韓国、膨らむ政府債務と家計負債、募る国民の不満(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
韓国政府が、コロナ禍で景気を刺激するために取った浮揚策の資金は不動産や株式市場に向かい、政府の価格抑制政策にも関わらず、不動産は高騰を続けている。しかし、自営業者などを始め、資産をあまり持っていない一般人の家計は負債のみが膨らみ、将来の不安を募らせている。今回は、韓国政府の政策と国民の募る不満を取り上げる。
韓国の新型コロナウイルスの最新動向
韓国では新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、今月7日から17日連続で毎日1,000名以上の新規感染者が発生している(23日時点)。インドで確認された変異ウイルスのデルタ株が猛威を振るい、感染拡大が衰える気配はない。
23日の感染者は全国で1,630人となり、ピークであった21日の1,842人よりは減少したが、依然として感染数は高止まりである。韓国の累積感染者は18万5,733人となった。感染拡大を何とか抑えるため、韓国の防疫当局は首都圏の規制レベル4段階として、午後6時以降の3名以上の会合禁止を、26日から2週間延長することを決めた。
韓国政府・中央防疫対策本部の関係者は、昨年末の3次流行当時の平均感染者数は1日あたり約660人であったが、今回の4次流行の平均感染者数は1日あたり1,410人のため、2倍以上に規模が拡大したと強調した。とくに、現在は夏の休暇時期であるため、感染拡大が強く懸念されている。ちなみに、韓国でのワクチンの1次接種率は32.6%、2次接種率は13.2%となっている。
感染拡大が続いているなか、政府の厳しい政策はやむを得ないとしながらも、一部では政府の防疫対策に対する不満も噴出している。規制レベル4段階が実施された後、賑わっていた食堂や居酒屋などは客足が途絶え、閑散としているためだ。しかし、感染拡大が止まらず規制が2週間延長されれば、店側は1カ月間休業したことと実質的に同じ状況となる。
政府に対する不信感の増加
政府は不動産価格を抑制するため、諸々の政策発表をしているが、不動産価格はそれをあざ笑うように高騰を続け、庶民の政府に対する鬱憤は溜まっている。ソウル市内のほとんどのマンションは10億ウォン(約9,595万円)を上回り、若年層は親からの支援なしに家を買うことは、ほぼ絶望的となっている。
若年層は職を見つけるのも難しく、仮想通貨への投資に傾倒している。しかし、韓国政府は仮想通貨の政策にも右往左往し、規制することしか念頭になく、仮想通貨にかけようという若年層の最後の夢まで奪おうとしているため、若年層は政府に対して裏切られたような思いを抱いている。
防疫においても、韓国政府の功績を認めつつも、一部ではこれほど厳しい規制で経済を疲弊させていることに対する疑問の声も上がっている。「防疫」を言い訳にして、一切の集会を禁じることが実は政府の狙いではないかと、うがった見方をする向きもある。
幸いにして、新型コロナウイルスの致死率は低いため、規制レベルを下げて、正常な経済活動を営みながら、そのなかで感染した人は自身で対応するのが正しいのではないかという意見まで出始めている。
国民の不満の矛先は、防疫や不動産政策のみではなく、対外関係にも向けられている。それは、韓国政府は北朝鮮に同調し、中国に味方することによって、長年築いてきた米国との信頼関係を損ない、大事な隣国である日本との関係においても軋轢を生じさせており、何1つうまく行っていないという不満である。
現在、「世界半導体戦争」のさなかで、米中は半導体の覇権をめぐって激突しているが、サムスングループの司令塔が刑務所に服役しており、この状況が続くのは好ましくないというのが、世論の主流である。与党の政策に対して韓国経済を壊すような悪い意図があるのではないか、と疑問を投げかける傾向が一部で強くみられる。
(つづく)
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