【横浜市長選】菅首相の不人気ぶりが露呈、“菅降ろし”が本格化
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菅政権への批判の嵐が市長選を直撃
菅義偉首相(神奈川2区=横浜市西区・南区・港南区)がお膝元の横浜市長選で惨敗を喫し、内閣支持率が3割を切る不人気ぶりが地元でも可視化された。自ら全面支援をした盟友の小此木八郎・前国家公安委員長が、実質的な野党統一候補の山中竹春・元横浜市立大学教授に約18万票もの大差で敗れたのだ。
“全力投球”の菅首相に呼応して自民党の横浜市議36名中30名と県議全員が小此木氏を支援、自主投票の公明党議員も応援に回るという自公推薦に近い盤石の態勢だったのに、コロナ感染爆発を招いた菅政権(首相)への批判の嵐が市長選を直撃、無名の野党系候補に抜き去られてしまったのだ。
「菅首相では選挙は戦えない」と烙印を押される“菅降ろし”を阻止すべく、横浜市長選では考えられる方策を繰り出したうえでの敗北だけに事態は深刻だ。
「横浜へのカジノ誘致取りやめ」を掲げた小此木氏の出馬表明で、官邸御用らの選挙プランナー・三浦博史氏の得意技である「争点隠し(潰し)選挙」を展開することができたが、横浜へのカジノ誘致を断念することで、東京が本命化して不仲の小池百合子知事にカジノ利権を譲ることになる苦渋の決断でもあった。
犬猿の仲の小池知事がカジノ利権を手にする悔しさを押し殺して、市長選勝利を優先したともいえる。
自公推薦に近い盤石の選挙態勢も見かけ倒し
側近の和泉洋人・首相補佐官(映画『パンケーキを毒見する』にも登場)が建設業界に小此木氏支援を要請。坂井学・内閣官房副長官も連日現地でビラ配りをする一方、自らも推薦状を各種団体に出すなど自民党得意の企業団体選挙も進めた。
しかし、通常なら時の政権と足並みをそろえる地元の経済界が造反した。カジノ推進の旗を降ろさなかった林文子市長支援に回り、菅首相をペテン師呼ばわりする「(株)キタムラ」北村宏社長も現れた(8月20日の本サイト記事「“菅降ろし”の狼煙で『IR取り止め』小此木氏に逆風、山中氏リードか」で紹介)。牙城のはずのお膝元で、一足早く菅離れが進んでいたのだ。
自公推薦に近い盤石の選挙態勢も見かけ倒しだった。自民党横浜市議36名中30名(83%)が小此木氏支援、残り6名(17%)が林氏支援と4倍以上だったのに、両者の得率は小此木氏が21.6%に対して林氏が13.1%と約1.7倍しか差がつかなかった。菅首相の号令に従うふりして、大して動かなかった市議もかなりいたことを物語る。形式的支持に止まる可能性も北村社長が前出の記事で指摘していたが、その見立て通りの結果となったのだ。
こうして横浜市長選では、通常では考えられない奇妙な現象が起きた。1つは、時の最高権力者のテコ入れが追い風どころか逆風になったこと。もう1つは、鶴の一声で盤石の選挙態勢が築かれたと思ったら張りぼてにすぎなかったことだ。いずれも菅首相の不人気ぶりを物語るものだが、オウンゴールのような敵失が劣勢だった山中氏が小此木氏を抜き去った主要因であったことは間違いないのだ。
菅首相続投は次期総選挙での政権交代を招きかねない
「横浜市長選での勝ちパターンを今秋の総選挙でも繰り返したい」と野党が考えるのは当然だ。「菅首相のままで総選挙を戦いたい」ということだが、そんな本音が飛び出したのは投開票日の8月22日。ハマのドンこと藤木幸夫会長が当確後の挨拶で、「菅氏も今日当たり辞めるのではないの。電話がかかってきたら『辞めろ』と言います」と述べて爆笑を買った直後、司会役の青柳陽一郎衆院議員(立民神奈川県連幹事長)はこう言い放って笑いを取った。
「藤木会長、菅総理から電話があったら『辞めるのは衆議院選挙の後でいい』と」
菅首相続投は野党には好都合でも、自民党にとっては次期総選挙での政権交代を招きかねない最悪の状況。不人気ぶりが露わになった横浜市長選で菅降ろしが本格化するのは、落選を最も恐れる議員心理からして至極当然のことなのだ。9月実施で日程が決まった自民党総裁選をめぐる自民党の動向から目が離せない。
【ジャーナリスト/横田 一】
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