2024年11月23日( 土 )

『脊振の自然に魅せられて』ハイノキと3年ぶりの感動の再び(前)

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3年に一度、花を咲かせるハイノキ

 ツクシシャクナゲやブナの花は6年に一度、ハイノキは3年に一度のように、毎年咲かない山の花もある。多少の花は毎年咲かせるが、感動を覚えるほど咲くのは数年に一度なのだ。

 ハイノキは水辺を好む灌木で、1㎝に満たない小さな白い花を枝全体に咲かせる。真白な花は雪を被ったようで、遠くから見てもハイノキが咲いているとわかる。

 満開のハイノキと遭遇したのは3年前の金山の山開きの日、4月29日であった。その日は大雨で山開きを中止したため、早良区役所のホームページで事前に中止告知をしたものの、雨のなかで登山者が来る可能性があると考えて、現地で中止の告知をするために、登山口4カ所を当日早朝に訪れた時であった。

 花乱の滝登山口に行くと、頭上に真っ白な花の付いた枝が垂れ下がっていた。「何の花だろう」と思い、確認するとハイノキであった。普段からよく訪れる登山口であったが、樹木の存在すら知らないまま登山口を通過していた。木肌を見るだけでは、樹木の名前を判別しづらいのだ。

 ハイノキとの感動の出会いから3年が経った今年は、ハイノキの蕾が早春から脊振の山で見られた。少しずつ膨らむつぼみを見て、「今年はたくさんの花をつけたハイノキが見られる。開花は4月下旬だろう」と予測し、はやる気持ちでハイノキに会いに行った。

 花乱の滝登山口で、枝が下がるほどに咲くハイノキの花は、真っ白であった。車谷ルートの途中にあるハイノキは、渓谷に下がる枝全体に雪の花を咲かせているようであった。さらに、渓谷沿いのルートを矢筈峠へ進むと、渓谷の対岸に真っ白なハイノキの花が輝いていた。

渓谷の上に咲く満開のハイノキ(ハイノキ科)
渓谷の上に咲く満開のハイノキ(ハイノキ科)
ハイノキの名前は炭焼の灰を染色で媒染剤に使ったことに由来する。

 流れる水の音も、白い花を咲かせた灌木にメロディを添えていた。さらに山の奥に進むと、背の高い灌木で白い花を咲かせるミツバウツギとの「共演」もあった。この時期、水辺を好む樹木が渓谷沿いに花を咲かせると、山全体が白い花で賑やかになる。

 そんな山で1人歩きをすると生命感を感じ、自然豊かな脊振山系の恵みに感謝の気持ちが湧いてくる。筆者がしばらく立ち止まっていると、すばらしいハイノキに気が付かないのか、登山者が1人、静かに通りすぎて行った。「このすばらしいハイノキを見てごらん」と声をかけたかったが、黙って見送った。ハイノキの撮影を行い、そうそうと引き上げた。

ハイノキと感動の対面

 今年、ハイノキを見に出かけた5月5日の早朝は雨であったが、天気予報では午前中で雨も止むと言っていたため、雨が止むのを待って午前9時ごろに自宅を出た。登山をするには遅い出発時刻であったが、筆者には、撮影のもくろみがあり、雨上がりの山は霧に覆われ、幻想的なブナ林の光景が見られることを期待した山行きであった。

 登山口に着いたら、上下の雨具を着て、ザックにもレインカバーをつけた。カメラ用の一脚も持参したが、時にはこの一脚をスライドさせて杖代わりに利用する。

 はやる気持ちを抑えて歩き、三瀬峠に続く分岐まで1時間ほどで着いた。12年前に道標を立てた水場に行くと、なんとガス(霧)のベールに覆われた満開のハイノキが佇んでいた。カメラを取り出して撮影する。

道標の側で咲くハイノキ
道標の側で咲くハイノキ

 ハイノキは2本咲いており、その隣にハイノキの花より小さくて白い花を、凛としてイヤリングのように下げた花があった。オトコヨウゾメである。ワンダーフォーゲルの先輩Tがよく話をしていたオトコヨウゾメに、ようやく会えた。雨が降った後のため、葉も花も雨露を付けたハイノキとオトコヨウゾメの共演に、震えるほどの感動を覚えた。

霧のなかに佇む満開のハイノキ 幻想的な光景に感動を覚える
霧のなかに佇む満開のハイノキ 幻想的な光景に感動を覚える

(つづく)

2021年5月11日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(後)

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