2024年11月22日( 金 )

緊急事態宣言で五輪に休業要請せよ

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「緊急事態宣言発出に際しては、五輪に対して休業要請を行うべきだ」と訴えた5月27日付の記事を紹介する。

国家主権の根幹は何か。
国家主権の根幹は領土主権ではないのか。

「国家防衛」や「領土保全」「安全保障」と叫んでいる者が日本領土で開催される五輪についての国家主権を否定している。
東京五輪を開催する決定権を有する者は最終的に日本政府である。
当たり前のことだ。

しかし、菅署相は4月23日の会見でこう述べた。
「東京オリンピックですけれども、これの開催はIOCが権限をもっております。
IOCが東京大会を開催することを、すでに世界のそれぞれのIOCのなかで決めています」

この発言は日本の国家主権を放棄するもの。
このような者を日本国首相として認めることはできない。

その一方で菅首相は5月10日の衆参両院予算委員会集中審議でこう述べた。
「オリンピック・ファーストでやってきたことはない。
国民の命を最優先に守る」

論理的に矛盾している。
このような論理すら理解できないのだろうか。

五輪ファーストでなく、国民の命を最優先に守るなら、東京五輪の開催可否を菅首相が判断する必要がある。
自分に決定権がないなら、国民の命を最優先に守ることは不可能だ。

国民の命に危険が生じるなら、日本政府が最終判断して東京五輪中止をIOCに通告する。
その後に交渉が行われることになるが、最終権限を有するのは日本政府。
当たり前のこと。
これが国家主権というもの。

日本政府が開催中止を決定してもなおかつIOCが開催を主張したらどうなるのか。
日本政府はIOCの主張を受け入れるのか。

それは主権の放棄。
IOCが開催を主張するなら日本とIOCは戦闘状態に移行する。
日本政府はIOCに対して宣戦布告すべき。

もちろん、日本は、
「国際紛争を解決する手段としては、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使を、永久にこれを放棄する」
ことを憲法で定めているから、国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使はできないが、IOCと戦う必要がある。

日本領土で開催される東京五輪の開催決定権を日本政府がもたないとの妄言を許してはならない。
「IOC関係者が東京五輪の開催はIOCが決定している」ことが最終決定であるかのような妄言を許してはならない。
IOCに日本のことを決定する最終権限はない。

野村総研の木内登英氏が東京五輪中止の経済損失効果試算を公表した。
https://bit.ly/3vDyIDr

その金額は1.8兆円。
メディアの一部は、この数字だけを報じて東京五輪開催を中止すると巨額の損失が発生するとの間違った主張を流布している。

木内氏の試算結果が示唆するポイントは違う。
レポートにも明記されている。
試算は、緊急事態宣言発出にともなう経済的損失を明示する。

昨年4月の1度目の緊急事態宣言発出の経済的損失が6.4兆円。
本年1月の2度目の緊急事態宣言発出の経済的損失が6.3兆円。
4月以降の3度目の緊急事態宣言発出の経済的損失が実施分で1.9兆円、延長されれば追加的に3兆円の損失が発生することが示されている。

これらの分析から、木内氏は五輪を中止する損失よりも、緊急事態宣言発出による損失のほうが大きいことを強調する。

木内氏は、
「試算は、大会の開催・中止の判断、観客制限の判断については、その経済的な損失という観点ではなく、感染リスクへの影響という観点に基づいて慎重に決定されるべきであることを示唆している」
と結論している。

東京五輪開催強行はコロナ感染拡大をもたらす可能性が極めて高い。
そのことによる経済的損失が計り知れない。
従って、東京五輪を中止すべきである。
これが試算の示唆する結論だ。

国民の命を守るためにも、経済的損失拡大を防ぐためにも、東京五輪の中止決定が必要である。

このような情勢下で菅首相が東京五輪開催強行に突き進む場合、日本国民はどのように対応すべきか。
現下の世論調査では8割から9割の国民が東京五輪の今夏開催に反対である。
東京五輪開催反対は、もはや日本の主権者国民の圧倒的多数の判断になっている。

日本が民主主義国家であるなら、政府は主権者圧倒的多数の声を尊重すべきだ。
それが民主主義国家政府の適正な行動。
圧倒的多数の主権者の声を無視する政府は、もはや主権者を代表する政府と言えない。

日本の主権者国民は即時に、この政府の退場を命じるべきだ。
東京五輪開催を阻止するための、あらゆる示威行動を展開する必要がある。
また、東京五輪開催を主唱するスポンサーに対して徹底的な不買運動を展開する必要がある。

コロナ収束に逆行する五輪聖火リレーは、「商火リレー」と化している。
五輪スポンサーが宣伝活動のために大音響とともに巨大車列を運航し、人為的な「密」を創出している。
コカ・コーラ、日本生命、NTT、トヨタが巨大車列の商火リレーを強行している。
日本の主権者国民はこのスポンサーに対する徹底的な不買運動を展開すべきだ。

「命より金」の五輪など不要。
緊急事態宣言発出に際しては、五輪に対して休業要請を行うべきだ。

五輪は大量の外国人の国内流入をともなう。
日本が最も警戒しなければならない変異株流入のリスクを著しく高める。

オリンピックで6万8,000人、パラリンピックで2万5,000人の外国人入国が計画されている。
IOC関係者、メディア関係者に対しては、毎日の検査が義務付けられていない。

選手村、練習会場、競技場以外の滞在を認めず、移動を専用輸送手段によるものに限定するのは選手とコーチ等の関係者だけではないのか。
これらの外国人と接触するボランティアも選手村と練習会場、競技場以外の滞在を認めず、移動手段も専用輸送手段に限定するのか。

また、選手の一部は自己手配ホテルに滞在する。

選手・関係者に対する検査も「原則毎日」とされており、「必ず毎日」ではない。
輸送手段も「原則専用輸送手段」であって「必ず専用輸送手段」でない。

ボランティア参加者の公共交通手段利用を認めるのか。
IOC関係者およびメディア関係者に対しても「バブル方式」を適用するのか。
その際に、本人位置確認をどのように実行するのか。
違反事例に対する摘発と処分をどうするのか。

細かな実効性が何も担保されていない。
要するに「ザル対応」なのだ。

9万人規模の外国人流入を実施するなら、世界中から変異株が日本国内にもち込まれることは確実だ。
100%の確率と表現してよいだろう。
変異株が日本国内での感染拡大をもたらすことは火を見るより明らか。
200年を越える歴史を有し、世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌のひとつである

“The New England Journal of Medicine1”

ChAdOx1COVID-19ワクチン(アストラゼネカ製)のB.1.351に対する有効性
という題名の論文が掲載されている。

論文は、「南アフリカ変異種」に対するアストラゼネカ製ワクチン2回接種後の効果が10.4%であったことを示す。
変異株に対するワクチン効果が極めて低いことを示している。
ワクチンが新種の変異株に対して効果を発揮しない可能性が示唆されている。

「五輪より命」が本当なら五輪中止以外に選択肢はない。
菅首相が国会答弁を踏みにじるなら、次の総選挙で自公政権を確実に潰さねばならない。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

関連記事