ミャンマー軍事クーデター、日本政府が沈黙する陰に日本企業と軍の深いつながり(5)
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(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長
CMCオフィス(株)代表取締役 大谷 賢二 氏2月1日のミャンマー国軍によるクーデターは、昨年のミャンマー連邦議会の総選挙で、アウンサン・スーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割以上を得たことに恐れをなした国軍が、憲法で保障された権限を発動したものだ。
国連や欧米各国は、ミャンマー軍に対して、市民の殺りく停止、スーチー女史などの逮捕者の即時釈放、民主化の回復を求めて厳しい対応をしているが、日本は毅然とした態度をみせていない。そのような対応しかできない背景には、日本企業とミャンマー軍との深いつながりがあった。(4)日本企業が参加する「Y Complexプロジェクト」
ミャンマーにおける大規模な複合不動産の開発・運営事業には、(株)国際協力銀行(JBIC)、東京建物(株)、(株)ホテルオークラ、(株)みずほ銀行、(株)三井住友銀行、(株)海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)、(株)フジタといった数多くの日本企業が参加している。しかし、同事業は、ロヒンギャやカチンといった少数民族を迫害しているミャンマー国軍が所有する土地で展開され、本事業によって軍が利益を享受することから、日本企業が人権侵害に加担する可能性が指摘されている。
2021年に開業予定の3億3,000万ドル(約343億354万円)規模となるYコンプレックス プロジェクトは、ヤンゴンのダウンタウンで建設中の高級商業施設であり、オフィススペースも含まれる。このプロジェクトは、上記の通り日本の大手金融機関や不動産会社などが出資しており、公的資金と民間資金で支えられているのだ。
本事業には、JBICやみずほ銀行、三井住友銀行が融資を提供している。また、開発にはオークラ、東京建物、フジタが関わり、設計・建築を東京建物が、設計・施工をフジタが担当している。そして、東京建物とフジタとJOINは、シンガポールにYangon Museum Development Pte. Ltd.(YMD)という特別プロジェクト会社を設立している。
YMDは、JBICからの融資を、ミャンマーの法人Yangon Technical and Trading Co. Ltd.(YTT)とともに設立したミャンマー法人Y Complex Company Limitedを通じて本事業に投資。YTTは、YMDと契約を結び、ともにYコンプレックスに投資している国軍の需品係将校が所有する土地の賃貸契約を結んでいる。
問題とされているのは、このYコンプレックスが、ロヒンギャに対するジェノサイドおよびカチンを含むほかの少数民族に対する人道に対する犯罪を行ったミャンマー軍が所有する土地上に建設されている点だ。この土地の契約書によればYTTはミャンマー国軍の兵站総局と最高司令室から直接土地を賃借しており、賃料が「防衛口座」という名義の口座に振り込まれていることが明らかになった。その後の使途は明らかとなっていないが、国軍のお需品係将校が、ロヒンギャやほかの少数民族に対する人権侵害に使われている武器や軍備の購入の裏で行われている金融取引を扱っていることが指摘されている。
20年6月26日、(特非)メコン・ウォッチがJBICに対し、賃料がミャンマー国軍に支払われているのかも含めてYコンプレックス開発事業の詳細について問い合わせたところ、JBICは同年7月13日、商業上の秘密の保護を理由に電話で返答を断ってきた。
メコン・ウォッチは同年8月25日、JBICに公開要請書を送ったが、JBICはその要請書にいまだ返答していない。一方で、21年2月4日、JBICは参議院議員とメコン・ウォッチとの会合で、賃料が環境影響評価書に含まれている賃貸借契約書に記載されている通り、Defense Account(防衛口座)に支払われていることをY コンプレックスと確認したことを認めている。
(つづく)
<プロフィール>
大谷 賢二(おおたに・けんじ)
1951年福岡市生まれ。福岡県立福岡高校、九州大学法学部卒。98年5月にNGOカンボジア地雷撤去キャンペーン結成。2008年12月にアジア人権基金より「アジア人権賞」を日本人として初受賞。11年4月に(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーンを設立、理事長に就任。関連記事
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