疑惑に自治労は危機感あらわ

自治労ロゴ
自治労ロゴ

    副議長ポスト獲得のために民主系議員が渡した金銭は、実は労組が提供した資金だったのではないかという疑惑について、自治労に加盟する現職の自治体職員を取材したが「毎月組合費が給与から天引きされているが、決して安い金額ではない。もし組合費が一部でも自民党県議に渡っていたら、許せる話ではない」と語っていた。労組からの資金提供だったという疑惑への怒りの声が支持母体から出ているのは、労使の癒着に危機感を抱いている人々が多いということだ。

 自治労も構成団体の1つとなっている連合福岡も危機感を抱いており、2日に立憲民主党と国民民主党の代表との会合を開催し、県議会の正常化を求めている。

 自治労関係者によると、お盆明けに県職労出身でもある立憲県連代表の鬼木誠参議院議員と退職者協議会役員との意見交換が予定されている。

 県議会で過半数を超える自民党県議団と調整して議会運営にあたってきた原中氏の立場は理解できる。しかし、6日に行われた民主県政県議団の会派総会では、副議長擁立に異論が出ている。同会派出身の副議長経験者が自民党県議団側に多額の金銭を支払ったと匿名で証言しており、自身の支持団体である自治労内部からも疑惑追及の声が上がっていることは無視できないのではないか。

 民主県政県議団の皆さん、副議長よりもまず疑惑の解明を行うことが先決であると申し上げたい。

【近藤将勝】

関連記事