『日本弓道について』(5)弓を引くには~射法八節(後)
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今年5月に弓道の写真集を出版した。父を師として、42歳から弓を始め、弓歴は30年を過ぎた。弓を初めた頃から30年かけて撮影してきた、名人といわれる先生、弓道大会、弓にまつわる演武や祭などを載せた写真集だ。長年、弓を続けてきた者として、弓についてつづる。
射法八節とは(つづき)
「足踏み」は、弓道の中で最も重要です。筆者は弓を始めたころに、自宅の畳の縁で目をつぶって正確に足が開けるように練習しました。油断すると左足と右足が前後にずれて、両方の親指先が的に向かって一直線に並びません。今でも弓の基本として、練習しています。
20代でゴルフを始めたときにも、グリーンのピンに向かって右足を外に開いてみたり直角にしてみたりと、スタンスの練習を何度もしました。プロ野球選手も、それぞれ工夫してバターボックスに立っています。
足踏みをした後、弓を引くための動作に移っていきます。弓道は吸う息、吐く息の呼吸とともに動作をします。呼吸法を用いると、早くも遅くもなく動作ができます。審査や大会、練習で多人数と弓を引く時に、動作が揃うようになります。NHKのアーチェリー教室では、射法八節が基本と教えており、弓は和も洋も同じということを学びました。
弓を体いっぱいに引き、矢を放ったことを「離れ」(はなれ)と言いますが、その後のかたちを残心(残身)と呼びます。離した後に、余韻があるかどうかが大事です。この残心がきれいにできていれば、おのずと矢は的に的中しています。
ゴルフや野球のフォロースルーです。ゴルフは良いスイングができれば玉を撃ち終わった後、クラブが背中に巻きついています。フォロースルーで片手を離したときは、失敗しているのがわかります。スポーツの出来、不出来は、フィニッシュを見ればすべてわかります。
弓と矢、弓と手の内(グリップ)、首筋と矢など、すべての動作や作法が90度(スケアー)になっているのも弓道です。両足底、腰、両肩が、上方からみた時に一つに重なるように立ちます。この姿勢を引き初め、引き終わりまで続けます。
弓を引き始めると、弓の力に負けて左右に傾いたり、前後に傾いたりとわずかにずれる人もいます。筆者は、骨格からやや右に傾く傾向にあります。
1人で練習すると癖の修正ができないため、必ず他人に見えてもらうことが大切です。著名なプロゴルファーやテニスでも、専属コーチと契約してスイングの基本を修正しています。
日本弓道は、月謝を納めて教えを乞うことはありません。授業料はすべて無料の世界です。遠方からの派遣された先生方による講習会は、交通費や宿泊代などの費用を負担することはありますが、通常支払うのは、道場使用料やそれぞれの道場のクラブ会費のみです。ただし、昇段のための審査料は別です。
弓道を始めるには
福岡市は各区に体育館があり、すべての体育館に弓道場が併設されています。区ごとに初心者弓道教室が開催されていますので、「福岡市政だより」を閲覧ください。道具などは充備されており、靴下より足袋のほうが安定するため、足袋のみを用意すればジャージ姿で練習できます。
1年も練習すれば、上達の早い人は春秋の審査で初段と認可されることもあります。福岡市は恵まれた環境にあり、福岡県所有の弓道場もあります。
弓を初めるには、年齢は関係ありません、会社を定年退職して始める人もいます。相手がいらないスポーツのため、気軽に弓を引けるのも弓道の魅力であり、高齢者になっても弓を引くことができます。ただし、加齢とともに筋力が落ちてくるため、自分にあった弓を選ぶことが大切です。
まずは巻藁から始めましょう。巻藁とは藁を束にした練習用のものです。約2m先の巻藁を的にして、何度も練習し体に覚えさせていきます。また、いきなり射位に立って弓を引くと体が驚いて首や肩を痛める原因にもなるため、巻藁はウォームアップを兼ねています。
(了)
福岡市区弓道連盟会員
錬士五段
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