【BIS論壇No.348】日本衰退の現状
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NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会会長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は2021年5月25日の記事を紹介。小林興起事務所の月例研究会が5月24日に開催された。講師は(株)経世論研究所所長・三橋貴明氏。演題は「変わる世界の経済政策、変わらない日本」だった。
三橋氏によると、日本の実質賃金の指標は1996年を115とすると2015年に100、20年には99に低下。25年間も低下が継続し、ゆゆしき事態だ。
これに比べて、主要国の18年のGDPは韓国、豪州が01年比2.5倍強。米国、英国、カナダが同2倍弱。フランス、ドイツが同1.5倍弱。日本のみ同1倍強と、長期低迷していることが明白である。
10年に日本を抜いた中国のGDPは、19年には日本の3倍の1,500兆ドル。米国のGDPは2,000兆ドルを超えた。30年までには中国が米国を抜き、インドが日本を抜くとの見方が現実味を帯びてきている。
コロナ禍での日本のPCR検査、ワクチン接種において、目を覆わんばかりの世界的な出遅れとなった主要な原因の1つが、一般職国家公務員を削減したことだ。一般職国家公務員を、01年度の80万人から19年度の30万人と、50万人強の極端な削減を行ったことにその大きな原因があるという三橋氏の指摘は注目に値する。
OECD(経済協力開発機構)諸国の公務員の労働人口比率でみても、ノルウェー、スウェーデン、デンマークなど北欧諸国の30%台、OECD平均の18%弱に比べて、日本の5.9%は最低である。
人口1,000人あたりの公的部門における職員数でも日本は36.7人と、フランス89.5人、英国69.2人、米国64.1人、ドイツ59.7人に比べて、最低である。
地方公共団体職員数も、1994年の約328万人強から2020年には276万人強と、50万人強が削減されている。これらが日本の公立病院の削減と相まって、今回の日本政府のコロナ対策における後手後手の対応の一因であるというのが、三橋氏の指摘するところである。
さらに、19年2月と20年の歳出予算残高も34.6兆円と巨額に達しており、政府の対応のまずさを三橋氏は鋭く指摘している。
21世紀の国家の競争力の雌雄を決する科学予算の推移をみても、日本が1983年から2019年に至るまで25年以上、年間5兆円以下であるのに比べて、米国は15兆円内外で推移。一方、中国の科学予算は19年には25兆円を突破、IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、EV(電気自動車)、バイオ、宇宙科学などで総力を結集している。
これに比べて、日本の文部科学省は大学の予算を年々削減、大学授業料も値上げしており、大学授業料は低額、または無償としている先進各国に比べても、日本の対応は日本の将来の技術革新、文化振興にとってゆゆしき事態にあることを強く認識する必要がある。
これでは、日本は21世紀に諸外国に太刀打ちできず、アジアでの衰える老大国、「年老いたゴールドメタリスト」となり、韓国、台湾はおろか、中国、インドなどの後塵を拝して衰退の坂道を転げ落ちるばかりではないかと危惧される。日本の奮起を望むのは、無理だろうか。
<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)関連キーワード
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