【コロナで明暗企業(9)】紳士服はるやまHDの“骨肉の争い”~創業者・父と長女が長男の社長に「レッドカード」(前)
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新型コロナウイルス感染拡大や緊急事態宣言で一気に広がった在宅勤務。在宅のテレワーク、リモート会議が浸透し、入社式はとりやめた。テレワークの普及が紳士服業界を直撃した。自宅で働くのにスーツは必要ない。大きな転換期を迎えた紳士服業界で、前代未聞の事態が起きた。「紳士服のはるやま」を展開するはるやまホールディングスで、創業者の長女が実弟の社長に「レッドカード」(退場処分)を突き付けたのだ。
創業家の長男、治山正史氏が取締役再任
紳士服量販国内4位の(株)はるやまホールディングス(HD、岡山市、東証一部上場)は7月1日、6月29日に本社で開いた定時株主総会の議決権の行使結果を公表した。
創業者の長男で社長・治山正史氏(56)の取締役再任は、賛成57.55%で可決した。正史氏を除く創業家側は反対票を投じたものの、個人株主らが賛成に回った。
29日付で、正史氏は社長から代表権のない会長となり、新社長には同業のAOKIホールディングス(HD)出身の中村宏明氏(57)が就いた。創業家以外では初の社長だ。
この結果に、正史氏は胸をなで下ろしたに違いない。正史氏の取締役再任をめぐっては大株主である創業家内で対立が起きていたからだ。
創業家の“骨肉の争い”、創業者と長女が長男の社長解任迫る
治山正史氏の取締役再任に反対する意向を示したのは、正史社長の姉・岩渕典子氏(58)や父である創業者の治山正次氏(89)。株主総会開催の直前に、岩渕氏ははるやまHDの株主宛てに「治山正史の取締役選任反対のお願い」と題した手紙を郵送。その文面がインターネット上にアップされ、大塚家具を思わせる紳士服版“骨肉の争い”と話題になった。文面はこう綴られている。
「弟は、自分に意見する社員は、左遷・退職に追い込むことを繰り返しております」。
「弟のせいで、これ以上、社員から犠牲者が出るのは耐えられません」。実は昨年の総会でも、正史氏の解任動議が、岩渕氏や創業者の正次氏らから出された。賛否は拮抗し、賛成51.59%という僅差で可決された。
今年が第2ラウンド。はるやまHDは5月、正史氏を代表権のない会長とする人事案を発表。同業のAOKIHD出身の中村宏明氏を代表に据えるとして幕引きを図った。
だが、創業家側は「弟を入れない取締役体制の構築が、会社再建の第一歩」として、岩渕氏名義で個人株主や取引先に株主総会で反対票を投じるよう手紙で呼び掛けていた。
はるやまHDの株主のうち3割程度が創業家を除く個人株主とみられ、個人株主が正史氏に賛成票を投じたことで、正史氏はかろうじて再任された。これにて一件落着というわけではないだろう。
(つづく)
【森村 和男】
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