豊洲市場裁判、東京高裁が原告・仲卸業者の控訴を棄却(後)
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豊洲市場水産仲卸売場棟は、国内最大手の設計事務所・日建設計が設計した鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の建築物。1階の鉄骨柱脚(鉄骨柱の下部・足元)が地中梁や基礎部分に埋め込まれていない「非埋め込み形柱脚(ピン柱脚)」となっている。
この柱脚形式の場合、柱頭(柱の上部)よりも1階柱脚の耐力が極端に低くなるので、柱脚の鉄量(鉄筋とアンカーボルトの断面積の合計)を柱頭の鉄量(鉄骨と鉄筋の断面積の合計)と同等以上にすべきと定められている。しかし、水産仲卸売場棟の柱脚の鉄量は規定よりも44%も不足していることが判明している。
非埋め込み形柱脚の場合の構造計算についても違法な係数が用いられ、本来の耐震強度よりも高いように偽装されている。日建設計は稚拙な設計偽装を行っていた。設計偽装問題を取り上げた東京都の市場問題プロジェクトチームの会議に、日建設計は柱脚製品メーカーのカタログを偽造した資料を提出するなどなり振り構わない抵抗を示した。プロジェクトチームの座長も日建設計の設計偽装を指摘する建築士の発言を封じるなど、日建設計を全力で擁護する会議運営が行われたことは、これまでにNet IB Newsで報じた通りである。
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豊洲市場水産仲卸売場棟と同様の柱脚形式で裁判となっていた福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花幡西」では、柱脚の鉄量不足、耐震強度不足、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚不足などについて、被告の鹿島建設が和解金を支払うことで和解が成立しており、SRC造の柱脚の鉄量不足と耐震強度不足が認められている。
豊洲市場裁判で東京地裁や東京高裁が実質的な審理に踏み込まないのは、久留米市のマンションの事例が影響を与えているからではないだろうか。
豊洲市場水産仲卸売場棟の設計偽装および耐震強度不足について、東京地裁に続き、東京高裁までが原告の仲卸業者の訴えを棄却した背景には、司法による行政への忖度があったのではないかという疑問も湧いてくる。
この裁判は、豊洲市場水産仲卸売場棟の構造計算が建築基準法に違反しているかどうかが争点となる技術裁判のはずであるが、東京地裁、東京高裁とも実質的な審理に入らなかった。1審では、実質1回目の審理の場で裁判長が結審を宣言し、原告から「裁判官忌避」を申し立てられ、混乱をきたした。
豊洲市場は問題を抱えながらも開場し、既成事実の積み重ねが進んでいる。築地市場跡は東京五輪の駐車場として使用した後、再開発の予定となっており、豊洲市場を使用禁止としても築地に市場を戻すことはできない。そんな東京都の思惑を忖度したとしか考えられないのが、東京地裁、東京高裁の判決である。
我が国に三権分立が存在しているのであれば、被告が行政である訴訟であっても、原告・被告両者が主張できる機会を設け、公平で中立な審理が行われるはずだ。裁判で行政が敗訴すれば社会的な混乱が生じるかもしれないが、それは司法が忖度することではない。司法は法律に照らして判断を下すことが使命である。
過去の行政裁判のほとんどが行政の誤りを認めない判決となっている。「行政裁判はやっても無駄」という言葉も耳にするが、司法は行政や立法府から独立した権限をもっているのだから、忖度を排した審理を行ってほしい。豊洲市場裁判で原告は上告する姿勢を見せており、最高裁の判断が注目される。
(了)
【桑野 健介】
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