飲食店の生ごみからバイオガス発電~バイオガスの都市ガス供給も(前)
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生ごみの年間排出量は1人あたり73kg。その一部は堆肥や家畜のエサとしてリサイクルされるが、大部分は焼却されている。なかでも飲食店やコンビニ店舗で出る生ごみは、プラスチックの袋、割りばし、紙ナプキンなどの異物を含み、機械で選別しても家畜のエサなどに使いにくいことが課題となってきた。これらの事業系生ごみをエネルギーとして有効利用できるのが、バイオガス発電だ。
生ごみのバイオガスで発電
生ごみからつくったバイオガスで発電を行うバイオエナジー(株)が営業運転を開始したのは2005年。再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が開始される12年よりもはるか前のことだ。バイオエナジー取締役工場長・盛下学氏は「当時は生ごみからエネルギーをつくるという意識がなかったため、最初は生ごみを集めるのも大変だったそうです。当時の(株)市川環境エンジアリング代表取締役社長・石井邦夫氏((公社)全国産業廃棄物連合会会長)が開始した事業で、電力買取価格は1kWあたり約7円と今の約5分の1。そのため、発電した電力の販売とともに『バイオガス都市ガス導管注入実証事業』として、11年から20年までバイオガスを都市ガスとしても供給してきました」と振り返る。
バイオエナジーは、廃棄物処理業の(株)市川環境ホールディングス、(株)要興業、(株)都市環境エンジニアリングの出資により設立された。飲食店やコンビニ、ホテル、食品・飲料工場などから排出される事業系、産業系の生ごみ(食品廃棄物)を微生物(メタン菌)で発酵させてバイオガスをつくり、電気を発電するとともに都市ガスをつくる仕組みを日本で初めて確立させた。生ごみの再利用については、需要が安定しにくく利用先の確保が課題となる家畜のエサや農業用肥料などと比べて、都市部で安定した需要がある電気とガスを生み出すことに着目したのだ。
事業系生ごみから生まれるバイオガスは通常1トンあたり150Nm3と、家庭系生ごみの110Nm3や飲料工場から出る茶粕の80Nm3よりも多い(水分含む原料)。このバイオガスには、エネルギーとして利用できるメタンガスが約60%含まれる(残りは二酸化炭素が約40%)。
都市型バイオガス発電所
バイオエナジーの売上は約13億円(20年)。内訳は、廃棄物処理費用が約9億円(1kgあたり35円)、FIT売電費用が約4億円(FIT買取価格39円/kW)。一方、設備の修繕や更新、薬品の購入などに年間4億円と、運転コストがかさむことが課題となっており、「汚泥の脱水のために使う高効率のポリマーを自社で開発したり、原料や廃水、消化液などの分析、機械の整備・交換を内製化したりするなどコスト削減に努めています」(盛下氏)。
生ごみを利用するバイオガス発電所は廃棄物処理施設のため、工業専用地域に限られており、都市部で建てられる場所は少ない。バイオエナジーのバイオガス発電所は東京都大田区の臨海部工場地帯にあり、地下2階・地上5階建という「縦長」の設備だ。
都市型バイオガス発電所では安全対策や臭気対策などが必要なため、再エネのなかでは設備投資額が大きくなりがちだ。同発電所の建設費用は約30億円、改修工事を含めると累計40億円以上とみられる。また、バイオガス発電では運転コストを考えると、排水を流す下水道が完備されていて汚泥処理費が低コストである立地が必要という。
(つづく)
【石井 ゆかり】
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