スターバックスは銀行のライバル?(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
韓国・現代経済研究院の統計によると、2018年の韓国人の1人あたりのコーヒーの年間消費量は353杯で、世界平均のコーヒーの年間消費量132杯の約2.7倍も多くのコーヒーを飲んでいる。まさに「コーヒー天国」である。
スターバックスの躍進
韓国スターバックス1号店は、1999年7月27日に開店したソウルの梨花女子大前の店舗であった。韓国のスターバックス・コリアは、韓国スーパーの最大手であるEマートとスターバックスコーヒー・インターナショナルが50%ずつ出資して設立された。スターバックス・コリアはその後成長を続け、売上高では全世界で5位となるほどに急成長した。スターバックスは韓国で若者だけでなく、老若男女が楽しむ文化空間となったためだ。
Eマートは7月末、4,741億ウォン(446億円)を追加投資することで、株式を17.5%買い増して、スターバックス・コリアの持ち株を67.5%保有することとなった。韓国のコーヒーチェーン店で1位のスターバックス・コリアの昨年の売上高は1兆9,284億ウォン(約1,823億円)、営業利益は1,644億ウォン(約155億円)であった。2位はA TWOSOME PLACE(5651億ウォン、約532億円相当)で、3位はEDIYA COFFEE(5,354億ウォン、約504億円相当)で、4位はMEGA COFFEE(2,787億ウォン、約262億円相当)で、5位はHOLLYS COFFEE(83億ウォン、約7億円相当)の順である。
スターバックスの決済革新
2014年に、全世界のスターバックスのなかで韓国で最初に導入された「サイレントオーダー」は、売り場が混雑していても列に並ぶことなくスマートフォンで注文、決済ができて、店舗ではコーヒーを受け取るのみという便利なサービスである。「サイレントオーダー」を利用するためには、前もってお金をチャージしておく必要があるが、注文から決済まで30秒もかかないため便利だ。
韓国はクレジットカードの使用が多いことでも有名でもあるが、「サイレントオーダー」が導入されたことでキャッシュレス化が進み、スターバックス・コリアの6割以上の店舗ではキャッシュを扱っていないという。「サイレントオーダー」は人気を博し、21年5月までの累積注文件数は2億件を上回った。「サイレントオーダー」の月平均注文件数も約20万件で、全注文件数のうち27%を占める。加えて、「サイレントオーダー」の成長スピードも加速しているという。
一方、「サイレントオーダー」を利用するために顧客がスターバックス・コリアに預けた金額が1,801億ウォン(約169億円)に及ぶことに注目が集まっている。これらは利子もなく経営上活用できる資金となるため、スターバックス・コリアにとって大きなプラスとなっている。
米国では、「サイレントオーダー」で預けられた金額が12億ドル(約1,316億円)に上るだろうと推測する分析もある。全世界で預けられた金額は20億ドル(約2,194億円)に膨らむだろうと推測されているが、スターバックスは明確な金額を明らかにしていないため、あくまでも推測の域を出ていない。
スターバックスはいつでも自由に活用できる莫大なキャッシュを保有しているため、銀行もスターバックスの一挙手一投足に注意を払い、莫大な資金を保有したスターバックスが今後どのような動きに出るのかと神経を尖らせている。銀行は、新しいコーヒー文化を誕生させたスターバックスが多くのファンと莫大な資金力を武器にして、銀行のライバルになるのではないかと戦々恐々としている。
日常生活がデジタル化されることにより、銀行にも大きな変化の波が押し寄せることが予見されるなか、銀行をはじめ業界の注目がスターバックスの動きに集まっている。
(了)
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