2024年12月22日( 日 )

「辺野古見直し論」への対応でわかる維新の正体

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文書通信交通滞在費の問題が急浮上

 総選挙が終わった途端、自民党以上に改憲に前のめりになって“第二自民党安倍派”のような存在に豹変した「ゆ党」こと維新が、税金の無駄撲滅でも政権補完勢力ぶりを露わにした。

 国会議員に支払われる文書通信交通滞在費(月100万円)を大問題と指摘する一方、税金をドブに捨てているに等しい辺野古埋め立て(約9,300億円)については見直しを声高に訴えようとしていない。政権が進める国家的事業に対しては、ケタ違いに巨額の無駄であっても斬り込まない二枚舌的対応をしているともいえる。

 10月31日に初当選した小野泰輔衆院議員が、10月分の文書通信交通滞在費が満額100万円支払われていることをSNSで指摘したのは11月12日。これに維新副代表の吉村洋文・大阪府知事が翌13日にツイッタ―で反応、「国会の非常識」「維新が突破を」と呼びかけたのだ。

鈴木宗男議員の辺野古見直し論

 対照的に見向きもされていないのが、同じ維新の鈴木宗男参院議員の辺野古見直し論。11月7日にネットでも同時配信された「札幌大地塾」(支援者向けの集会)で鈴木氏は、辺野古埋め立てに関する質問を受けて、予定地の地盤が悪くて新基地の滑走路が機能するのかと疑問視、事業費が約1,000億円で済む陸上案(代替案)も紹介していたのだ(以下はその概要)。

「札幌大地塾」で語る鈴木宗男議員

 ――沖縄で地上戦があり、多くの方が亡くなりました。北海道から1万人の兵士が行ったと聞いています。今回、辺野古埋め立てに(地上戦があった)南部の方の土をもっていく話を聞いているが、わかっていることがあれば教えていただきたい。

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 鈴木宗男氏 北海道の皆さんに大事な話なのです。先の大戦で地上戦が行われたのは沖縄だけです。20万人が亡くなっています。そのうち16万人は沖縄県の軍人、軍属と民間人です。沖縄県民が一番大きな犠牲を受けた。次に多いのが北海道人なのです。何とその数、1万2,000人です。

 (中略)私は基本的に辺野古の海の埋め立てはしない方がいいという考えです。なぜかというと、非常に地盤が悪い。お金がかかりすぎる。それだけでなく、あの海はジュゴンがいるわけなのです。あそこを埋め立てるのは基本的には考えてもいなかったし、反対だ。そもそも「普天間を名護に移す」ともって行ったのは私ですから。私は本当は、(辺野古新基地予定地に隣接する米軍基地の)「キャンプ・シュワブ」が名護市にあって、山を砕いて滑走路をつくって、そこで普天間の機能を移設するという(陸上案の)考えだった。

 これまた、私が逮捕されて、海を埋め立てる案になった。私は「砂利利権」だと思います。(埋め立てに)砂利を大量に使うものですから。砂利利権でああいう決定(陸上案から海上埋め立て案への変更)になった。

 やったのは小泉(純一郎・首相)です。あそこの埋め立ては今でも疑問視しているのです。もう9,000億円を使っています。私のときの考えなら(陸上案なら)1,000億円でできた。当時の計画は3,000億円ですが、9,000億円になっている。恐らくもっとかかる。

 地盤も海の下ですから逆に(地盤沈下で)沈んだりする。(辺野古新基地の)滑走路が機能するのか疑問ですから。私はあそこ(辺野古海上)にもっていくのは反対なのですけれども、昨日(11月6日)も松野官房長官が行っていますけれども、私はもう1回考え直す手立てはないのかと考えています。

 いわんや、あの戦いがあって、そこで十分な遺骨収集もされなくて、土のなかに混じっている。その可能性のある土砂をもっていくのは考えられない。(中略)人骨が混ざっている疑いがある土まで運んで(埋め立てを)やるのは反対だし、すべきでないというのが私の考えです。

なぜか鈴木議員の案には反応せず

 たしかに松野博一官房長官は11月6日、埋め立て中止を求める玉城デニー知事と沖縄県庁で面談し、「辺野古移設が唯一の解決策だ」と従来の政府見解を繰り返していた。これに対して元沖縄開発庁長官だった鈴木氏は、自民党時代を振り返りながら陸上案から海上案に変更された経緯を説明、背後に砂利利権があるのではないかとも指摘したのだ。

鈴木 宗男 議員
鈴木 宗男 議員

 「税金の無駄撲滅」「既得権打破」をアピールする維新にとって、鈴木氏の訴える辺野古埋め立て見直し論(代替案の陸上案への変更検討)は格好のテーマに違いない。しかも鈴木氏は、辺野古ありきの松野官房長官の政府見解に反論するかたちで「もう1回考え直す手立てはないのかと考えています」とも明言していた。

 そこで集会終了後、鈴木氏を直撃。「(維新代表の)松井さん、(維新副代表の)吉村さんに、『鈴木宗男先生の考え方はこうだ』と辺野古見直し論を伝えておきますので」と声をかけると、鈴木氏は「わかった。(国会で取り上げるのかどうかを)ちょっと相談はしてみる」という回答が返ってきた。

 続いて「ぜひ。(税金の無駄撲滅を掲げる)維新として取り上げると、プラスになると思いますので」とも指摘すると、鈴木氏は「はい、はい」と繰り返した。

 しかし、辺野古見直し論に対する維新幹部の反応は鈍かった。国会初登院日の11月10日、維新の馬場伸幸幹事長に「(鈴木氏が)『松井さん、吉村さんと相談して』と言っていた」「税金の無駄撲滅を掲げている維新の絶好のテーマではないか」と聞いたが、次のような答えしか返ってこなかった。

 「それ(辺野古見直し論)は鈴木先生個人が言っている」「先生がやっていただいたらいいことで、それが党内でコンセンサスが得られるのかどうかは別問題」(馬場幹事長)。

鈴木 宗男 議員 小野氏の文書通信交通滞在費(月100万円)の指摘には即座に反応したのに、鈴木氏の辺野古見直し論(事業費9,000億円)に飛びつかないのはなぜか。巨額の無駄遣いでも国策には異論を唱えないのが維新の基本姿勢であれば、「パフォーマンスが得意な二枚舌政党」「与党に恩を売って見返りを期待する政権補完勢力」などと見られても仕方がないだろう。

 沖縄に詳しい維新のベテラン議員・鈴木氏が「辺野古見直し論」を公言したことで、この問題が維新の実態を見極める試金石となった。文書通信交通滞在費と同様、他党に呼びかけて臨時国会で見直しを求めるのか、それとも取り上げないのか。

 辺野古見直し論にどう対応するかによって、維新が税金の無駄撲滅に本気の改革政党なのか、見かけ倒しの“エセ改革政党”なのかを見分けることができるというわけだ。今後の維新の対応が注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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