『脊振の自然に魅せられて』ヤマザクラの下で喜寿祝い(前)
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背振山系のヤマザクラ
脊振山系を歩いて二十数年になるが、歩けば歩くほど未知との遭遇がある。
昨年秋に脊振山系の蛤岳の周辺で美しい紅葉の撮影をしていたとき、山の上の方から歩いてきた中年の2人連れの女性登山者にそれとなく声をかけて「脊振の自然を愛する会」であることを名乗ると、女性2人は会の活動を知っており、すぐに打ち解けて山の情報を得た。
「ヤマザクラがたくさんある場所があります」と言われ、今からそこで休憩するというので付いて行った。出会った場所から歩くこと10分、登山道から入り込んだ場所に大きなヤマザクラが10本近くあった。見事なヤマザクラの紅葉をスマホで夢中になって写す彼女らの後ろ姿にカメラを向け、自然体で撮影する姿を撮った。
「ここのヤマザクラは見事ですよ」という彼女らの言葉が筆者の脳裏に深く焼きついており、来年は必ずヤマザクラを見に来ようと決意して、車を止めた脊振山駐車場に戻るために1時間ほど歩いた。帰り道の九州自然歩道の紅葉も素敵であった。木道を進むと紅葉のなかに脊振山の白い気象レーダーが垣間見え、サクサクと落葉を踏みしめる靴の足音がする。静かな時間を楽しんだ。
仲間6人でヤマザクラを見に背振山系へ
今年のソメイヨシノが散り始め、そろそろヤマザクラが見頃かという頃にワンダーフォーゲルOBを含む脊振の自然を愛する会の主力メンバーと会員の女性にも声をかけ、仲間6人でヤマザクラを見に行くことにした。
4月1日早朝に五ケ山ダム近くの神社の駐車場に集合する。神社にある大杉の御神木は、五ケ山ダム工事で水没するのを防ぐために数億円の費用をかけてダムの対岸に移植したものである。大きな杉の御神木は鉄鋼で補強されたままであるが、何とか根付いている。
車に乗り合わせ、曲がりくねった林道を車で走行すること10分で蛤水道の入り口に着いた。脊振山直下に源をもつ蛤水道は今でも現役である。江戸時代に、福岡県の那珂川に流れる水を佐賀県の神崎方面へ稲作用の水道として使ったもので、当時は福岡藩と佐賀藩の水争いが起きたとされる。
今でも幅1mほどの美しい清流の水道が緩いカーブを描きながら佐賀方面へと流れている。この静かな水道を見ると心が洗われる。ゆったりとした水の流れに筆者の気持ちが調和し、心が落ちつく。陽の光がわずかに波立つ清流にキラキラと輝く。
この蛤水道を10分ほど歩くと、坂本峠方面から続く蛤岳への登山口に着いた。登山口には、佐賀県が設置したばかりの九州自然歩道の真新しい蛤水道の案内板があった。
咲きはじめたエイザンスミレやタチツボスミレ、芽を出したコバギボウシ(8月開花)などを目にして、春の訪れを楽しみながら登山道を登る。
20分ほどで明るい蛤岳山頂に着いた。通常は蛤岳の名前の由来となる2つに割れた岩の上から佐賀方面の展望が楽しめるが、当日は春霞で展望は楽しめなかった。
「山頂で集合写真を撮ろう」と写真好きのMが言い、せっかくだからとコロナ対策のマスクを外してカメラに収まる。登山道にカメラを直に置きセルフタイマーで撮影した。
(つづく)
2021年4月12日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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