2024年12月24日( 火 )

“若者”に押し付けられるコロナ「対策」と「対応」〜結局は自己責任?

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 東京都の小池百合子知事が先日の記者会見で、「とくに一人暮らしの方々などは、自宅もある種、病床のようなかたちでやっていただくことが、病床の確保にもつながり、その方の健康の維持にもつながる」と発言し、一部の都民からは非難の声が挙がっている。東京都では、検査陽性者の自宅療養者がすでに1万1,018人となった(8月1日午後7時30分現在、詳しくはこちら
 コロナの陽性者数が発表されるたびに、若者のせいにし続けてきた小池氏であるが、これまでの施策の結果、必要となった対応を若者に丸投げしている状況にも見える。

「とくに若い方々に・・・・」

 これまで小池都知事は、感染拡大の対策として毎度のごとく“若い世代”の行動に言及してきた。年代別の新規陽性者数は10代〜30代が約60%となっているが(図1)、はたして新規陽性者数の増加の大きな要因となっている若い世代に対して何をしてきたのだろうか。東京都は、図2にあるように他の都道府県に比べて若い世代が多い。また若い世代は、通勤や通学などで外出する機会も多い。

図1 引用元:東京都福祉保健局
図1 引用元:東京都福祉保健局
図2 引用元:東京都HP
図2 引用元:東京都HP

 ワクチン接種も高齢者を中心に行われており、若い世代の陽性者が増えるのは必然だろう。今回で4度目となった緊急事態宣言の効果はほとんどなく、飲食店などの一部業界の業績に対する圧迫になっているだけだ。

 小池都知事がこれまでお願いしてきた自粛を、若い世代は一部を除いて応じてきた。陽性者数が増えるたびに出された緊急事態宣言に対して協力することで、陽性者数はその都度減少した。しかし、解除後の具体的な対策に変化はなく、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月7日から、解除と発令を繰り返して約1年4カ月が過ぎようとしている。

 これまで宣言の度に小池都知事の要請に応じてきた東京都民の過半数以上が、「開催中止・延期」をお願いしたにもかかわらず、検討すらされず強行された東京オリンピック。今さら自粛をお願いされても筋が通らないと考える若い世代は多いのではないだろうか。「対策」の肝とされてきた若い世代であるが、コロナの「対応」においても厳しい状況が迫る。

一人暮らしの陽性者を襲う危険と不安

 東京都の8月1日の新規陽性者数は3,105人、これまでの陽性者数は累計で22万1,026人となり、入院者は3,166人、自宅療養者は1万1,018人となっている(図3)。新規陽性者数が7月31日には4,058人となり、初めて4,000人を超えた。すでに医療現場では「崩壊間近と言ってもいいと思います」(品川区某病院・医師)との声も上がっており、実際に自宅療養せざるを得ない状況の人も多い。

図3 引用元:東京都HP
図3 引用元:東京都HP

 コロナについて、症状が急変する可能性の高さが以前から危惧されており、自宅での孤独死がたびたび問題視されているが、入院もしくは宿泊診療を望んでも対応できない状況が続く。

 とくに一人暮らしをしている人にとって、コロナ陽性者となれば日常生活にも影響が出る。外出は不可能となり、近くに親類や頼れる友人などがいない人は食料などをそれまでの備蓄や宅配サービス、通販で対応することとなる。しかし、宅配サービスなどは通常の食費に比べて割高であり、生活費に大きな余裕がない学生などの都民にとっては痛い出費となる。また、最近では、宣言による経営悪化でアルバイトの採用を止めている飲食店や販売店も多く、収入が大幅に減少した都民も多い。

 東京都は20年11月、一定の条件を満たした自宅療養者向け支援として「自宅療養者フォローアップセンター」(以下、同センター)を開設した。同センターでは(1)LINEまたは電話による毎日の健康観察、(2)自宅療養中に必要な食料品の配送、(3)24時間対応の自宅療養者専用相談窓口、(4)パルスオキシメーターの配布の対応を行っている。

 しかし、今回の感染爆発を受けて同センターでは対応に窮している。

 「こちらではもともと保健所に案内された65歳未満の自宅療養者を対応していましたが、今は対応が追いつかず30歳未満に限定して対応しています。7月以降、予想以上の陽性者数となり療養者への連絡が遅れる事態もあり、可能なところへはSMSなどを利用するなど工夫して対応していますが、依然として厳しい状況です。配食のフォローアップも今回の事態で食料品のストックが足りず、配食できない場合も出てきています」(東京都福祉保健局感染症対策部防疫・情報管理課長)。

 「一人暮らしの方は、自宅を病床に・・・」。はたして小池都知事の発言は、この状況を鑑みてのことだったのだろうか。都が開設した自宅療養者への支援制度は、機能性が低下しているが、今度はその対応まで若い世代にお願いするつもりだろうか。

 “多様性と調和”を理念に掲げて、多くの利権からむと考えられる東京オリンピックに注力することも大切なことであるが、足元の問題にもせめて迅速に対応してほしい。

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