【経済事件簿 (1)】コロナ禍で挙式が激減、賃料減額を求め提訴
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(株)山田屋
九州トップクラスの貸衣装業者
(株)山田屋は1951年3月、現代表・中村クミ氏の父である山田安生氏が総合美容品卸「ヤマダ」の商号で福岡県久留米市において創業。62年に現代表の母である山田民子氏が貸衣装「山田屋」を創業し、69年に西鉄グランドホテル、76年に博多全日空ホテルに出店。ホテルで挙式者を対象に衣装レンタルを行うビジネスモデルで飛躍を遂げた。82年4月に株式会社化。
2003年、現在の所在地に「福岡天神アベニュー山田屋」を新築オープンした。現代表・中村クミ氏は11年1月に就任。関連会社に結婚に関してのコンサルティングや総合プロデュースを行う(株)ブラナビプラスを有する。
中村氏は事業のみならず、社会奉仕活動にも熱心で、働く女性たちによる奉仕団体である「福岡ゾンタクラブ」を2015年に発足させ、会長を務めていた。中村氏と活動をともにしていたある会員は「人柄が良いのはたしかだが、その反面、自己主張が強く、他人の声に耳を傾けない頑固なところがある。最近は息子に事業を譲り、自身は社会貢献活動に専念したいと言っているようです」と中村氏を評する。
同社は主に婚礼衣装、成人式の振袖、卒業式の袴などの貸し出しと販売を行っており、商品の品ぞろえ、提携ブランド、ともに九州でもトップクラスの規模を誇っている。また、自社企画のファッションショーを開催するなど、さまざまな角度からの顧客獲得を図っている。
エフ・ジェイホテルズを提訴
現在、同社は福岡市のほか、北九州市、久留米市、鹿児島市、東京都港区にも店舗を構えている。そのうちの1つであるグランドハイアット福岡(福岡市博多区)に店舗を構えたのは1996年のことだが、同社は今年4月、グランドハイアット福岡を運営する(株)エフ・ジェイホテルズを相手取り、賃料減額請求の訴訟を提起した。同社の言い分は「結婚式の減少、周辺の賃料相場を勘案すると現在の固定賃料と歩合賃料(売上に対して一定の割合で算出)は妥当ではない。固定賃料は半額に、売上減少が著しいため歩合賃料は10%に」というもの。
また、同社はグランドハイアット福岡が緊急事態宣言にともない20年4月8日から5月31日まで休館したことに対し、「入居施設側の指示で休業を余儀なくされた場合、貸主の使用収益義務が不履行となるので民法などを根拠に借主は賃料支払い義務を免れる」と主張した。しかし、エフ・ジェイホテルズは「今回はそれに該当しない」として固定賃料および共益費を20%減額したにとどめたため、同社は「本来は支払い義務のない残り80%を支払い、不当利得が生じたと主張し、不当利得返還請求に基づき、遅延損害金の支払いを求めてエフ・ジェイホテルズを提訴した。
「恩を仇で返す」行為
エフ・ジェイホテルズの親会社である福岡地所は、データ・マックスの取材に対し「ホテルのオープン当初からの長い付き合いである山田屋さんによる今回の訴訟提起には困惑している」とし、「我々としては自然体で、弁護士を通して粛々と裁判を進めていくだけです」と語る。
ある業界関係者は「グランドハイアット福岡への出店が山田屋のブランドイメージ向上に寄与したことは紛れもない事実です。それにも関わらず訴訟を提起するとは、『恩を仇で返した』と言われても仕方がないのでは」と指摘した。
中村氏がかつて所属していた「博多21の会」の会員からも「裁判の必要があったのでしょうか?双方が、もう少し話し合いを重ねることで、解決することはできなかったのでしょうか」との声が挙がっている。なお、山田屋に今後の見通しや今回の訴訟についての質問などを投げかけていたものの、こちらが指定した期日までに回答が得られなかった。
同様の立場にたたされた場合、読者の皆さまは、どのような判断を下されるだろうか。
【特別取材班】
法人名
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