2024年12月23日( 月 )

『脊振の自然に魅せられて』モウセンゴケとハッチョウトンボ(前)

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 脊振山系の秘めた場所に小さな湿原がある。湿原には里山では見かけない植物や昆虫などが生息している。脊振の湿原は知人から紹介を受け、この地に同行したのが始まりである。

 この湿原には夏から秋にかけてカキラン、オカトラノオ、サワヒヨドリ、オトギリソウなどの植物や珍しいトンボたちが生息している。

 貴重なトンボの代表がハッチョウトンボである。名前の由来は、発見されたのが「八丁」と付いた場所だったこととされている。

 ハッチョウトンボは日本で一番小さいトンボで、世界的にも最小のトンボとして知られている。

湿原に生息するハッチョウトンボ
湿原に生息するハッチョウトンボ

 体は赤く、羽を広げて止まっている姿は100円玉大である。早朝には朝露をいっぱいつけて植物の枝に止まっている姿が見られることもある。

 このトンボは小さいがゆえにあまり飛び回らないので、撮影には好都合である。飛び回ると体力を消耗するので、羽を休める期間が長いのではと筆者は思っている。

 今年6月11日、ワンゲルの後輩で「脊振の自然を愛する会」のHと「背振少年自然の家」の K女性所長を誘って湿原へ向かった。この湿原へ入るのは今年初めてである。  

 K所長は50代の男性職員 Aをともなっていた。K所長は何かと「脊振の自然を愛する会」の活動に協力的でありがたい存在である。

 この日は雨模様だったので、それぞれ長靴に長袖、アノラック装備であった。目的はカキラン観賞である。いつもはたくさん咲いているが、気候変動の影響なのか、わずかばかり花をつけている程度で姿かたちも良くなかった。日照りが続いたことと観賞の期日が早かったのかもしれない。それでもカキランは生息域を広げ、あちこちに株を増やしていた。「頑張ったね」と筆者はカキランたちに声をかけた。

 カキランの観賞が終わり、ハッチョウトンボの生息を目を凝らして確認するが、ハッチョウトンボは1匹も見当たらなかった。日照りが続き水も少なく、例年の半分くらいに干上がっていた影響もあるかもしれない。

 水の少ない湿地でモウセンゴケも何とか生命を保った状態で元気がなかった。いつもは昆虫を捕食するネバネバとした消化腺毛に露をつけ、生き生きとしているのに。

 「背振少年自然の家」の職員 Aが重い体重で沼地に足を入れた。体重で長靴がほとんど埋まっていた。そして長靴をはいた足は沼から出そうとしてもがいていた。初めての体験なので無理もない。やっと沼から脱出でき、泥だらけの長靴でしばらく歩いていた。

(つづく)

2021年8月16日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行

(後)

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