2024年12月23日( 月 )

【衆院選2021】争点は“コロナ禍をどう収束させるか” 福岡2区・鬼木誠氏

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 福岡2区は、福岡市南区、中央区、城南区などの福岡市都心部が選挙区。選挙区内には福岡市に支店を持つ企業の転勤族も多く住み、「次回選挙までに住民の3分の1が入れ替わる」とされる。福岡都市圏にあって、地盤を強固にすることが特に難しい地域だ。そのなかでも中央区はマンション住民が多く、「有権者の顔が見えにくい」(元衆院議員談)という特長をもつ。都市住民の心に迫る選挙戦をどう展開するのか、菅内閣の支持率が低迷するなかで、現職で自民党所属の鬼木誠氏(48)は危機感を募らせている。

医療崩壊を防ぐことが最優先課題

 ――コロナ禍真っ只中での東京オリンピックでした。開催の是非については、自民党内でも意見が分かれていました。

 鬼木誠氏(以下、鬼木) 私自身は、オリンピックを開催できて良かったと思います。世界中がパンデミック(感染爆発)に襲われているなかで、日本だからこそ開催できたと思いますし、世界中に勇気と感動を与えることができました。オリンピックに向けて努力を重ねてきたアスリートの姿を見て、国民が勇気づけられたのではないでしょうか。

 一方で、オリンピックを開催したことで新型コロナウイルスの感染を拡大させたという見方もあります。オリンピックがまったく無関係だとは思いませんが、私は感染拡大の最大の原因はデルタ株の流入だと思います。さまざまな不幸が重なった結果、現状のような感染拡大を招いてしまったのだろうと。

 ――菅内閣の支持率が低迷を続けています。官房長官時代は「最強」とまで呼ばれた情報統制力、情報発信力がうまくいっていないのでは。

 鬼木 たしかに、情報発信が十分でないところはあると思います。国が何を優先しているのか、さらに個別の政策が何を目的とするものなのか、きちんと伝われば理解される部分はあると思うのです。たとえば緊急事態宣言などの行動抑制は国民の命を守ることと感染拡大を防いで医療崩壊を防ぐことが目的です。これは当然のことではあるのですが、人命を救うことを最優先した結果の「宣言」なのだということが国民に伝わっていないような気がします。

 いま国民は「感染抑制したい」派と「経済を動かしたい」派の極端な二項対立に陥っており、国論が真っ二つに分かれているような状態です。だからこそ、なぜ経済を一部止めてまで感染抑制する必要があるのかを、より丁寧に国民に説明する必要がありますが、その部分ができていない。現時点の優先順位は何なのか、それをきちんと説明して理解してもらって、さらに協力してもらうことが必要ですが、そういう意味でのリーダーシップが不足しているのは否めないでしょう。

 ――コロナ禍対策としてなにを重要視すべきでしょう。

 鬼木 デルタ株は非常に感染力が強いため急激に感染者が増えており、東京を中心とする関東圏では病床がひっ迫する事態になっています。したがって、医療崩壊によってコロナ患者さんを十分に治療できなくなることに加え、他疾患の患者さんも治療を受ける機会を奪われて、最悪の場合には命を落とすことも考えられます。現在の局面では感染拡大を抑え込むことを最優先すべきで、そのための手段が緊急事態宣言だったということです。

 ――緊急事態宣言が必要なことはわかるものの、回を重ねるごとに「緊急事態」度が伝わりにくくなっている。とくに今回の宣言は、前回までと比べて明らかに人流(人の動き)への影響が少ない。本当に効果があるのか、もはやロックダウン(都市封鎖)すべきとの意見もある。

 鬼木 ロックダウンを求める声があることは承知しています。しかしロックダウンは緊急事態宣言以上に厳しい行動規制が行われるため経済への打撃も大きく、国民の間でこれまで以上に二項対立が生まれてしまうリスクがあります。簡単に踏み込めない領域であるうえに、強い私権制限が現行憲法上どこまで許されるのかなども十分に議論されていないと思います。

