2024年12月31日( 火 )

【倒産を追う】水素水生成器販売のエコモ・インターナショナル 国内市場低迷で海外に活路もコロナがトドメ

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エコモ・インターナショナル(株)

 水素水生成器の卸業者エコモ・インターナショナル(株)は4月9日、福岡地裁飯塚支部から破産手続開始決定を受けた。負債総額は約10億4,000万円。水素水関連商品の市場が低迷していたなか、取引先から訴訟を起こされ、そこにコロナ禍が追い打ちをかけるかたちとなった。

取引先とトラブル、双方提訴の「泥仕合」

 エコモ・インターナショナル(株)は「水の未知の可能性を探求することを通じて、人類の健康と地球の環境保全に積極的に貢献する」を理念に掲げ水素水事業を展開。水素水生成器を製造するA社と独占販売契約を締結し、健康機器販売業者やスポーツジムなどに水素水生成器を卸すほか、水素水入りペットボトルをドラッグストアなどで販売し、2015年3月期には約11億5,000万円の売上高を計上していた。

 しかし、その後、同社とA社の間でトラブルが発生する。トラブルは、A社が同社に無断で競合製品をほかの代理店に提供していたというもの。さらに、「ほかの代理店に提供している商品は当社に供給している製品より効果・効能に優れているうえに性能が良く、そのため売上が減少した」と主張し、A社を提訴。売上減の損害賠償として2億8,003万2,240円と遅延損害金5,019万8,561万円の支払いを求めた。

 この訴えに対し、A社は「同社の独占販売権の期間はすでに消滅している。また、同社が通信販売の権利をB社に譲渡する際、A社に対し、虚偽の説明をするという重大な契約違反行為があった」と反論。17年9月にはA社が同社に対し、16年8月から17年2月までの7カ月間、同社がA社に支払うべきロイヤリティー1,750万円(250万円×7カ月=1,750万円)と遅延損害金5,656万4,055円の支払いを求めて提訴するなど、泥仕合の様相を呈するようになった。福岡地裁は同社の請求を棄却。A社が求めたロイヤリティーと遅延損害金の支払いを同社に命じる判決を下した。この間、同社はA社の水素水生成器に関する特許無効審判も特許庁に請求していた。

エコモ・インターナショナルが販売していた「アキュエラ水素」
同社が販売していた「アキュエラ水素」

効果・効能に疑問、業界全体に大ダメージ

 「水素水生成器を購入したが、水素水ができているのか疑わしい」などといった同業他社の水素水関連商品に関する相談が(独)国民生活センターに2,260件(11年4月~16年9月末)寄せられていたことから、同センターは16年12月、容器入り水素水(10銘柄)と水素水生成器(9銘柄)を対象にした商品テストの結果を公表した。開封時の溶存水素(水素ガス)濃度が表示値を下回る商品や、溶存水素が検出されない商品が販売されていたことがわかった。また販売業者を対象としたアンケートで、水素水の摂取によって期待できる効果を聞いたところ、「水分補給」が最も多かった一方、販売元などのホームページや直販サイト、商品のパッケージには、医薬品医療機器等法や健康増進法、景品表示法に抵触するような表示があったことも発表している。

 これに続いて消費者庁は17年3月、水素水や水素サプリメントのウェブ広告で、根拠がないにもかかわらず疾病予防効果や痩身効果をうたっていたとして、東京・大阪の3業者に景品表示法に基づく措置命令を出した。また、同月に同庁が、佐賀市の企業が輸入販売する水素水サーバーによる火災発生を受けて注意喚起を行うなど、品質や機能性、安全性に関する問題が噴出。マスコミが大きく報道したこともあって、一気に水素関連商材に対する世間の目が厳しくなり、水素水業界は大きなダメージを被った。

 国内市場が低迷するなか、同社は海外市場に活路を見出していたものの、20年に入ってからの新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外の富裕層向け商品の輸出が困難となり、20年3月期の売上高は約6,000万円にまで減少。コロナ禍にトドメを刺されるかたちとなり、同社は事業継続を断念した。

 ブームに乗じるかたちで同社が水素水事業を行ったきっかけは、ある人物からの助言によるもの。しかし、資金力が乏しく、いたるところから資金を調達し、やりくりするようなビジネスは成功しないということを示す一例だと今回の倒産はいえるのかもしれない。

【新貝 竜也】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:福岡 和久
所在地:福岡県飯塚市太郎丸287-1
設 立:2000年7月
資本金:1億円
売上高:(20/3)約6,000万円

法人名

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