『脊振の自然に魅せられて』ハイノキと3年ぶりの感動の再び(前)
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3年に一度、花を咲かせるハイノキ
ツクシシャクナゲやブナの花は6年に一度、ハイノキは3年に一度のように、毎年咲かない山の花もある。多少の花は毎年咲かせるが、感動を覚えるほど咲くのは数年に一度なのだ。
ハイノキは水辺を好む灌木で、1㎝に満たない小さな白い花を枝全体に咲かせる。真白な花は雪を被ったようで、遠くから見てもハイノキが咲いているとわかる。
満開のハイノキと遭遇したのは3年前の金山の山開きの日、4月29日であった。その日は大雨で山開きを中止したため、早良区役所のホームページで事前に中止告知をしたものの、雨のなかで登山者が来る可能性があると考えて、現地で中止の告知をするために、登山口4カ所を当日早朝に訪れた時であった。
花乱の滝登山口に行くと、頭上に真っ白な花の付いた枝が垂れ下がっていた。「何の花だろう」と思い、確認するとハイノキであった。普段からよく訪れる登山口であったが、樹木の存在すら知らないまま登山口を通過していた。木肌を見るだけでは、樹木の名前を判別しづらいのだ。
ハイノキとの感動の出会いから3年が経った今年は、ハイノキの蕾が早春から脊振の山で見られた。少しずつ膨らむつぼみを見て、「今年はたくさんの花をつけたハイノキが見られる。開花は4月下旬だろう」と予測し、はやる気持ちでハイノキに会いに行った。
花乱の滝登山口で、枝が下がるほどに咲くハイノキの花は、真っ白であった。車谷ルートの途中にあるハイノキは、渓谷に下がる枝全体に雪の花を咲かせているようであった。さらに、渓谷沿いのルートを矢筈峠へ進むと、渓谷の対岸に真っ白なハイノキの花が輝いていた。
流れる水の音も、白い花を咲かせた灌木にメロディを添えていた。さらに山の奥に進むと、背の高い灌木で白い花を咲かせるミツバウツギとの「共演」もあった。この時期、水辺を好む樹木が渓谷沿いに花を咲かせると、山全体が白い花で賑やかになる。
そんな山で1人歩きをすると生命感を感じ、自然豊かな脊振山系の恵みに感謝の気持ちが湧いてくる。筆者がしばらく立ち止まっていると、すばらしいハイノキに気が付かないのか、登山者が1人、静かに通りすぎて行った。「このすばらしいハイノキを見てごらん」と声をかけたかったが、黙って見送った。ハイノキの撮影を行い、そうそうと引き上げた。
ハイノキと感動の対面
今年、ハイノキを見に出かけた5月5日の早朝は雨であったが、天気予報では午前中で雨も止むと言っていたため、雨が止むのを待って午前9時ごろに自宅を出た。登山をするには遅い出発時刻であったが、筆者には、撮影のもくろみがあり、雨上がりの山は霧に覆われ、幻想的なブナ林の光景が見られることを期待した山行きであった。
登山口に着いたら、上下の雨具を着て、ザックにもレインカバーをつけた。カメラ用の一脚も持参したが、時にはこの一脚をスライドさせて杖代わりに利用する。
はやる気持ちを抑えて歩き、三瀬峠に続く分岐まで1時間ほどで着いた。12年前に道標を立てた水場に行くと、なんとガス(霧)のベールに覆われた満開のハイノキが佇んでいた。カメラを取り出して撮影する。
ハイノキは2本咲いており、その隣にハイノキの花より小さくて白い花を、凛としてイヤリングのように下げた花があった。オトコヨウゾメである。ワンダーフォーゲルの先輩Tがよく話をしていたオトコヨウゾメに、ようやく会えた。雨が降った後のため、葉も花も雨露を付けたハイノキとオトコヨウゾメの共演に、震えるほどの感動を覚えた。
(つづく)
2021年5月11日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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