選挙の争点は「コロナ対策」の1点

鬼木 誠 氏
鬼木 誠 氏

 ――4期目への展望。訴える政策は。

 鬼木 次期総選挙は4年間の任期を最後まで務めさせていただいたという意味では、日本や福岡のために私が何をしてきたのかをお伝えする選挙になる予定でした。もちろん、そういった実績もお伝えしていくのですが、やはり国民の皆さんの関心事はコロナをどう抑えるのかということにあり、さらに経済をどう復興させるのかということに強い関心をもっています。選挙の争点はおそらく「コロナ対策」の1点、シングルイシューの戦いになるでしょう。

 では、コロナ禍をどう収束させるのか。私は、国内においてワクチンと治療薬を開発することなくして収束は難しいと考えています。それができなければ拡大と抑制を繰り返すことになってしまう。国産のワクチンと治療薬の開発を進め、集団免疫を獲得させてコロナが重症化しない状況をつくることができれば経済を動かすことができます。

 ――経済政策では何を重視しますか。

 鬼木 コロナ禍の間、国民の皆さんはかなりの行動規制を受けており、抑圧された需要がマグマのように溜まっているとみることができます。これが解き放たれれば一気に消費意欲が高まることが予測されますので、そこに呼び水・インセンティブを与えます。「GOTOキャンペーン」はもともとそういう政策だったのですが、始めるタイミングを間違えると感染拡大を繰り返すことになります。集団免疫の獲得を条件とするなど、どこでGOサインが出せるのかという見極めが大事になります。

 ――福岡2区はいつも難しい選挙になりますね。

 鬼木 たしかに選挙区独自の難しさに加え、新型コロナ禍が拡大すると内閣支持率が落ちるという明らかな相関関係があります。人々の気持ちも苛立っているのか、街頭に立つだけで苦情をいただきます。「緊急事態宣言下じゃないか」「不要不急の外出はだめだ」と、かなり厳しい声もいただきました。それだけ行動抑制のお願いは国民の間に重く響いているのでしょう。

 ――事前の情勢分析では、立憲民主党の稲富修二氏(51)がリードしているという見方が大勢でした。しかし週刊誌報道などが影響して鬼木さんが並んだという声も多くありますね。

 鬼木 数字的な裏付けはありませんが、内閣支持率を考えると逆風なのは間違いありません。野党共闘に対する危機感もあります。前回選挙で日本共産党さんに入った1万7千票の行先は当然、立憲民主党だろうと。稲富さんは強いですから、気を引き締めていかなければなりません。

 ――福岡経済園の振興策は。

 鬼木 福岡は潜在的成長力をもった、日本でも数少ない元気なまちです。最もわかりやすいのが地価で、コロナ禍にあっても土地の値段が下がっていない。珍しい地域だと思いますね。今後、天神ビッグバンや箱崎・九大跡地の開発計画に加え、民間需要も旺盛です。福岡が伸びる余地はまだまだ残されていますが、その条件となるのが人の動きです。商業都市ですから、人が動いて消費を呼び起こさなければならない。インバウンドや出張もなくなりましたから、そのあたりを刺激したいですね。アフターコロナでは福岡の魅力を積極的に発信して人を迎え入れたいと思います。

【まとめ:データ・マックス編集部】


〈プロフィール〉
1972年福岡市生まれ。福岡市立当仁中学校から私立ラ・サール学園高校(鹿児島市)を経て九州大学法学部卒。西日本シティ銀行勤務の後、2003年に30歳で福岡県議会議員初当選。県議を3期10年務めた2012年12月、第46回衆議院議員選挙で福岡2区(福岡市中央区、南区、城南区)から自民党公認候補として出馬して初当選。現在3期目。2015年10月、環境大臣政務官(第3次安倍内閣時)。

関連記事