2024年11月22日( 金 )

最後は金目の菅放射能汚染水放出

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「菅義偉氏は、予算が国会で成立したいま、次の衆院総選挙からできるだけ離した時期が得策と判断して、このタイミングで放射性物質の海洋放出を決定する算段だ」と訴えた4月8日付の記事を紹介する。

菅首相が3月21日をもって緊急事態宣言解除を強行した理由は3月25日の聖火リレー開始にあった。

緊急事態宣言発令化で聖火リレーを開始できない。
この理由から緊急事態宣言解除を強行した。

しかし、この時点でコロナ感染は再び拡大に転じていた。
本ブログ、メルマガで感染再拡大深刻化の可能性を再三指摘した。
その懸念通りの現実が生じている。

感染波動は世界の感染波動と人流変化の2つの要因によって形成される。
世界の感染波動も第4波に移行している。
人流は12月末から1月末まで低水準推移したが2月中旬から明確に増加に転じた。

3月下旬以降、季節的要因で人流が拡大する時期に移行する。
3月21日に緊急事態宣言を解除すれば人流が急拡大することは明白だった。
実際に3月下旬にかけて人流は急拡大した。

人流変化から3週間遅れて新規陽性者数が変化する。
コロナ感染第4波が深刻化していることは誰の目にもはっきりしている。
4月7日の全国新規陽性者数は3,461人に達し、1月30日以来、初めて3,000人を超えた。
この危機的状況下で菅内閣は人為的に密集、密接を生み出す聖火リレーを強行している。

聖火リレーの実態は「商火リレー」だ。
五輪が商業イベントであることをアピールする商業イベントが展開されている。
大音響コンボイを編成しているコカ・コーラ、日本生命、NTT、トヨタ自動車の責任は重大。
賢明な国民はこれら企業に対する不買運動を実行すべきである。

この「商火リレー」によって各地で大規模な密集・密接が生じている。
コロナ感染拡大の原因が日本政府によって創出されている。

商業五輪に加担するマスメディアはこの暴挙を後押しする。
NHKは「商火リレー」中継に際して、五輪反対、商火リレー反対の音声を消去する。
街頭インタビューで「商火リレー」に反対する市民の声を紹介しない。

NHKはニュース報道で北朝鮮の東京五輪不参加表明の事実を最小の扱いでしか報じない。
北朝鮮はコロナリスクの観点から東京五輪不参加を表明した。
東京五輪の再弱点を突いた北朝鮮の「正論」は、トップニュースとして扱うべき重大性を有している。

NHKの「臭いものにふた」の報道姿勢は「すがさまのNHK」の実態を如実に示すもの。
4月6日、国際水泳連盟(FINA)は4月から5月にかけて日本で開催予定の3大会の中止を発表した。
NHKは水泳の日本選手権を大々的に報道するが、国際水連の重大発表を大きく報じない。

3大会とは、1.飛び込みのW杯兼五輪最終選考会(4月18日~)、2.アーティスティック水泳の五輪予選(5月1日~)、3.オープンウォーターの五輪予選(5月29日~)。

3大会とも五輪予選であり、1、2は五輪のテストイベント(本番で使用する会場を用いての競技運営最終予行演習)を兼ねている。
3大会の中止で正規の方法での五輪代表決定が不能になった。
テストイベントなしの本大会はぶっつけ本番となる。

3大会中止の理由は日本のコロナ対策不備である。
国内の水泳大会報道よりも国際水連の決定のほうがはるかに重大な意味を有する。

各方面から東京五輪中止を決断すべきとの声が沸騰しているが、商業五輪を強行しようとする利権至上主義勢力がスクラムを組んで日本の情報空間を占拠している。

このような局面で最重要になるのが国民の見識だ。
日本の主権者は国民。
国民が権力者の暴走にどのように対応するのかが問われている。

コロナ感染では変異株が感染の中核に移行している。
変異株は感染力が高く、毒性も強く、ワクチン耐性を有していると見られている。
直ちにコロナ感染対策に全力を注がなければ手遅れになる。
菅暴政、五輪組織委員会の暴走に対して日本の主権者国民が堂々とものをいうことが何よりも大事だ。

