崖っぷちに立たされた韓国の自営業者(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
韓国は自営業者(※)の国であると言っても過言ではない。全就業者の4人のうち1人は自営業者と、その比率はG7平均の2倍以上である。ところが、新型コロナウイルスの影響で甚大なダメージを受けた自営業者は、その数が減少しつつある。一方、ベンチャー企業の起業は増加傾向にあり、韓国では自営業者が減り、ベンチャー企業に就職する人が増えている。今回は新型コロナウイルスで大ピンチに立たされている自営業者を取り上げたい。
コロナ禍で自営業者に甚大な打撃
経済協力開発機構(OECD)の統計によると、2019年の韓国の自営業者の比率は24.6%に達するが、G7平均は12%である。たとえば、米国の自営業者の比率は6.1%で、カナダは8.2%、ドイツは9.6%、日本は10%、フランスは12.1%、イギリスは15.6%に過ぎない。
このように韓国で自営業者の比率が高い背景には、大企業などを辞めると再就職が難しく、生計を立てるため、カフェ、コンビニ、ベーカリー、食堂などを創業することが多いためだ。一方、20年の統計によると、昨年の韓国の月平均の自営業者数は553万1,000人で、一昨年と比べて7万5,000人(1.3%)が減少している。
新型コロナウイルスが発生してから1年半が過ぎた。自営業者は売上高が減少し、負債が増加して、苦境に立たされている。ワクチン接種が進むにつれて規制が緩和されることを期待していたが、午後6時以降は2人までしか集合ができないという厳しい措置が取られており、商売への大きな打撃を受けている。
日本では、お店の前に「準備中」という札をかけて、食材の準備などを行って営業を中止する時間帯があるが、今まで韓国にはそのようなブレイクタイムはほとんどなく、客が入れば、いつでも対応をする店が多かった。
ところが、猛暑の影響と、新型コロナウイルスのレベル4の規制で客足が途絶えた店では、人件費や電気代を節約するため、午後2時~午後5時までブレイクタイムを設ける店が増えている。加えて、ブレイクタイムがもともと存在しなった本屋、カフェなどの業種でもブレイクタイムを導入する店が出始めている。店によって時間帯は異なるが、このようなブレイクタイムを設けることで、不景気を何とか切り抜けようとしている。
コロナショックで自営業者は売上高が落ち込み、その対応に追われている。食堂、カフェ、学習塾、美容室、クリーニング屋などの自営業者の79%は、今年の上半期の売上高が前年同期比で平均23%減少している。
自営業者の売上高が減少したことによって、自営業者の負債は逆に増加の一途をたどっている。韓国銀行の統計によると、自営業者の借入額残高は昨年5月に初めて400兆ウォン(約38兆1,088億円)の大台を上回るようになった。先月の借入額残高は405兆5,000億ウォン(約38兆6,328億円)で、収入で固定費を賄えない自営業者は銀行からの借り入れで何とか帳尻を合わせていることがわかる。
このような状況のなか、これ以上踏ん張ることができず、閉業するお店も増えている。小商工人市場振興公団の全国17カ所のデータを分析した結果によると、今年の第2四半期の店舗数は222万900店舗と、昨年の第1四半期の267万3,766店舗に比べて約45万店舗が閉業に追い込まれ、1日あたり平均995店舗がなくなった。
とくに、カラオケ、ナイトクラブ、ネットカフェなどの打撃は深刻であり、およそ3万店舗が閉店している。四半期ごとに見た場合、今年の第1四半期の店舗の減少幅が最も大きかった。しかし、かろうじて生き残っていた店舗も、今回のレベル4の規制で甚大な打撃を受けており、先行きが真っ暗である。今年の第1四半期には、毎日2,000店舗が閉業したという統計がある。
(つづく)
※:就業者を1人以上雇用するか、就業者を雇用せず1人で事業を営んでいる小事業者のことをいう。 ^
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