【BIS論壇No.344】衰退する日本の現状
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NetIB‐Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は2021年4月30日の記事を紹介。
外務省国際情報局長、駐ウズべキスタン大使、駐イラン大使を歴任され、『戦後史の正体』など多くのベストセラー本を執筆されている孫崎亨氏(BIS顧問)の『バイデン政権の誕生と東アジア情勢』と題する講演会が4月15日にあり、参加した。
その中で日本の衰退の実情についても諸資料をもとに説明があった。これらの資料も参考にしつつ、野口悠紀雄氏の近著『リープフロッグ』文芸新書(20年12月)、近藤大介氏の『ファクトで読む米中新冷戦とアフターコロナ』講談社現代新書(21年1月)も参照にしつつ以下論じたい。
孫崎 亨氏の資料によれば、CIAのWorld FACTBOOKの世界購買力平価ベースでは、
(1)中国 25.3兆ドル、(2)米国、19.3兆ドル、(3)インド 9.4兆ドル、(4)日本 5.4(以下兆ドル)(5)ドイツ4.1、(6)ロシア 4.0、(7)インドネシア 3.2 (8)ブラジル 3.2(9)英国2.9、(10)仏 2.8 、以下メキシコ,イタリア、トルコ、韓国 2.0となり、中国が米国を抜いており、インドも日本に2倍近い差をつけている。2028年には実質GDPでも日本はインドに抜かれるとみられている。
中国の技術力も躍進しており、5Gのパテントでは3325と世界最大である。2020年、自然科学の論文数でも中国が米国を抜き、初めて世界1位となった。論文数での首位は5年連続で中国科学院だ。日本は11位までに入っていない。日本の輸出の順位は1位が中国、あと米国、ASEAN,西欧、台湾、韓国がベスト7だ。
野口悠紀雄氏の上記書によると、スイスの国際開発研究所(IMD)の国際ランキングでは日本は1989年から92年までは3年間、世界第1位だったが、2020年には34位に低下。デジタル技術では63の国、地域中、下から2番目の62位という情けない状況だ。日本のデジタル化の遅れは目を覆わんばかりだ。新型コロナウイルス対処ではデジタル化の遅れが痛感された。新型コロナ感染者数把握作業ではFaxで情報を送り、手計算で集計する非近代的な対応ぶりが問題となった。他方、中国は最新技術を駆使し、コロナ感染を阻止。台湾もデジタル担当大臣の指導でマスクの配布など見事に処理し、感染阻止に成功。コロナの非常事態に直面し、初めて日本がこれらの国とは比較できないほどIT化が遅れていることが分かった。(野口上掲書258~259iページ)
近藤大介氏の上掲書によるとアジア諸国から日本は「年老いた金メダリスト」と呼ばれている由。20世紀のアジアは「日本の世紀」だった。しかし21世紀前半は中国が主導権を握り、後半はインドの世紀になるとみられている。
2020年上半期ASEANは中国の最大の貿易相手に踊り出た。一方ASEANにとって中国は2009年以降、10年以上も連続して最大の貿易相手国に成長している。日本としても日本衰退を止めるためには中国、ASEANを中心にアジア諸国との関係強化が必要だ。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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