2024年12月23日( 月 )

最先端の極端紫外線(EUV)露光装置はオランダのASMLの独壇場(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 スマホや家電などの製品がますます小型化、高機能化されるなか、これらの性能の実現に欠かせないのが、半導体である。半導体を委託生産するファウンドリー事業において、二強である台湾のTSMC、韓国のサムスン電子、さらにインテルなど半導体の生産を担う企業は将来の半導体の需要増加を見込んで巨額の投資を実行しており、半導体装置企業に活況がもたらされている。今回は、半導体装置企業のオランダのASMLを取り上げてみよう。

EUV露光装置はオランダ・ASMLの独壇場

 EUV(極端紫外線)露光装置は既存のアルゴン・フッ素(ArF)エキシマレーザーより波長が短いため、微細なパターンを描くときに有利である。絵を描く際に使うのが色鉛筆か、クレヨンかというほどの大きな差がある。

 最近、半導体製造では、7nm(ナノメートル)の工程などが主軸となっているため、EUV露光装置は半導体業界において欠かせない。その結果、半導体受託生産事業で世界の1位、 2位を争う台湾のTSMCと韓国のサムスン電子は、EUV露光装置をめぐり奪い合いとなっている。

 EUV露光装置で一躍、世界1位に躍り出ているASMLは、1984年にオランダのフィリップス(Philips)の1部門とASMインターナショナル(ASMI)が共同出資する合弁会社として設立された。露光装置といえば、2000年以前は日本のメーカーであるニコンとキヤノンが大きなシェアを占めていたが、ASMLがシェアを徐々に拡大し、10年ごろにはASMLの世界シェアは約8割、ニコンは約2割となり、立場が大きく逆転した。

 EUV露光装置市場は現在、ASMLの独壇場となっている。ところが、最先端のEUV露光装置は1台200億円以上とされており、年間の供給台数も限られているため、半導体不足現象の1つの原因となっている。昨年、ASMLが出荷した台数は31台にすぎないとされる。

サムスンは不利な状況に

半導体 イメージ 半導体業界で微細化競争が繰り広げられる理由は、半導体の回路の線幅は微細であればあるほど、チップのサイズが小さくなり、性能と電力効率が上がることだ。

 現在、全世界で10nm以下の微細化を実現できるのは台湾・TSMCと韓国・サムスン電子の2社のみだ。ファウンドリー分野で世界3位の米グローバルファウンドリーズも7nmの工程開発に見切りをつけている。加えて、半導体の世界王者であったインテルも今のところ、7nmの量産化に成功していない。

 激しい「微細化競争」が続くなか、微細化を実現するうえで欠かせないEUV露光装置は台湾のTSMCが50台、サムスン電子は25台を保有していることが明らかとなった。

 台湾のTSMCは、世界のEUV露光装置のうち70%の供給を受けていることがニュースとなり、サムスン電子の先行きに懸念が表明されている。サムスン電子は昨年20台の発注を行い、その半分である10台がもうすぐ納品される見込みだという。サムスン電子は25台のEUV露光装置をすでにもっているため、合計で35台の露光装置を確保できる。

 一方、業界1位のTSMCは50台の露光装置をすでに保有しているが、今年30台が追加される予定のため、合計で80台をもつ見込みだ。そのため、TSMCに最先端製品の製造依頼が殺到し、サムスン電子とのシェアの差も広がっている。これら2社の所有台数の差は今後、さらに開くのではないかと懸念されており、サムスン電子は露光装置の確保数が少ないという不利な立場を挽回するため、新しい技術開発などにも力を入れている。

 ファウンドリー市場は、拡大を続ける半導体市場のなかでも有望な市場として急浮上している。台湾と韓国だけでなく、設計で世界最高の技術をもつ米国も半導体製造能力の確保を急いでおり、半導体の世界最大市場である中国も半導体の競争力を高めるため、製造技術の確保に必死である。加えて、装置や材料に強みをもつ日本も、このチャンスを逃すまいと市場に注目している。ファウンドリー市場は今後どのような展開になっていくのか、世界の注目が集まっている。

(了)

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