【コロナで明暗企業】大塚家具と匠大塚~大塚家具はヤマダの完全子会社(前)
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(株)大塚家具は8月30日付で東証ジャスダックを上場廃止になり、9月1日付で家電大手(株)ヤマダホールディングス(以下、ヤマダHD)の完全子会社となる。経営方針をめぐる創業家の対立が注目を集め、大塚久美子氏が父親・勝久氏を追い出すかたちで経営権を握ったが、業績は悪化。ヤマダHDの傘下に入り、創業家と大塚家具のとの資本関係はなくなった。それを見届けた父・勝久氏は、自ら立ち上げた匠大塚の出店攻勢に乗り出した。
創業家と大塚家具の資本関係はなくなった
(株)大塚家具(東京・江東区)は7月29日、東京・江東区有明の東京ファッションタウンビルで定時株主総会を開き、(株)ヤマダホールディングス(群馬県高崎市、以下、ヤマダHD)の完全子会社になる議案が98.88%の賛成比率で可決された。大塚家具株1株にヤマダHD株0.58株を割り当てる。
大塚家具の株式は売買最終売買の8月27日は前日比1円高の276円で取引を終え、上場企業の歴史に幕を閉じた。
大塚家具では、きめ細やかな接客を売りにした高級家具路線の大塚勝久氏と、幅広い客層の品ぞろえで路線転換を図る大塚久美子氏が対立。2015年の株主総会で、久美子氏の改革路線が支持され、勝久氏は会社を去った。
かつて筆頭株主だった勝久氏は、15年に新たな家具販売会社匠大塚(株)(埼玉県春日部市)を立ち上げ、16年末までにすべての大塚家具株を売却。直近では、ヤマダHDが51.83%をもち、久美子氏が役員を務める資産管理会社(株)ききょう企画は0.74%、他の創業家の保有割合は0.78%だ。いずれも、株式交換によりヤマダHDが株主になる。創業家と大塚家具の直接の資本関係は消滅した。
久美子氏の高級路線の否定が裏目に出る
大塚家具は1969年創業。メーカーから直接仕入れた品ぞろえや、入店時に会員登録を求めたうえで店員が付き添う接客などを特徴に、高級家具店として成長した。しかし、低価格路線の(株)ニトリ(北海道札幌市)やスウェーデン発祥の世界的家具店イケア・ジャパン(株)(千葉県船橋市)が台頭すると、経営方針をめぐって創業家が対立した。
創業者の勝久氏は高級路線を続けようとしたが、娘の久美子氏は、自由に見て回れる店への転換やネット通販などを進めようとした。
15年の株主総会で相手を経営から外す取締役選任案を出し合い、委任状争奪戦を繰り広げた。この総会では、久美子氏の改革路線が支持された。
父親・勝久氏を追い出した久美子氏は、勝久氏の一丁目一番地といえる、担当者が付き添う接客方法をやめた。高級路線に偏ったイメージの払拭を図るため、久美子氏は、中価格帯にしてニトリやイケアと勝負する路線に変更した。勝久氏は「ニトリさんやイケアさんを意識してしまったら間違える」と危惧していた。百戦錬磨の商売人である勝久氏の予感は的中した。高級路線の否定は完全に裏目に出た。
業績は低迷。19年12月にヤマダHDの傘下に入ってからも、業績は振るわず、久美子氏は経営責任を取って20年12月に社長を辞任した。
大塚家具と(株)ニトリホールディングス(以下、ニトリHD)とイケア・ジャパン3社の業績推移を比較すると、大塚家具の1人負けだったことがわかる。大塚家具は久美子氏が社長に就任してから、一度も黒字になったことがない。こんな業績では、ニトリHDやイケアは大塚家具を競争相手として問題にしていなかったのではないか。久美子氏は経営者失格である。
勝久氏は、高価格と低価格という路線については「両方はできない。どちらかを選ぶしかない」とし、久美子氏の路線は無理があったとの考えを示している。
(つづく)
【森村 和男】
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