企業と反社の付き合い 経営者に覚悟はあるか?
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反社会的勢力(以下、反社)との付き合いは、企業にとって命取りとなる。たとえ交友がなくても、一度噂になれば世間は許してくれない。これまでに幾人もの経営者が油断し、大きな代償を支払ってきた。
「企業の命取り」となる教訓
(株)九設の自己破産を耳にして「もったいない」と、同社の経営者たちよりもむしろ筆者の方が悔しい思いを噛みしめている。地元の大分市から九州経済の中心地・福岡県へ乗り込み、その売上が地元での業績を凌ぐようになった矢先だった。急転直下、まさに一夜にして自己破産の道を転がり落ちてしまった九設の倒産劇。反社との迂闊(うかつ)な交際は「企業の命取り」になる、という教訓がまた1つ生まれた。
筆者の情報マンとしてのキャリアを通して印象に残った3つの事例を紹介する。これらの事例が問いかけるのは、企業経営者に対する「覚悟があるのか」という命題だ。
結果オーライ?~今なら倒産は避けられない
A氏が生まれ育った福岡市の某地区は、歴史的に多くの在日朝鮮人や被差別部落民などが住まう地域だった。A氏は幼なじみたちとともに幼稚園、小学、中学と進んでいくが、高校進学を機に「それぞれの道」を選ぶようになり、疎遠になる幼なじみも増えた。進学で地元を離れる者もいるなか、地元に残った者のなかには反社組織に身を投じる者も出てきた。ヤクザになったのだ。やがて年齢を重ねるにつれて、幼なじみのなかにはヤクザの世界で上り詰める者も出てきた。
A氏が事業を起こしたのが24歳の時。手堅い経営で研鑽した結果、業界でも一目置かれる存在となった。律儀な男であったから、極道渡世に身を投じた者も含む幼なじみたちと年に1回程度、同窓会名目の会食を続けていた。しかし、暴対法や暴排条例の施行は、それまである程度の「遊び」を残していた企業のコンプライアンスを見直すきっかけとなり、企業経営者の間にも反社との付き合いは避けた方がよいという考えが浸透するようになる。もう15年ほど前になるが、A氏も「いかに幼なじみといえども、彼らとの付き合いは慎重にすべきだろう」と、企業経営者の仲間たちと話すようになっていた。ちょうどそのころ、A氏は警察に呼び出しを食らうことになる。
警察署では「お前がヤクザと遊んでいることはすでに調べがついている。金銭的な便宜を図っていないか」と厳しく詰問された。A氏は「5歳からの幼なじみだから年に1度は飯を食うことはあった。しかし、何も頼むことはないし、金銭的な支援をすることもない」と完全否定したものの、付き合いが表沙汰になった結果、責任を取って社長を辞任した。
会社は長男に託し、幸い世代交替はスムーズに行えた。歴史に「if」はないが、もし、現在の社会情勢でA氏が同じような局面に遭遇したならば、間違いなく会社は倒産していたと考えられる。A氏が悔しそうな顔で語っていたことが忘れられない。
「生まれた場所も同じ、同じ時代を生きて、同じ空気を吸って、一緒に育ってきた。そんな連中と個人的な付き合いもできないとは、おかしな時代になったものだ」。
12年間にわたり~銀行融資がストップ
B氏は豪快な男である。面倒見もよい。そんな人柄も功を奏したのか、売上高は一時80億円に達した。しかし、そんな彼にも災いが襲いかかった。突然、警察から呼び出しを受けたのだ。
「〇〇組に上納金を納めただろう。あの現場の工事代金のうち何%を支払ったのか」と怒声を交えた矢継ぎ早の査問を受けた。B氏にはまったく身に覚えがないため、「そんな事実はありません」と否定するしかない。しかし、警察は耳を貸さず、「そんなはずはない」と取り調べが続いた。身柄を拘束される日数も増えたため、取引先にも金融機関にも役所にも「Bが警察の取り調べを受けている」という噂が広がっていった。B氏はやるせない思いを噛みしめながら、会社倒産の手続きを決断した。
ここからが試練の始まりである。1年半して別会社を立ち上げると、B氏を慕って元の会社の社員たちも戻ってきてくれた。従来通りに地道な歩みを重ね、手堅い経営に徹してきたが、警察の取り調べから12年を経てもなお、その後遺症に苦しんでいる。当時のメインバンクが普通預金口座こそ開いてくれたものの、いまだに当座預金を開いてくれないのだ。
「メインバンクに迷惑をかけたのならわかるが、何も不利益を与えていないのに取引を再開しないとは理不尽だ。ヤクザとの交友など一切なかったのに」とはB氏の弁。たとえ殺人罪で服役したとしても、初犯であれば12~13年で仮出所できるケースもある。B氏は警察で取り調べを受けただけで、処分さえ行われていないのにもかかわらず、12年間にわたって、まるで檻の中にいるような処遇を受けているのだ。
クビをかけて進言~問われる胆力
C氏は竹を割ったような真っすぐな性格の男。信義を貫くタイプの男である。筑豊地区に太陽工発電を計画していた。かなりの大型の発電所プロジェクトだった。C氏は経験上、「これは住民対策に骨が折れるな」と直感したという。
ある日、プロジェクトのオーナーに呼び出された。部屋に入ると、見るからにその筋の男が座っている。C氏はこの段階でおおよそのことを悟り、その男に軽く会釈した。しばらくするとオーナーが切り出した。「紹介しておこう。こちらは△△組長さん。この方に住民対策を頼むことにした」と、C氏の予想通りの展開になった。
オーナーの発言にC氏は激怒した。「オーナーは会社を潰すおつもりですか。何度も警告したではありませんか。我が社のメインバンクから『反社会勢力との付き合いが発覚すれば取引をストップします』と言われていることも伝えてきましたよね。私の忠言を無視されるのであれば、今すぐこの場で会社を辞めさせてもらいます」。C氏の凄まじい剣幕を目の当たりにした組長は、そそくさと姿を消したそうだ。
どうです?あなたの会社にC氏のような肚の座った幹部はいますか?
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