『脊振の自然に魅せられて』福岡近郊の山歩き、展望が最高の鐘撞山(後)
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8月はしばらくぶりの山歩きである。途中まで先輩 Tについて歩いていたが、暑さもあり、低山といえ登りが続く山道にへばってしまった。
止まっては腰をかがめ一息つく。これを何度か繰り返した。大学1年時の新潟・飯豊連峰の夏合宿もきつく、登りの山道で何度も腰をかがめては一息ついていた。学生時代のワンゲル活動と思いが重なる。
登るにつれ、目の上の樹木の隙間が明るくなってきた。山頂が近い。最後の一歩を踏みしめると目の前にすばらしい展望が開けた。眺望を遮るものはなかった。山頂までの山道を少し進むとベンチに先輩Tが待っていた。「へばったばいね!」。立派なベンチとテーブルは贅沢といってよいほどだった。山頂の左方に糸島半島から可也山、右手に今宿の街並み、能古島が間近に見えた。
遠くに目をやると、入道雲の下に福岡市東区のアイランドパーク、立花山が霞んで見えていた。低山ながら、こんなすばらしい場所があったのかと感動を覚えた。
天然の桔梗が1本のみある場所を先輩 Tに教えてもらい、マクロレンズで撮影した。毎年1本だけ花を咲かせるらしい。「盗られんのけば、よかばってん」と彼は1本の桔梗が生き延びてほしいと願っていた。毎年この地で咲くとのこと。
小さめのサーモスに、冷えたスポーツドリンクを入れて持参していた。冷えたスポーツドリンクは喉を潤し、胃のなかに流れていった。そして握り飯を頬張った。ベンチですばらしい展望を楽しみながら静かな時間を楽しんだ。
しばらくすると、別の登山口からきたトレイルランニングの男性が汗びっしょりで通りすぎて行った。
その後、古いザックを背負った男性が1人登ってきた。先輩Tは「良かザックをもっとるな」と声をかける。彼の背負う古いザックは私の知らない銘柄であった。先輩Tは登山学校をやっていたらしい。そのときの受講生だったらしく、顔に見覚えがあると言っていた。
彼は久留米市からきていた。鐘撞山から東に脊振山、太宰府が展望できた。太宰府政庁時代、外国の不審船がきたことを狼煙で太宰府に知らせていた場所でもある。
30分ほど山頂での休憩を終え、登ってきた登山道を下った。里山の一軒家前にピンクのナツズイセンの花が1本咲いていた。ナツズイセンは我々2人を静かに見送ってくれた。そこから5分で叶岳駐車場に到着した。そして自宅へと向かった。
室見川堤防の車道から夏の光景が広がり、前方に見える福岡タワー上空の青空には入道雲が夏空の絵を描いていた。
先輩Tは私の自宅から1㎞のところにあり、用事があれば自転車で訪ねている。
飯盛山から高地―叶岳周辺は低山ながら福岡市西区を縦走する山が連なり、「油山市民の森」と親しまれている油山と違った魅力ある山地で、山好きの老若男女が訪れている。開けた場所から福岡市街地や油山、脊振山が展望できる。
自宅から各登山口まで自転車で行ける距離にある。喜寿も迎えたので、脊振山系に次ぐ山として歩きたいと思っている。
(了)
2021年9月5日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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