「復興五輪」と言いながら、フクシマ原発事故は放置されたまま。
福島第一原発の1号機から3号機で炉心溶融=メルトダウンが生じた。
1号機ではメルトダウンした核燃料が原子炉格納容器をも突き抜けて原子炉建屋下部に溶け落ちたと見られている。

溶融した核燃料である燃料デブリを取り出す作業は作業工程の見通しすら立たない状況にある。
溶け落ちた核燃料はいまなお、冷却し続けなければならない。
冷却水は核物質で汚染され、その放射能汚染水が福島原発敷地内に貯蔵されている。
2022年にも貯蔵タンクが満杯になり、放射能汚染水の海洋放出が検討されている。

政府は「処理水」と称しているが、トリチウムなどの放射性物質は除去できていない。
原子炉格納容器に大量の水を注入し続けているが、原子炉内の水位が低下する事態も発生している。
格納容器から大量の水が外部に漏出している。
すでに高濃度汚染水が原発敷地外に流出している疑いも強い。

菅首相は福島県の漁協連会長と会談し、近日中に汚染水(処理水)の海洋放出を決断する見通しだ。
菅首相は福島の県民が反対しており、汚染水(処理水)を海洋放出する際には風評被害対策が必要になるとの主旨の発言を示したが、漁業関係者などに金を提供して丸め込む方向が露わである。

汚染水(処理水)海洋放出に反対しているのは福島県民だけでない。
良識あるすべての日本国民が強く反対している。
国際世論も同じだ。

福島沖で基準値を上回る放射性物質に汚染された魚の水揚げも確認されている。
「風評被害」ではなく「実被害」が発生する。
放射性物質は自然の力で除去されない。
大量の放射性物質の海洋放出が認められるわけがない。

菅義偉氏は、予算が国会で成立したいま、次の衆院総選挙からできるだけ離した時期に放射性物質の海洋放出を決めることが得策と判断して、このタイミングで放射性物質の海洋放出を決定する算段だ。
NHKは原発推進勢力が定める安易な海洋放出の方式しか伝えない。
放射性物質の海洋放出に反対する科学的知見を紹介しないのは明白な放送法第4条違反行為である。

「復興五輪」を叫びながら、菅内閣は福島県民に年間線量20ミリシーベルト地域への居住を強制している。
ICRP(国際放射線防護委員会)勧告に沿って、日本では一般公衆の被曝上限を年間1ミリシーベルトと法律で定められている。

累積被ばく線量が100ミリシーベルトに達するとがん死リスクが0.5%上昇するとの科学的知見に基づく措置だ。
年間線量1ミリシーベルトなら99年生きても累積線量が100ミリシーベルトに達しないことから、年間線量被ばく上限が1ミリシーベルトに定められている。
ところが、年間線量20ミリシーベルトの土地に5年間居住すれば、累積被ばく線量が100ミリシーベルトに達してしまう。

がん死リスクが0.5%上昇するということは、人口100万人で考えると5,000人が放射線被ばくで殺されることを意味する。
日本政府はいまも「原子力緊急事態宣言」を発出したままだ。
この「原子力緊急事態宣言」を盾に福島県民を虐殺する「ジェノサイド行政」を強行している。
この行政姿勢のどこに「復興五輪」の精神があるといえるのか。

主権者である国民が真実を知り、声を挙げなければだめだ。
コロナ危機が拡大するなかで、大音響の商業自動車車列が扇動する密集・密接創出の「商火リレー」にうつつを抜かすことが美しい行動といえるのか。
金と欲望にまみれた醜悪な姿でしかない。

良識ある国民が声を挙げることが大切だ。
良識ある声を大きくして、国民の命と健康を脅かす醜悪な商業イベントを中止に誘導すべきだ。


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植草一秀の『知られざる真実』

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