2024年12月22日( 日 )

【コロナで明暗企業】大塚家具と匠大塚~大塚家具はヤマダの完全子会社(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 (株)大塚家具は8月30日付で東証ジャスダックを上場廃止になり、9月1日付で家電大手(株)ヤマダホールディングス(以下、ヤマダHD)の完全子会社となる。経営方針をめぐる創業家の対立が注目を集め、大塚久美子氏が父親・勝久氏を追い出すかたちで経営権を握ったが、業績は悪化。ヤマダHDの傘下に入り、創業家と大塚家具のとの資本関係はなくなった。それを見届けた父・勝久氏は、自ら立ち上げた匠大塚の出店攻勢に乗り出した。

大塚家具は再び高級路線へ回帰

ヤマダ電機 ヤマダHDの完全子会社となった大塚家具は、(株)ヤマダデンキの家電などと組み合わせ、中・高価格帯の家具販売を強化する方針だ。株主総会で、三嶋恒夫会長兼社長(ヤマダHD社長)は「大塚家具というブランドを守らないといけない」と、再び高級路線に戻ると強調。一部にある、ヤマダカグに社名を変更する観測を否定した。

 すでに大塚家具の店舗はヤマダデンキの高級家電と一緒に展示販売を行っている。7月には、ヤマダがノウハウをもつリフォーム事業を大塚家具も東京・有明のショールームで開始。家具配置の視点からの内装デザインやヤマダの家電などを組み合わせた、住空間全体の提案で受注につなげる。家具も、新ブランドを増やして販売増を図る。

 一方、大塚家具のライバル、ニトリHDは「35期連続」の増収増益を確実にすべく、2021年中に家電製品の取り扱いを前年から4倍に増やす。PB(プライベートブランド)で大手メーカー品に比べて4割前後安いファミリー層向けの白物家電を拡充する。今夏に400L前後の大容量の冷蔵庫を新たに投入。液晶テレビも、43インチや50インチの大画面タイプをそろえた。洗濯機は大容量(10kg以上)の扱いを始めた。一部の店舗で扱っていたエアコンも全国販売に切り替えた。家電の売り場も拡大する。5,000m2以上の大型店舗のうち家電の売上が大きい約50店舗を改装する。

 家電の王者ヤマダHDは大塚家具を手に入れ、家具の王者ニトリHDは家電に進出する。双方の本拠事業に殴り込んだのだ。ガチンコ対決—ヤマダとニトリが全面戦争の火ぶたが切って落とされた。

勝久氏が率いる匠大塚は百貨店に出店

 大塚家具の創業者である大塚勝久氏が率いる匠大塚は7月22日、東武百貨店池袋本店(東京・豊島)に新店をオープンした。5階の紳士服フロアに1,200m2の売り場を設け、ソファ、ベッド、ダイニングテーブル、イス、絨毯、カーテンなど国内外の高級家具・インテリアを1000点以上そろえた。

 匠大塚は、大塚久美子氏との経営権争奪戦に敗れた勝久氏が、15年7月、創業地である埼玉県春日部市で設立した。会長が勝久氏、社長が長男の勝之氏である。

 コロナ禍を機に百貨店への出店攻勢に出た。20年7月東急百貨店吉祥寺店(東京都武蔵野市)、21年4月東急百貨店本店(東京・渋谷)、5月には金沢市の大和香林坊店に出店。そして7月に東武百貨店池袋本店だ。わずか1年で、4店を出店した。百貨店の店舗は400m2以下の小型店ばかりで、東武池袋店は初の大型店だ。

 オープンに先立ち、両社は共同で会見した。報道によると、(株)東武百貨店(東京・豊島区西池袋)の池袋本店はこれまで催事で何度か匠大塚と取り組んできた。執行役員の川村徹・賃貸事業部部長は「催事での反響が大きかった。常設の大型店よって百貨店に来なかったお客さまを呼び込みたい」として、紳士服売り場のあるスペースに誘致した。

 勝久会長は「百貨店は前の会社(大塚家具)と共通のお客さまが多い」とポテンシャルを強調する。家具・インテリア売り場を自前で運営できる百貨店は少なくなっており、高級家具の商品の企画から販売まで仕切るMDに強い匠大塚は魅力的に映る。

 長男の勝之社長も「今は全国の百貨店から声がかかっている。社内の体制が十分でないため、すぐに出店拡大とはいかないが、念願の大型店である池袋東武店で実績をつくり、今後につなげたい」という。

 池袋東武店6階には「ニトリ」も入っている。勝久氏は高級家具路線を守っているから、低価格路線のニトリとはまったく競合しないという。

(つづく)

【森村 和男】

(前)
(後)

関連記事