アフガニスタンレポート これからが本当の国づくり(前)
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「Web Afghan in JAPAN」 編集長 野口 壽一 氏
米軍が完全撤退したアフガニスタン。タリバン政権の下、アフガニスタンはどのような方向へと進むのだろうか。現地の状況に精通している「Web Afghan in JAPAN」編集長・野口壽一氏に寄稿してもらった。
誰もが幸せを求めて生きている
Net IB Newsでは、中村哲医師の偉業について何度も記事が掲載されています。読者の皆さんは、アフガニスタンについてよくご存じと思われます。アフガニスタンは現代世界において、考えられるすべての不幸を背負ったような国でした。
そんななか、中村さんは1980年代初頭から続く40年戦争を体感してこられました。風に乗って漂う硝煙のきな臭い匂いをかぎ、空から降ってくる爆音を耳にしながら、アフガニスタンとパキスタンで難民や住民へ医療を施し、飲料水、生活用水、農業用水を確保するための灌漑事業をされました。
難民化して逃げてきた人々だけでなく、乾燥してやせた土地にしがみつく農村部では飢餓が常態化していました。山岳部や農村部だけでなく都市部でさえ教育や医療福祉の提供がままならず、衣食住に事欠く多くの住民を抱えた国でした。自然条件や社会条件が厳しいためにそうなったわけではなく、打ち続く戦乱こそが原因でした。
そのうえ、90年代の10年間を除いて異教徒の外国軍が国土を支配する異常な事態を含み、80年から2021年までの40年以上も戦乱が続いたわけです。ところが、外国軍が支配していた30年間よりも、アフガン人同士で戦争した90年代の10年間のほうが国土の破壊は凄まじかったと言います。
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【中村医師追悼企画】活動する場所は違えども 先生のご遺志を継いでいきたい―(前)この戦争を「大国による勢力争い」「国内の権力争い」「大国の被害者アフガン人」と論じる向きが多いのですが、本当にそうだったのでしょうか。
表面的にそう見えることは否定できません。しかし、実は意外にも事はそう単純ではなく、むしろ、中村さんをはじめ多くの国際組織、NGO、NPOの人々が現地の人々と一緒になって命懸けでやってきた人道活動の目的である福祉をすべての国民が受けられるようにするのが、戦争をしていた当事者たちにとっても究極の目的だったのではないでしょうか。少なくとも建前では。つまり、「目の前の不幸を直接個別的に救う」のか、それとも不幸の原因が社会の在り方にあるとして「原因を政治的に取り除くことによって社会全体を救う」と考えるかの違いがあるだけだったといえないでしょうか。外国勢力だけでなく、むしろアフガン人こそがもっと切実に「幸せ」を希求して互いに戦っていたとはいえないでしょうか。政治闘争が武力闘争となって内戦となり、その結果、個々の社会成員が不幸を背負わされてきたのがこの40年でした。決着がつかなければ社会そのものの破滅、共倒れになりかねないほどの危機が進行していました。つまり、アフガニスタンは甚だしい本末転倒に陥っていたわけです。
(つづく)
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