福岡県マンション管理士会総会、理事長インタビュー
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(一社)福岡県マンション管理士会は6月末、福岡市赤坂2の市立中央市民センターで第6期(2020年度)総会を開いた。昨年度事業、決算報告を承認した後、新事業2件を含む今年度事業計画案、予算案を承認した。
新事業の1つは、有料マンション管理士訪問相談事業。困っている管理組合に同会所属のマンション管理士を派遣して、さまざまな問題解決のサポートを行う。行政主催の無料派遣はすでにあるが、こちらは1年1回限り。新事業は1回5,000円で、年3回まで。もう1つの新事業は、新役員入門セミナー開催。管理組合の役員に就任した人を対象に、有料で年2回開催する。終了後、「卒業証書」を授与し、卒業管理組合の理事会にマンション管理士を無料派遣する。
このほか、福岡市、北九州市、久留米市で開催している無料相談会や管理士派遣業務など行政とのパートナーシップ事業の拡充、福岡県マンション管理士会が主催するセミナー&相談会の開催地域を広げるなどの事業計画を承認した。
総会後、藤野雅子・同会理事長に今後の抱負などを聞いた。
――新事業の有料マンション管理士派遣の目的は?
藤野 まずは管理組合のニーズをもっと拾い上げる、ということですね。行政主催の派遣事業は年1回であり、なかなか十分なところまではいきませんので。他には、マンション管理士のオン・ザ・ジョブ・トレーニング(実務による職業訓練)です。管理組合に派遣するのは2人1組で、メインのマンション管理士と新人の管理士。新人管理士にとっては研修という位置付けですね。管理士会に入会する人から「管理組合に行ったことがない」という話をよく聞くため、そのきっかけをつくるということです。
――マンション管理士の仕事とはどういうものですか。どの程度、社会的に認知されていると思いますか。
藤野 私たちの仕事は、管理組合、管理会社、施工会社などマンション管理にかかわるすべての人のコーディネーターです。何か問題があるときに、どういう解決方法があるのか。さまざまな人がかかわってきますから、円滑に進むように調整します。弁護士に相談すればいいのなら弁護士に紹介するし、建築士なら建築士というように。
マンション管理士の認知度は、マンションに住んでいる人で20%程度でしょうか。まだまだ低いですよね。高めていくためには、一歩一歩着実に業務をこなしていくしかありません。行政とタイアップした事業も多いため、そうしたことも大切にしていきたいと思います。
――管理士会には年間何件の相談が寄せられますか。
藤野 電話による相談と行政を通じた相談と合わせて120~130件ほどです。相談内容によりますが、担当者が1件1件、対応していくことになります。
――マンション管理士は多職種からの転職も多いと聞きますが、理事長自身、以前は何をされていましたか。また、マンション管理士になったきっかけは何ですか。
藤野 マンション管理士の前は主婦でした。初めて買ったマンションの管理が、それはもうひどいところで(笑)。最上階の給水管が破裂して滝のように水が流れ落ち、管理会社に交渉に行くとおじさんが1人ポツンといて何もしない。半年たっても管理費も修繕積立金も引き落とされない。「なんじゃこりゃ」っていう感じでした(笑)。
居住者が協力して別の管理会社を見つけ、その会社がマンション管理については国が作成した標準管理規約というものがありますよ、と教えてくれて、ようやくまともになりました。ちょうどそのころマンション管理士制度が始まって、それでは受けてみようかと。
――マンション管理士になってつらかったこと、うれしかったことは?
藤野 つらいのは人間関係ですね。マンションで何かあると、さまざまな利害が絡んで嫌なことを言われます。「もう、しゃべるな」「帰れ」「マンション管理士なんかやめさせてやる」など。もうけてやろうと管理組合に入り込む人や業者もいるんです。そこに私たちマンション管理士が入ると変なことができなくなるため、恨まれることになる。6個の電話を持っていて、着信拒否してもしつこくかけてくる人もいましたね(笑)。そういう時はスルーするしかないのですが、どうしようもない時はやめるしかありません。マンション管理士の仕事はサンドバッグになることではありませんので。
うれしいことは、長くかかわった管理組合の人たちと「いい方向に変わったね」「よかったね」という話をできることですね。
――今後の目標を教えてください。
藤野 ファシリテーション(会議の進行役)の勉強をずっと続けていて、いま(特非)日本ファシリテーション協会にも参加してホワイトボード・ミーティング®の認定講師をやっているのですが、この技術を伝えたいと思っています。
会議で、声の大きい人や、かぶせるような物言いの人がいると、皆が委縮してしまい、そういう状況のなかで出た結論には誰も従いません。そうではなく、誰もが納得できる結論を導けるように調整する。マンション管理士には絶対に必要な能力だと思いますが、あまり普及していない。全国のマンション管理士でやっているのは私1人だと思います(笑)。管理組合の会議で笑顔を引き出す技術として伝えていきたいですね。
【マンション管理士&フリーランスライター 山下 誠吾】
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