【コロナで明暗企業(8)】海外旅行が蒸発したエイチ・アイ・エス~ハウステンボス売却計画の衝撃!(3)
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新型コロナウイルスの流行はいまだ収束せず、旅行することはまだ難しい。コロナ禍で需要が蒸発した旅行業界のなかで、エイチ・アイ・エス(HIS)は海外旅行が主体であるだけに打撃が大きい。ワクチン接種による国内旅行の回復に期待がかかるが、7月12日、東京都に4回目の緊急事態宣言が出された。ドン底から抜け出す光明は見えてこない。同社は生き残るために、なりふり構わず資産売却に動き出した。
訪日客ゼロのハウステンボスの売却も?
澤田秀雄会長兼社長は昨年12月11日の大リストラを発表した席で、不動産売却に言及。コロナ禍が長期化する場合は、本社やハウステンボス(HTB)の売却も選択肢とした。HTBは「売却すると700億~800億円になる」と具体的な金額を示した。本社を売却した次はHTBの番だ。
長崎県佐世保市のテーマパーク、HTBは6月11日、2021年3月期中間決算(20年10~21年3月、単体)を発表した(決算月はHISが10月、HTBは9月で異なる)。園内全体の売上を示す取扱高は前年同期比18%減の76億円。営業損益は2.1億円の赤字(前年同期は1.6億円の黒字)に転落。最終利益は同48%増の6.4億円だった。
総入場数は23%減の79.9万人で、開園以来初の訪日観光客「ゼロ」となった。新型コロナの感染拡大の第3波で、昨年12月下旬から政府の観光支援事業「GoToトラベル」が全国で停止となったことが響いた。またHTBの坂口克彦社長は、23年に株式上場を予定していることを明らかにした。
カジノ運営への情熱を喪失
HISの澤田会長兼社長はHTBを上場させると、事あるごとに言及してきた。だが、もはやそんなどころではない。HIS本体が経営危機に陥り、HTBもコロナ禍の直撃を受け、入場者が激減。上場できる財務内容にほど遠い。
澤田氏はHTBの経営に熱情を失っている。澤田氏はHTBを長崎県と佐世保市によるカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致候補地に掲げた。カジノと一体となった運営をHTBの成長戦略の柱に据えた。カジノ誘致に成功した場合、「来場者が年間100~200万人増加する」と試算していた。
世界初となる海中カジノが、IR誘致の目玉。海中カジノは海面下の壁を大型の強化ガラスにした特別施設で、海中を泳ぐ魚の様子を眺めながらゲームを楽しむことができる。建設場所はHTBが面している大村湾を想定していた。
だが、カジノへの熱情を失った。HTBは19年9月、IRの誘致を目指す長崎県佐世保市と施設建設予定地の売却価格を205億円とすることで合意した。IRの誘致候補地はHTB内の30haで、宿泊施設「ホテルヨーロッパ」などが立地している。
土地は売却するが、HTBはIR運営事業者として名乗りを上げないことを明らかにした。「カジノ列車」から降りたのである。
(つづく)
【森村 和男】
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