2024年11月19日( 火 )

歩車分離式信号機の導入促進と克服すべき課題(後)

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運輸評論家 堀内 重人 氏

富山市の取り組みが参考に

富山ライトレール イメージ 公共交通を充実させる方法として、鉄道が通っている地域であれば、駅を増設したり、運転本数を増加したりする方法が考えられる。各自治体も、駅周辺に公共施設や高齢者用の住宅を誘致するなど、自家用車がなくても生活が成り立つような環境へ変える必要がある。

 それがうまく行っている事例として、富山市が挙げられる。富山市は、存続が危惧されていたJR西日本の富山港線を富山ライトレール(株)として活性化させることに成功した。

 駅を増設するとともに、運行本数を従来の1~2時間に1本から、毎時15分間隔へと大幅に増発。駅前に高齢者用の住宅を整備したり、駅に駐輪場を整備して自転車と公共交通を乗り継げるようにしたりするなど改善を行った。さらに、終点の岩瀬浜駅では鉄道と路線バスの乗り継ぎのロータリーを整備し、路面電車を下車すると対面で路線バスへ乗り継げるように改善した。

 このほか、富山市の取り組みとしては、富山地方鉄道の軌道線の環状化や、富山ライトレールと富山地方鉄道軌道線との相互乗り入れ、JR高山本線の富山口の増発などが挙げられる。富山ライトレールと富山地方鉄道軌道線の相互乗り入れでは、JRとあいの風とやま鉄道の高架下に乗り入れるようになったため、北陸新幹線を下車した人たちに対する2次交通の充実に繋がった。

 富山市が公共交通の充実に熱心に取り組むのは、降雪が影響している。郊外へ低密度で広がる都市構造では、除雪費用が嵩み、高コストな都市構造となってしまう。そこで、公共交通の駅や停留所を中心としたコンパクトな都市構造への転換を図ろうとしている。

京丹後市の路線バスも優良事例

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 鉄道が通っていない地域であれば、路線バスを活性化させる方法を模索する必要がある。地方の路線バスは利用者の減少などにより、公的補助で路線を維持しているのが実情であるが、同じ欠損補助を行うのであれば、少しでも利用者を増やす方法を模索する必要がある。

 優良事例として、京都府京丹後市の路線バスが挙げられる。従来の700円の運賃で2人しか乗車しない路線バスを、200円の運賃で7人が乗車する路線バスへと転換させた。バス事業者へ入る収入は同じで、欠損補助の金額も同じであるが、後者の場合は高齢者などの外出が促進されるため、地域での消費が活性化するだけでなく、健康な生活が維持されるために医療費の削減にも貢献する。

 地方で路線バスの利用者の減少に歯止めがかからず、車しか選択肢がない状態になる要因として、運賃の割高感だけでなく、運行本数の少なさも挙げられる。前編で静岡県・宮崎県・群馬県では、人口10万人あたりの交通事故の発生件数が多いと述べたが、静岡市や浜松市などの政令指定都市圏、宮崎市・前橋市・高崎市などの県庁所在地、それに準じた都市圏、人口5万人以上の都市圏などでは増発も行って、自家用車から路線バスへのモーダルシフトを推進する必要がある。

 地方へ行けば公共交通が脆弱であるため、70歳を超えても自家用車を運転せざるを得ないのが現状であり、高齢者が起こす事故の増加も顕在化している。高齢者の免許返納を促進させるためには、公共交通の充実や、駅前などに加えて高齢者用の住宅の整備を図り、自家用車がなくても生活が成り立つ環境を整備する必要がある。

 さらに、歩車分離式信号機を導入するには時間と金も要する。政府も財政難を理由に、その予算を減らす傾向にある。

 通学時の子どもだけでなく、高齢者や障がい者が横断歩道を横断する際の事故を減少させる必要があり、シニアボランティアによる安全対策の強化も実施しなければならない。シニアボランティアによる横断歩道などの見回り強化は、子どもを凶悪犯罪から守るうえでも重要といえる。

 地方で交通事故を減らすためには、歩車分離式信号機の完備を待つのではなく、まずは自家用車の利用を減らし、公共交通へのモーダルシフトを推進することから実施しなければならない。

(了)

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