100年後も存続し続ける企業グループへ~大牟田市・白石自動車の挑戦
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産業廃棄物処理において、福岡県内・大牟田市圏域において存在感を高める白石自動車(有)。代表の白石政嗣氏の卓越した企業哲学のもと「100年企業」を目指し、新たなステージに踏み出そうとしている。
廃棄物を含めた運輸・運送のワンストップ企業
――現代社会において、産業廃棄物処理の問題は避けて通れませんね。
白石政嗣(以下、白石) まさに、なくてはならない業界だと自負しています。白石自動車は法人としては1954(昭和29)年設立になりますが、創業から数えれば86年になります。日本で運送業が始まったころにスタートしており、もともとは産業廃棄物処理よりも運送会社が基になっています。私で3代目になりますが、国内に運送会社が数多くあるなか、特殊輸送を始めたことで「オンリーワン」の存在になったと思います。
――特殊輸送とはどのようなものを運ぶのでしょうか。
白石 高圧ガス、危険物、毒劇物。それに産業廃棄物ですね。とくに当社は家電リサイクル取次所でもありますから、テレビや冷蔵庫、洗濯機、エアコン、バイクなども扱うことができます。これは全国に360カ所しかないので、特定郵便局みたいなものでしょうか。ここまで広く扱っているのは全国でも稀で、これもオンリーワンです。
――いわば「ワンストップ」が白石の強みで、白石さんに任せれば大丈夫だと。
白石 うちは扱う業種が多く、白石グループ全体では15社あります。1次グループでは7社、2次グループは私の兄弟がやってるガソリンスタンド関係ですね。3次グループまで合わせて今15社でグループをつくってます。
――大牟田市の産業界全体からも頼りにされる存在ですね。
白石 現在は商工会議所の副会頭を15年間ほど務めさせていただいております。あとは大牟田市体育協会、大牟田市危険物一般防災協会、大牟田市観光協会の会長も務めていますので、大牟田の団体のことはほとんど知り尽くしてます(笑)。
もっとも、私1人ですべてをまわすことはできないので、社員(スタッフ)を育てることが最も大事なことだと思います。商工会議所や体育協会あるいは観光協会にしても、事務局がしっかり動いているから支障なく業務を続けられるわけです。もう少し業界団体の仕事を控えて事業に打ち込めば、もう少し会社の業績を伸ばせるかもしれないのですが(笑)。
――企業経営において大事にしているものは。
白石 会社はまず国のために法人税を払い、その次に社員の給与を保証してボーナスも支給しなければなりません。その次に設備投資です。トラックを買って燃料を購入する。その後にようやく内部留保なんですね。会社が何かあったときのために資金を貯めておく必要もある。近年ではこういった当たり前のことに加えて、もう一つ大事なことがあるんです。それは「地域貢献」だと思います。具体的にいえば「SDGs」(持続可能な開発目標)の実現で、こうした理念が世界的に共有されてきたことで、今後は地域貢献できない会社は存続できなくなるかもしれません。そういう意味では、廃棄物における循環型社会と同じように、企業が儲かったら地域に還元するという姿勢が大事になります。
当社では、イオンモール大牟田、大牟田食堂組合、大牟田観光協会との共催事業で、今年の3月6日から約1カ月程度「春の田主丸 大植木祭り」を、3月27日と28日には「春の肉祭り」をイオンモール大牟田の駐車場を借りて開催しました。お笑いのゴリけんさんとパラシュート部隊さんをゲストにしたトークショーも行い、肉祭りでは2日間で数万人が来場しました。
年に2回、秋と春は「植木祭り」と「肉祭り」を大牟田で開催しますが、これも環境問題ですね。当社は仕事を通して「大牟田をみどりのまちにしたい」という思いで、緑化事業部を立ち上げました。現在はイオンモール大牟田や行政施設などの緑化管理を担当させていただいています。
信頼を積み重ねて「オンリーワン」企業に
白石 当社がいまどういった分野でオンリーワンを目指しているかというと、家電リサイクルです。まずは不法投棄をゼロにしなければならない。それがなかなか100%になりません。ずいぶん良くなってきていると思うのですが、さらに回収率を高めてリサイクルしていかなければならないと思います。
当社は取次店で、遠方からもうちにお持ちいただけるんですが、満杯になると北九州の最終処分場に持って行き、そこでまたリサイクルする。こういう仕事は地味ですが非常に重要なのです。
個人的には、循環型社会だった江戸時代に学ぶべきだと考えています。物を大事にして循環型社会をつくることは、結局助け合いの社会になるということです。だから当社の方針は「相手の気持ちになって考える」や「自他共楽」です。相手の心を思いやり、互いに支え合ってこそ自らが支えられる。これなんです。人のために尽くさないと自分も支えられません。
ドライバー業務も相手への思いやりがないと事故につながります。それを伝えるために、7年ほど前に安全スクールを開設しました。危険物の運搬において事故を起こすことは人命に関わります。化学薬品の漏洩、あるいは引火、爆発となれば大規模な事故につながるため、我々の業界では事故を徹底的になくすことにこだわっています。しかしながら、自動車免許を取得した後、多くのドライバーが継続的な教育を受けることなく運転している実状があり、ドライバーを再教育することで「プロ」の中の「プロ」ドライバーを一人でも多く養成する必要があると思います。免許を持っているだけではプロドライバーではありません。事故を起こさず、人間的にも品格があり、ルールを守り、そして感謝を持ち得るドライバーを養成していく。その具体化が「西日本安全スクール」です。
受講されるドライバーさんのなかには初心者もいらっしゃれば、30年選手の熟練者もいます。大牟田で一泊研修しますが、「安全は自分自身のためにある」「あたり前のことを当たり前にやる」ことが大事です。基本的なことですが、指差呼称で何度も再確認すること、平常心でいる難しさ、また、それを実践するための「心」の整理・整頓・清潔・清掃・躾など仕事への取組み姿勢も含めて教育します。開設から7年目になりますが、今では特定の荷主さまだけではなく、関東地区や九州の広い地域から多くの事業所のドライバーさんに来ていただくほど信頼を得ることができ、最近では大牟田警察署の署員300名に受講していただきました。
産業廃棄物を運ぶうえで事故とは常に隣り合わせですから、一般市民の方に危害を加える可能性もある。基本中の基本はやっぱり安全なのです。「そもそも安全なんか存在しない。常に存在するのは危険である。その危険を的確に予測し、確実に防止する。これが安全である」。そのためには指をさして、声を出して、脳裏に反復作業をしていくという訓練を徹底しています。こうした取り組みは光栄にも、私の母校である国士館大学同窓会会報でも紹介されました。
――たくさんのグループ会社を抱えるなかで、まとめていくご苦労もありますね。
白石 グループの理念は「結束・信用・気迫・責任感」ですが、そのなかでもとくに大事なのが信用です。大きな信用、小さな信用がありますが、小さい信用ほど大事にしなければならない。約束してすぐ忘れるとか約束を守らないことを繰り返していては、大きな仕事をまかせることはできません。
おかげさまで、当社はこれまでにさまざまな表彰を受けておりますが、一番栄誉だったのは2014年にいただいた「福岡労働局長賞」です。これは単独の運送会社でいただいた例はございません。推薦していただいたのは大牟田労働基準監督署の所長で、そのときに労働局長がこう聞かれたそうです。「大丈夫かね? 運送会社はよく事故をおこすのに……」と。そのときに大牟田の所長が一言「いや、白石さんは大丈夫です」と。これが信用なのです。働いている者たちが安全で、安心して、ルールを守っている、これができる会社でなければ信頼を得ることはできません。
――産廃業界は慢性的な人手不足ですが、白石グループではいかがでしょうか。
白石 定着率を上げるには、当然ですが社内環境を整えることが大事です。やはり「現場第一線主義」。ドライバーさんの情報や意見をボトムアップ方式で吸い上げ、常に「改善」していく。これが本当に大事で重要なことです。事務所スタッフには様々な意見に耳を傾け、配慮・気配りするようお願いしています。
また、ドライバーの派遣事業も手がけているため、他の企業の制服を着て一生懸命に働いている社員たちが熊本、長崎、佐賀、大村、さらには久留米、鳥栖、北九州にいます。運送以外でも製造業やメンテナンス事業などもありますから、そういうところも含めると50人近くを派遣しています。九州一円に派遣しており、管理も大変ですが、同じように従業員の意見を聞いて「改善」していくことは働く従業員に安心感を与えます。さらなる「安全・安心・改善」の社内文化を作り上げ、定着率の向上や風通しの良い会社づくりに努めています。そのような取り組みが、派遣先の企業さんも、自社で配送させるより、「やっぱり白石自動車グループに頼んだ方が礼儀正しくて、事故を起こさない。安心だ」ということで、多くのご依頼を受けています。
――現在の従業員数は。
白石 直接の社員が7社で200人超です。2次グループ、3次グループも合わせると400人を超える社員が在籍しています。
家電リサイクルが土日に持ち込まれることもあるため、交代制勤務で365日24時間の管理体制をとっています。当社はグループ会社がたくさんありますから、会社間でコラボして業務を行っています。白石九州物流ターミナル(株)の社員が白石自動車(有)の仕事を行い、白石自動車(有)の仕事を白石九州物流ターミナル(株)の仕事にまわしていく。経理や人事など事務面も含めてお互いに無理・無駄を省き、お客様の困った案件にいち早く対応できる機動力のある会社を目指しています。
100年先を見据えて
白石 私は白石自動車やグループ全体を「オンリーワン」の存在にまで高めたいし、そのためには輸送では他社ができない高圧ガス、危険物、毒劇物のプロフェッショナルになる。産廃部門では家電リサイクル、それが当社のストロングポイントです。
10年後には最高に体力のある会社につくりあげたいと思っています。そして20年先、50年先、100年先でも存在し発展し続けるための基盤を整備する。発展し続けて行くための企業としての「伝統」をいまのうちから作り上げておきたいです。
そのために、近いうちにホールディングス制に移行しようと思います。「白石グループホールディングス」にして本部が統括し、有能な人物にそれぞれの部門で責任者になっていただく。今後の課題はそうした舞台づくりだと考えています。
【聞き手:内山 義之】
■COMPANY INFORMATION
白石自動車(有)
<本社>
福岡県大牟田市新開町3-48
<代表>
白石 政嗣
<設立>
1954年4月27日/創業 昭和10(1935)年
<営業所>
福岡支店、山口支店、四ツ山車庫(大牟田市)、大浦車庫(大牟田市)
<主な取引先>
三井化学(株)、関東化学(株)、三井アグロ(株)、大牟田市、エア・ウォーター西日本(株)・エア・ウォーター炭酸(株)・デンカ(株)、福岡酸素(株)・全農エネルギー(株)・日本エア・リキード合同会社 など
<グループ企業>
ドライアイス白石(有)、白石九州物流ターミナル(株)、(株)宮浦整備工場、白石計数管理センター(株)、西日本安全スクール(株)、白石商会 ほか関連キーワード
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